記憶の断片 5ページ
「とりあえず…できたか? 」
「うーん、これはちょっと…ね 」
あれから1日ほど歩き、辺りに人の街がない事を確認してから拠点の場所を決めた。
そして早速、アキラの時止めの魔法を利用して拠点を作り始めたは良いけど、それにはある誤算があった。
その誤算とは、私達2人とも家を作った事がないということだった。
できあがった拠点は柱の長さがバラバラで、その不安定な柱の上に無理やり木の葉で作った屋根を被せたような歪なものだった。
アキラの魔法で時を止めているから強度としては全く問題は無いけど、なんというか…ここには住みたくないなと思ってしまう。
「俺は別に雨風凌げて寝床があれば問題は無いが…凜音は嫌か? 」
「うんん、大丈夫 」
けれどワガママを言っても仕方がないと思うことにし、2人でこの歪な拠点に住み始めた。
最初は拠点の狭さと床で寝るという行為に慣れず、腰の痛さやストレスを感じていたけど、アキラが竹という『和の国』の特殊な植物でハンモックを作ってくれ、腰の痛さは改善された。
お風呂には入れないけど、アキラが浄化してくれた綺麗な水で体を拭く事はできたから体臭は気にならなかったが、汗を吸った服の異臭がとても不快だった。
そんな私を見かねたのか、ある日アキラは2つの布を外から持って来た。
「どうしたのこれ? 」
「偶然見つけた廃屋から拝借して来た。これで服を何着か作ってやるから楽しみにしてろ 」
アキラはそう言うと、私の『溟海の懺悔』という、なんでも切れる短剣で布を丁寧に切り分け始めた。
「ちょっと腕を開いてじっとしてくれ 」
「こう? 」
「そうそう 」
アキラの言葉通りに十字架に磔られたようなポーズを取ると、アキラは私の腕と布の袖のような部分を見比べ始めた。
「…ちょっと長ぇな 」
独り言を呟きながら布を短剣で切り落とすアキラから目を離せずに、その何かに夢中になっているアキラの顔に見惚れてしまう。
「アキラは…なんでもできるね 」
「聞きかじっただけだがな 」
少し照れくさそうに笑いながらアキラは布の袖の繋ぎ目を水で濡らした。
するとその繋ぎ目は接着剤や糸を使ってないのに、きっちりとくっついてしまった。
「えっ…どうやったの? 」
「布に染み付いた水分の時を止めただけだ。これなら糸も接着剤もなくても繋げれるからなー 」
「あれ? でもアキラの魔法は作った物の時を止める魔法だよね。どうして水の時を止められるの? 」
「説明すると難しいんだがな…俺は今、水で服の一部分を作ったんだ。だからその作った部品、水を利用して作った物の時を止めた…なんか説明してて意味がわかんなくなってきたぞ? 」
「うん、私も意味がわかんない 」
アキラの少し意味がわからない言葉に頭をひねっていると、アキラは手を動かしたまま、また説明をしてくれた。
「んーとな。作るという定義は『手を加えて別の物に仕上げる』って意味だ。だから物を別の用途、『飲む水』を『物を接着する水』に仕上げたから時を止めれるんだ…理解できたか? 」
「少し… 」
アキラの説明の意味は完全には理解できないけど、物を別の用途に使用できるものにすればいいんだなと勝手に解釈していると、視界に映っているアキラは滲んだ額の汗を袖で拭い、長いため息を吐いた。
「ふぅー…完成だ。ちょっと着てみてくれ 」
「あれ…ズボンは? 」
「これは下も上も一緒のもんなんだ。着たらこの帯で前を止めるんだとよ 」
「ワンピースみたいな感じなんだね 」
「まぁそんなところだな。んじゃ出てくるから着替えてくれ 」
アキラが拠点から出ていったのを確認し、そっと汗臭い洋服を脱いで『和の国』特有の服に着替えると、洋服にはない着心地の良さを肌に感じた。
少し薄過ぎる所を除けばとてもいい服だなと思いながら、細い帯を体に巻いてリボンを止めるように結ぶけど、今の自分にこの服が似合っているのかよく分からないでいると、外から拠点の壁を軽くノックされた。
