第43章 霧の中の激戦
「っ!!」
体に光を纏い咄嗟に後ろに飛ぶと、見えない何かが僕の前を通り過ぎた。
体にぶつかる強い風圧を感じ、これをモロに喰らえば死ぬだろうと思考を回し、光を体に纏ったまま長い赤髪の女性の周りを光速で走り、闇を纏わせた光の刃を無数に全方位から飛ばして行くが、その闇を纏わせた刃は敵に命中する事はなく、見えない何かによって全て弾き飛ばされた。
(神器か・・・)
僕の闇は神器以外防ぎようがない魔法なため、女性の見えないものが神器によるものだと理解していると、見えない何かが横から振り抜かれるのを音で感じ取った。
すぐさまその場に身を伏せると、頭の上を仰ぐ様な風切り音が通り過ぎ、その何かを敵が振り抜いた隙に柔らかい地面を蹴り、女性との間合いを詰める。
(大食!!)
『煉獄の釼』の力を使い、敵の周りにある見えない何かに神器を打ち付け、突如出現した赤黒い壁を蹴って敵との間合いを大きく開けると、僕の神器によって効力が奪われた敵の見えない神器の全貌が明らかになった。
(うわぁ・・・。))
女性の周りには赤黒いアバラ骨の様なものが隙間なく纏わりついており、そこから2本の巨大な腕が空中に向かって伸びていた。
そんな禍々しい敵の神器を見て若干引いていると、敵は辺りを見渡し、露わになった巨大な腕をじっと眺め始めた。
「神器の効力を無効にする神器・・・か」
そんな僕の神器の力を動揺なく理解する敵の姿を見て、長引かせるのは得策ではないなと思い、神器の効力をさらに解放させる。
(肉欲!)
神器の力を使い、私の両腕を肥大化させて筋力を上げ、柔らかい地面を全力で蹴ると、敵はそれに合わせて骨の拳を振り下ろして来た。
それを横に飛んで躱すと、柔らかい土が辺りに飛び散った。
すると女性は、振り下ろした拳を土を削りながら横に振り抜いて来たが、いくら速かろうとそれは見えているため、空中に飛んでそれを躱し、生み出した光の足場を蹴って敵との間合いを詰め、敵の周りにある骨に向かって右の釼を全力で打ち付ける。
しかしその一撃だけでは骨はビクともせず、すぐさま壁を蹴って後ろに飛ぼうとするが、それよりも速くアバラ骨が開く様にして僕にぶつかり、後ろに吹き飛ばされた。
「ぐっ!?」
幸い肥大化した腕に当たったおかげで痛いだけで済み、両の釼を地面に突き刺して勢いを殺す。
再びぬかるんだ地面を蹴り、振り下ろされるノロい一撃を掻い潜って間合いを詰め、さっき叩いた部分と同じ場所に全力で右の突きを放つが骨はビクともしない。
けれどそれは予想通りなため、骨が開く前にすぐさま後ろに飛び、上から迫る拳を両の釼を上に構えて防ぎ、軋む足と肥大化した両腕の力を全力で使い、その一撃を上に弾く。
「ふっ!!!」
「っう!!」
巨大な腕が弾き飛ばされ、そのまま女性は神器ごと背中から地面に落ちた。
その隙に地面を蹴って敵のアバラ骨の上に乗り、2度に渡って殴り斬った場所に両の釼を全力で打ち付けるが、赤黒い骨はビクともしない。
「っ!てめぇ!!」
けれど敵は私の狙いに気付いたのか、すぐさまアバラ骨を開かせ、僕の体を吹き飛ばした。
「っ!」
その圧に負けないように体をひねり、足と釼から地面に着地すると、敵はすぐさま体を起こし、緑色の眼を荒々しくギラつかせた。
その眼を見て、敵が僕の狙い、『神器の破壊』を悟ったのだと理解したが、そんな事はどうでもいい。
神器を壊して仕舞えばこっちのものだ。
すぐさま地面を蹴り、間合いを詰めようとすると、女性はそれに反応するように左の巨大な腕を横に薙ぎ払った。
地面を削りながら迫る腕を飛んで躱すと、もう一本の腕が上から僕を潰そうと迫るが、頭の上に足場を生み出して体を回転させてその足場を蹴り、頭から地面に落ちる。
空中で身を捻って足から着地をし、ぬかるんだ地面に足を滑らせながら神器を振り抜き、同じ場所に両の釼をぶつける。
「っう!!」
しかしそれではまだ足りないため、すぐさま後ろに離脱し、ステップを踏んで再び地面を蹴る。