「もういいか? 」
「うん、大丈夫だよ 」
そんな声と共にアキラは拠点の中に入ってくると、何かに見惚れるように2つの目を輝かせた。
「おー、似合ってるじゃねぇか 」
「そう? 」
「あぁ、とってもな 」
アキラのお世辞とは思えない明るい笑顔に照れくさくなり、ぶかぶかな袖で顔を隠してしまう。
そんな中で感じてしまった。
胸の奥に生まれた温もりを。
(あぁ、私は今…幸せなんだな )
好きな人と1つ屋根の下。
食べるものも息を吸う空気も同じもので、着飾りもなければ偽りもない。
ただ気遣いと優しさだけがある狭い空間。
人間の頃にずっと望んでいた幸せを…今感じられている。
「うおっ! なんで泣いてんだ!? 」
「いや…夢が叶ったなって 」
「…よく分かんねぇが泣くのはやめろ。幸せが逃げちまうぞ 」
「うん…そうだね… 」
アキラの優しい言葉に頷いたけど、胸の中に生まれた陽だまりが私の心の器を多いつくし、感動で…喜びで…しばらく泣き止めなかった。
そんな私の頭にアキラは優しく触れ、力強く私を抱きしめてくれた。
「ごめんな…お前を泣き止ます事もできない男で… 」
「違うよアキラ…私はね…幸せで泣いてるの… 」
「幸せで人は泣くのか? 」
「うん…だって私は今…幸せだもん 」
昔の事を思い出してか、辛い顔をするアキラに笑顔を向けるけど、きっと今の私の顔は酷いものだろう。
肩はひくつき、しゃくりは止まらず、鼻水も涙も垂れ流し。
でも…でも…こんな私でも…伝えたかった。
アキラに向けて…感謝を…
「アキラ…私を光に導いてくれて…ありがとう 」
「…こっちもな、お前が幸せになってくれて…嬉しいよ 」
今の私達の言葉には食い違いが生まれたような気がするけど、そんな違和感を塗り潰す温もりに、私は泣き続けた。
それから幸せが続いた。
少し薄暗い時間に目が覚めると、手が届く範囲にアキラの寝顔があった。
それが幸せ…
私より遅く起きたアキラと2人で昇る朝日を見た。
それが幸せ…
甘く熟れた果実を2人で分け合った。
それが幸せ…
私達の生き残りを探すために人里へ降りるアキラを見送った。
それが幸せ…
けれど、それとは別に不安があった。
アキラの神器は疫病神の力が入っており、本気で神器を使えばその神器に吸収した疫病を放出する事ができる。
だから万が一人間に囲まれた時、仲間を気にせずに神器の力を使えるように、アキラは1人で生き残りを探した。
その間、私はアキラが用意した綺麗な水で服を洗い、人払いの魔術式のメンテナンスをする。
そんな単調で誰でもできる作業をしている中、頭は様々な不安を考えてしまう。
もしアキラが帰ってこなかったら…もし大和達が全員殺してたら…もし私達を殺そうと追っ手が迫って来てたら…
不安…不安…不安…
それら全てが私にのしかかり、苦しみと痛みを生み、涙と嘔吐きが溢れ出す。
アキラに気が付かれないように何度も吐いた。
頬に爪を立て…神器で肌を切り…涙で服を濡らし…孤独を貪り…不安が幸福を塗り潰した…
「今帰ったぞー 」
けれどアキラが拠点に帰ってくると、感じていた苦しみを忘れられ、偽りじゃない笑顔が勝手に顔に浮かんでしまう。
「お帰り…アキラ 」
「おう。不死に関する情報はナシだが…これは土産だ 」
そう言ってアキラが背負っている袋から取り出したのは、様々な食器のような物だった。
「なにこれ? 」
「食器だ。ちょっと人間が留守の間に………な 」
嫌そうに笑いながら目を逸らすアキラを見て、人間から盗んだんだとすぐに分かったけど、そんな事よりも驚いたのは木で器を作っているという事だった。
「凄いねこれ… 」
「だよなー、国が違うだけでこんなに考え方が違うからすげぇよ 」
私達の国では考えられない物で生活用品を作っている『和の国』の技術に少し興味が出てきたけど、その興味は人間への嫌悪が邪魔してしまう。