振り下ろされる指を広げた右手の隙間を通る様に空中で身をひねり、その骨の上を伝って敵と接近しようとすると、敵はその腕を上へ振り抜き、ほぼ真上に僕を吹き飛ばした。
「っう!!」
体に付き纏う圧の中で身をひねり、光の足場を作ってそれに足からそれにぶつかると、足から痛々しい軋む音が聞こえたが、それを無視して壁を蹴り、落下しながら光の刃を地面に無数に落とす。
魔法による攻撃は神器には無力なため、その光の刃達を一気に弾けさせ、敵の目を潰す。
「っ!!」
しかし敵はタイミングよく僕を攻撃する様に赤黒い右腕を横に薙ぎ払うが、その一撃は鈍いため、その隙に心の中で言葉を唱える。
(『禁足の鎖』)
そう心の中で呟くと地面から無数の鎖が伸びて骨に絡み付き、その一撃と身動きを封じた。
「っう!!」
いくら神器の力であろうと私の光の鎖を壊すのには数秒掛かるだろうと思考を回し、地面に右足から膝、右肘の順番で着地して勢いを殺してすぐさま立ち上がり、神器を振るう。
「ふっ!!」
また同じ場所に神器を打ち込み、敵の拘束が解けるまで何度も何度も釼を同じ場所に打ち込み続け、最後に右の重い一撃を打ち込もうとしたが、不意に僕の一撃は手応えの無い空気を斬り裂いた。
「えっ!?」
目の前から消えた赤黒い骨を目で探していると、目の前には腰を大きく捻る女性が映っている事に気が付いた。
「っう!」
何かまずいと直感が訴え、すぐさま神器を前に構えて後ろに飛ぶが間に合わず、その右の拳が神器にぶつかった瞬間、神器ごと両手首が上に吹き飛んだ。
「ぐっ!?」
突如現れた両手の熱さに一瞬気を取られた瞬間、辺りに影が出来ていることに気が付き、すぐさま後ろに飛ぶが、神器を持っていないため完全には躱せず、両足を赤黒い巨大な右手に潰された。
「がぁあ!!!」
のけぞった喉から漏れた悲鳴に、こんな声が出たのは何年ぶりだろうと頭の端で思考を回していると、巨大な左腕が僕の残された上半身を潰そうと迫るが、すぐさま闇を纏わせた光の刃を想像で動かし、使い物にならない両足を根本から切断する。
「っう!!」
その痛みに耐えながら光の盾を前に生み出し、無い手で地面を押して盾に隙間なく体を寄せると、強い衝撃が脳を揺らし、後ろに大きく吹き飛ばされた。
「ぐっ!!」
地面を三度跳ね、肘と膝で勢いを殺そうとするが、余りに勢いが強いせいでスピードを上手く殺せずに何度も地面を転がり、脳味噌から騒音が聞こえる様になる頃に、ようやく勢いは死んでくれた。
「っう」
脳が揺れ、吐き気と気持ち悪さを、思う様に動かせない体で感じていると、重々しい足音がこちらに近づいてくるのを耳で感じ取った。
「っ!」
すぐさま体を起こすが、脳が揺れているせいか視界も揺れる。
けれど次に攻撃をもろに食らえば即死する可能性もあるため、無理やり頭を働かせ、光の義足と義手を生み出して言葉を心の中で唱える。
(『純血の翼』)
そう呟くと背中に光の翼が生み出され、それを想像で羽ばたかせながら空へ逃げる。
しかし敵はそれを許さず、空を飛ぶ私をどうにか撃墜しようと巨大な赤黒い左手を横に振り抜きて来た。
それを上へ加速して躱すが、巨大な風圧のせいで体制が大きく乱れてしまう。
「っう!?」
その隙を突く様に、敵は巨大な右手で僕を叩き落そうと手の平を振り下ろすが、空中で身を捻り、義足をその手にぶつけ、頭から吹き飛ばされる様に地面へ落下する。
けれど頭から落ちれば死んでしまうため、翼をはためかせて勢いにブレーキを掛けて地面に着地し、両手を地面に付けながら地面を滑る。
霧の中に飛ばされたが、すぐさま結界を作り霧を晴らして前を向くと、吹き飛ばされた僕を追いかける様に敵が迫るが、それに続くように脳の揺れも治まって来た。
「ふぅぅ」
冷静に翼をはためかせて空を飛び、空から見える僕の神器達に光の輪を纏わせ、それを操作して僕の手元に神器を戻す。
(肉欲!)