けれどこれで原始人のような生活をしなくて済むと思うと、少し心が楽になった。
それからアキラは外に行く度に色々な物を持って帰ってきた。
糸や針…調理器具…寝具や畳と呼ばれる持ち運べる床…
こんなに盗んできてバレたりしないのかと心配したことはあったけど、アキラは色んな家から少しずつ盗んでるだけだし、なんなら厄を吸ってきたからその家は幸福になるだろうと笑顔を浮かべた。
そんな事が半年続いた。
半年経つとすっかりこの生活には慣れてしまい、この狭い拠点には様々な物が溢れかえっていた。
草履や深靴…私が見よう見まねで作った予備の紬…壁に掛けられた私の神器…ビンの中に入った粉末状の香辛料…そしてこの空間に位置する1つの炎…
「あっ…枝を拾いに行かないと 」
畳の上でアキラのほつれた紬を糸と針で直していると、炎の勢いが弱くなっている事に気が付き、壁に掛けられた神器と深靴を持って拠点の入り口から顔を出すと、そこには白銀の世界が広がっていた。
「わぁ… 」
今日の朝頃に雪が降っていたのは知ってたけど、ここまで降り注ぐとは思っても見なかったから、この景色にとても感動してしまう。
深靴を履き、慣れない雪の上をゆっくりと歩くと、柔らかい雪を踏む音が聞こえ、とても楽しい。
けれどこうやって楽しんでる間には炎が消えてしまうかもと思い、転ばないよう注意しながら木々に近って短剣で枝を切り落とす。
切り落とした枝を片手で持てるだけ持ち、白い息を吐きながら私が付けた足跡を辿っていると、私とは違う足音が聞こえた。
その何度も聞いた足音に胸が高鳴り、白い息を何度も吐きながらその音が鳴る方に急いでいると、雪で足元がすくわれ、白く冷たいクッションの上に転がってしまった。
「わぷっ!? 」
「おいおい大丈夫か? 」
口に入った雪の味を感じながら顔を上にあげると、そこには赤い髪を白い雪で染めたアキラの笑顔があった。
「うん、大丈夫だよ…お帰りアキラ 」
「ただいま凜音、今日は肉を持って帰ってきたぞ 」
「わぁ…じゃあ今夜はご馳走だね! 」
「あぁ、とりあえずさみぃから拠点に戻るぞ 」
私が落とした枝を拾い始めるアキラと一緒に枝を拾い、アキラの伸ばされた手を取って立ち上がって2人で白銀の世界を静かに歩く。
あぁ…なんて幸せなんだろう…
2人で拠点に戻り、アキラが服に積もった雪を払っているうちに鍋に水を入れて火にかける。
アキラが持って帰ってきた肉を調理用ナイフで切り分け、沸騰する前のお湯の中に切り分けた肉と野菜、香辛料を加えて木で作られたレードルで鍋をかき混ぜる。
「というかさ、これってなんの肉なの? 」
「イノシシだ 」
「えっ、それ臭くないの? 」
「血抜きとかちゃんとしてるからな、そこまで臭くはないと思うぞ 」
アキラはそう言うけど、『魔の国』で食べたイノシシの肉は癖と臭みが強い印象だっから、気持ち多めに香辛料を入れて煮込み、簡易的なスープに仕上げる。
「はい、できたよ 」
「おっ、待ってました 」
久しぶりの肉に目を輝かやかせるアキラの幼さが可愛いなと思いながら木でできた器にスープを注ぎ、アキラに器をそっと手渡す。
「んじゃいただきます 」
「はい、どうぞ 」
スープを食べ始めるアキラを見ながら私の分のスープを器に入れ、目を閉じて手を合わせる。
「いただきます 」
まだ扱いに慣れない箸と呼ばれる2つの棒で肉を掴み、息で熱を少し覚ましてお肉を口に入れると、香辛料の匂いと肉のとろけるような脂が口いっぱいに広がった。
「いやー、凜音が作った飯はやっぱりうめぇわ 」
「ありがとう、お世辞でも嬉しいよ 」
「お世辞じゃねぇよ、本当に美味い 」
私に微笑んでくれるアキラに照れくささを感じてしまう。
好きな人から褒められる…ただそれだけで胸の奥に心地よい熱が生まれる…
「あっ、そいやもひとつ土産があるんだ 」