神器の力で両腕をもう一度肥大化させ、光の足場を後ろに生み出してそれを全力で蹴り、さらに翼を動かして急速に女性に向かって落下する。
女性は接近を許さないように巨大な右手を横に振り抜くが、もうそのスピードには目が慣れたため、空中で一回転してその腕を躱し、もう一本の腕が来る前に赤黒いアバラ骨へ加速し、例の場所に今一度攻撃を打ち込むが、まだまだ足りない。
敵は案の定すぐさまアバラ骨を開かせようとするが、敵が両足を潰してくれたおかげで先程より速く動けるため、一瞬で敵から間合いを離し、光の刃を開いたアバラ骨の隙間を縫わせる様に撃ちこむが、敵は光速で動く刃を巨大な腕を振り下ろして防いだ。
しかしそれでは敵から僕は見えないため、すぐさま横に飛び、敵の側面に回って同じ場所に神器を打ち付ける。
すると今度は、今までとは違う手応えが義手に走った。
口角を上げながら後ろに飛び、体を回して勢いを付けながら『煉獄の釼』をアバラ骨に投げ付けると、釼の刃先は骨に突き刺さった。
「っう!?」
敵は顔を引き攣らせ、すぐさま後ろに飛ぼうとしたが、それよりも早く地面を踏み切り、突き刺さった釼の柄を押し込むように左足で蹴り込むと、釼は骨を砕きながら押し込まれた。
(激情!!)
体を空中で一回転させて地面に着地し、すぐさま神器の力を使って押し込まれた神器から赤炎を生み出すと、その炎は瞬く間に女性に燃え移り、巨大な体を焦がし始めた。
「っう!!あぁっ!!」
そんな狭いアバラの中を暴れ回る女性の姿を眺めながら、釼に纏わせた光の輪を操って燃える神器を手元に戻す。
「ふぅ」
長引いてしまったが、後は骨も残らず焼け死ぬだろうと一息付き、アバラの中でもがき苦しむ敵から目を離さないようにしながら、他の事に思考を回す。
(この国を滅ぼすこと・・・か)
女性が口から漏らした、この国を滅ぼすという言葉に違和感を覚えながら、揺らめく赤い炎をずっと見つめていると、ふと、違和感に気が付いた。
女性が・・・立ったままで居ることに。
「っう!?」
その違和感に気が付き、すぐさま後ろに飛ぼうとした瞬間、揺らめく炎の中で女性が体を動かし、それに続く様に赤い骨が動き、その巨大な赤黒い両手に捕まってしまった。
が、それは何となく予想出来ていた。
「はっ!油断」
「する訳ないでしょ」
(羨望)
すぐさま神器の力を解放させ、敵の神器の力をコピーすると、僕を中心に赤黒い骨が生み出され、私を掴んでいる手を内側から押し広げた。
「なっ!?」
燃える女性は驚きの声を上げながら後ろに飛ぼうとするが、それよりも早く生み出された巨大な右腕を動かし、女性を囲っているアバラ骨を上から殴りつけると、そのアバラ骨はいとも簡単に砕け、拳は女性の巨大な体を生々しい音を立てながら潰してしまった。
「・・・最初からこうすれば良かった」
潰した敵にため息を吐き、最初からこうすれば良かったなぁと後悔しながら右腕を上に動かすと、赤黒い右手に絡み付くように、赤い血肉が糸を引いて伸びているのがよく見えてしまった。
(うわぁ・・・)
そんなグロい光景に若干引きながら神器の効力を解除し、流石に死んでいるだろうと後ろを振り向き、神器を手の平から消そうとした瞬間、後ろからぬかるんだ地面を擦る音がした。
「っう!!?」
すぐさま光速で前に飛び、体を地面に転がして後ろを振り向くと、体の至る所から赤く染まった骨を出し、不完全に歪んだ足で巨大な体を支える女性の姿が見えた。
「ふぅ、ふぅ。こんなんじゃ・・・死なねぇよ!!!」
「・・・そうですか」
(・・・魔法によるもの・・・かな?)
苦しそうに声を荒げる女性に返事を返し、潰すや燃やすだけでは死なないのならば、拘束するのが手っ取り早いだろうと思いながら神器を構えていると、女性の骨達は生々しい音を立てながら体内へ戻って行く。
けれど再生するのを大人しく待つ必要など何処にもないため、地面を踏み切り、肥大化した腕を敵の頭に向かって振り下ろすが、敵は視線を下に向けたまま何故か動かない。
「?」
それに違和感を感じながらも、左の神器を振り下ろすが、私の神器が敵の頭に到達するよりも速く鋭い風切り音が辺りに響き、僕の左肘から上が吹き飛んだのが感覚で分かった。
「っ!?」
今の一撃は見えなかった。
それに危機感を感じ、すぐさま義足で地面を蹴るが、それよりも速く腹に鋭い前蹴りが文字通り潜り込み、その太い脚は僕の背骨を砕きながら体を貫通した。
「おぼっ!!」
血がお腹からこみ上げ溺れるが、すぐさま敵の真横に光の剣を生み出し、それを自分の肩に打ち込んで後ろに飛び、血を撒き散らしながら地面を転がり、神器の力で死ぬ直前の体を瞬時に治療する。
「がはっ!おっ・・・うぇぇ!!」
けれど喉にこみ上げる血は消えてくれないため、せっかく心花さんが作ってくれた料理をぬかるんだ地面に撒き散らしながら転がり、顔が血と吐瀉物と泥で汚れたくらいにはその勢いは死に、喉の灼熱感を感じながら立ち上がる。
「今・・・行くよ」
前から聞こえた涙ぐむ様な声に反応して前を向くと、そこには動いていない女性の姿があったが、その姿を見てある事に気が付いた。
それは・・・女性の頭の上に、日本の巨大な白いツノが生えている事に。
(鬼っ!?)