アキラはそう言いながら器を床に置き、袋の中に手を突っ込んで何かを探すと、袋の中から取り出したのはガラスビンだった。
「なにそれ? 」
「酒だ酒。凜音は酒が好きだったろ? 」
「うん… 」
「んじゃ一緒に飲もーぜ 」
確かに嫌なことを忘れようとワインを沢山飲んでいた時期があったから私は好きといえば好きだけど、私の頭にはアキラはものすごく酒に弱かった記憶がある。
けれどそんな心配を他所にアキラはお酒を入れる猪口と呼ばれる器にお酒を注いだ。
「ほい、凜音の分 」
「ありがとう 」
炎の上を避けるように伸ばされた猪口を受け取り、ゆっくりとお酒を喉に注ぐと、ワインとは違う鋭い辛さが喉の奥に突き刺さった。
そんなワインでは感じることができない不思議な味を喉の奥で感じていると、炎の向こうにいるアキラは口に含んだお酒を横向きに吹き出していた。
「かっっっら!!? 」
「もう、お酒に弱いんだから無理したらダメだよ 」
「すまん… 」
アキラから猪口を取り上げて残ったお酒を一気に飲み干し、残ったスープをゆっくりと食べ続ける。
何故かアキラはお酒を飲んだ私に驚いた顔をしたけど、私は何をそんなに驚くことがあるんだろう?と疑問に思ってしまう。
しばらくしてアキラと私はご飯を食べ終え、器の脂と食べカスを使い捨ての布で拭き取ってから片付けをし、濡れた布で体を拭いてから気だるい体をハンモックに乗せる。
すると久しぶりにお酒を飲んだからか、すぐに心地よい闇が後ろから迫って来る。
「…なぁ凜音 」
「…なに? 」
私を夢へと誘おうとする闇から逃れるように重い瞼を開けると、そこには私に背を向けて揺れる炎を見つめるアキラの後ろ姿が見えた。
「凜音はさ…仲間が見つかったら何をするつもりだ? 」
その質問の意図は理解できなかった。
けど眠気が思考と理性を鈍らせたせいで…嘘偽りがない言葉が口から漏れてしまった。
「私…わね、できるなら…誰も見つからないで欲しいの… 」
「…どうして? 」
「この生活が…幸せだから…大和への復讐も…人間への憎しみも…何も無いこの家が…私の居場所…だから… 」
「…そうか 」
その一言の真意は…分からない。
もしかしたらこの言葉は…仲間を見つけようとするアキラの考えを否定したかもしれない…
でも…これが今の私の本音だ。
アキラが手の届く範囲に居て…美味しいご飯が食べれて…幸せの匂いがするこの家が…私にとっての居場所で…私の幸せ…
きっと仲間が見つかれば…アキラは優しいから…誰でも平等に接してしまう。
それが私には歯がゆい。
だからお願い…神様なんて信じてないけど…もし居るのなら…過去も憎しみも捨てた今の幸せを…続かせてください…
そんな事を静かに祈ると、意識は暗闇の中に吸い込まれていった。
そこからの時間は…とても早かった。
雪が溶け…桜という美しい花を見た。
桜が散り…日差しがギラつく青い空を見た。
太陽のギラ付きが収まり…紅葉という、葉が赤色に染まる不思議な光景を見た。
草葉が朽ち…白が降り注ぐ幻想的な世界を見た。
桜を見た…
青空を見た…
紅葉を見た…
雪を見た…
幸せはそよ風のように過ぎ去って行き、目まぐるしく変わる世界に置いてきぼりにされているような気分だ。
けれど…その中で変わらない幸せがあった。
「ただいま凜音 」
「お帰りアキラ! 」
私達の家に帰ってくるアキラを出迎える。
その幸せは…ずっと変わらずに私の心を温めた。
春を迎えた…
夏を迎えた…
秋を迎えた…
冬を迎えた…
怨みを忘れ…過去を捨て…怒りを塗り潰し…幸せを貪った…
春を…
夏を…
秋を…
冬を…
不幸や不安はなく…寒さも痛みもなく…飽きることの無い幸せを…噛み締め続けた…
…
……
………
「ねぇアキラ 」
「んー、どした? 」
「私達って、ここに住み始めて何年くらい? 」
紬を補修する私の代わりにスープを作ってくれているアキラに、ふと頭の中に思い浮かんだ疑問を聞いてみると、アキラは野菜を切る手を止めずに私に顔を向けてくれた。
「13年だ…いやー、時の流れはあっという間だな 」
「ふふっ、そうだね。あっ、アキラ。あれ取ってくれない? 」
「ほいほい 」
野菜を切り終えたアキラは手を布で拭くと、アキラは壁に掛けた小さなハサミを私に持ってきてくれた。
「ありがとう 」
「こっちこそありがとな。俺の代わりに服を直してくれて 」
「いいよいいよ、このくらいさせて 」
受け取ったハサミで糸を切り、すっかり慣れてしまった手つきで紬を直していると、ふと下半身がむずついてしまった。
「ごめんアキラ、ちょっとトイレに行ってくるから先に食べてて 」
「おう、一応神器は持ってけ。後、何かあったら絶対に声を出せよ 」
「うん、ありがとう 」
私を心配してくれるアキラの言葉を素直に受け入れ、壁に掛けている私の神器を持って外に出ると、夏の暑い日差しが私の髪を炙り始めた。
早く用を済ませようと、少し家から離れた場所に歩いていると、荒い息と足音が聞こえた。
「っ!? 」
咄嗟に木の影に隠れ、耳を澄ます。
最初は獣かと思ったけど、しっかりと聞くと足音の鳴る感覚は二足歩行の生物であり、 荒い息も獣のものでは無い。
(なんでここに人間が!!? )
人払いの魔術式は私達の家を取り囲むように展開している。
それなのにここに人が居るという事は…その魔術式の対処法を知っているということだ。
(もしかして………『不死の国』の追って!? )
『不死の国』には魔術式に精通してる不死が多いから『人払いの魔術式』の対処法を知っていてもおかしくない。
そんか考えが頭によぎるとその場を動けず、冷たい汗が額から流れ落ちるのを感じていると、不意にその足音は止まり、何かが倒れる音が辺りに響いた。
「………? 」
なぜ足音が止まったのだろうと疑問に思い、ゆっくりと木の影から顔を出すと、夏の日差しが差す森の中に暑そうなローブを着た人が倒れていた。
「……… 」
木の影から身を乗り出し、腰に差した短剣を引き抜く。
こいつがもし人間なら…こいつがもし不死ならば…殺さなければならない。
だってそいつらは…私の幸せを邪魔するから…
辺りは日が差してるのに暗く感じた。
まるでフィルター越しに世界を見ているように。
足を進める…倒れている者に向かって…
間合いに捉えた…そいつを…
膝を着いて短剣を振り上げる…
そしてその短剣を振り下ろそうと瞬間、探検を掴む左手を後ろから掴まれた。
「っ!? 」
後ろを振り返ると、そこには荒い息をするアキラの顔があり、その顔を見た途端に自分が何をしようとしたのかが分からなくなってしまう。
「えっ…えっ? 私…何を? 」
「落ち着け凜音、大丈夫だから 」
「う、うん 」
その大丈夫が何を心配してるか分からないけど、困惑を残した頭を働かせてアキラの手からそっと逃れ、短剣を腰の鞘に収める。
そんな私にほっとしたようにアキラはため息を吐くと、アキラは倒れている人物のフードを摘み、それを上にたくしあげた。
そこに見えたのは…人の顔とは思えない美しさを持った不死の顔だった。
けれどこの首あたりまで伸びる雨のような銀色の髪には見覚えがある…
「…ナイル? 」
「…脱水だな、とりあえず拠点に運ぶぞ 」
アキラは仲間を見つけたはずなのに、何故か暗い顔をしたままナイルを担ぎあげ、私達の家に向かって歩いていく。
(…見つかっちゃった )
これでアキラを独り占めする事はできなくなったなと残念に思ってしまうけど、これでアキラが示してくれた『生き残りとの再開』を果たせたと考えると、あまりそれを悲観的には捉えられなかった。
だからそっと息を吐いて心を落ち着かせ、私達の家だった拠点に向かって私も足を進めた。
今まで感じれていた幸せに、名残惜しさを感じながら。