その見覚えがある光景に一瞬焦ってしまうが、急な体の変化は魔法によるものか、神器を展開させたしかない。
それを確かめるために闇を纏わせた光の剣を5本敵に飛ばすと、敵はそれらを俯いたまま体を揺らして躱した。
「っう!?」
僕の攻撃を簡単に避けたのには驚いたが、魔法を避けたと言う事は神器によるものではないなと理解し、すぐさま無数の闇を纏わせた剣を後ろ側に生み出すと、敵はようやく顔を上げた。
「っ!?」
その顔を見て、戦慄してしまった。
女性の真っ直ぐだった顔の肌は血を被った様に赤く染まっており、口からはポタポタとよだれを垂らしながら、僕の方に真っ黒に染まった眼を向けていた。
そんな様変わりし過ぎた女性の姿を見て驚いていると、女性は口角を大きく上げ、禍々しい笑みをその顔に浮かべた。
「お前・・・美味そうだな」
「はっ?何言って」
この場に似つかわしくない言葉に返事を返そうとした瞬間、風の乱れが顔を叩き、目の前に巨大な女性が現れた。
「っう!!」
それに一瞬遅れた反応し、闇を纏わせた剣達を女性に降り注がせながら後ろに飛ぶが、女性は光を纏った私よりも速く動き、僕の先がない左腕を掴んだ。
「!?」
その瞬間嫌な予感が全身を走り、『天界の釼』で左腕を肩から切り落として後ろに飛ぶと、女性は体に剣を受けながら、貪り食う様に切り落とされた僕の腕を食べ始めた。
そんな光景を前に、口の中に残った血と吐瀉物を喉の奥に戻してしまう。
(なんなんだこの人は)
口の周りを更に赤く染める敵の姿を見て、何年かぶりに恐怖を覚えるが、恐怖に負けてしまえばその先に待っているのは破滅だと分かっているため、細い息を口から漏らし、左腕に光の義手を作ってから光を動かし、後ろに吹き飛んだ『煉獄の釼』を手元に戻す。
そして・・・言葉を唱える。
「『天界の釼』、神器 展開」
神器の力を展開すると、背中に光で生み出した偽物の翼ではない、白い純白の翼が生え、その巨大な羽をはためかせながら全力で地面を蹴る。
(強欲!堕落!)
女性が反応出来ない程の速さで間合いを詰め、『煉獄の釼』を女性の腹に突き刺し、気力と力を大量に奪うが、女性は倒れること無くニタリと気持ち悪い笑みを浮かべた。
「っう!!」
その笑みを見てすぐさま神器を引き抜こうとしたが釼は筋肉で押さえつけられて抜けない。
すぐさま神器から手を離し、その場から離脱しようとするが、それよりも速く右手の裏拳が私の顔に迫る。
しかし神器を展開しているため、今度はその攻撃の初動を察知し、カウンターを狙って逆に腕を切り落とそうとするが、刃がその腕に当たった瞬間、私の釼は吹き飛ばされ、逆刃は僕の左肩に入り込んだ。
「ぐっ!!」
けれど止まれば拳を顔面に受けてしまう事になるため、すぐさま羽を上向きにあおぎ、膝を曲げてその場にしゃがむと頭の上を死が通り過ぎ、女性の腹に深々と刺さった神器を掴み、光の輪と翼を動かしながら全力で女性の腹を蹴り、強引に神器を腹から引き抜くと、女性は口から大量の血を漏らしながら、その場に跪いた。
「ごほっ!!」
けれどこれだけでは死なない事は知っているため、『煉獄の釼』を上に投げ、『羨望』と『激情』の力を同時に解放させ、蹲っている女性を赤炎を纏わせた見えない拳でもう一度潰そうとするが、それよりも速く、耳の中にとある言葉が響いた。
「命絶鬼、神器 展開」
そんな言葉が聞こえたが、今殺せば問題は無いと考え、すぐさま拳を振り下ろすが、その拳が女性を潰そうと迫った瞬間、女性は瞬時に赤黒く変色した両手を地面に付き、拳が振り下ろされるより速く地面を手足で押し、ぬかるんだ土を跳ねさせながら僕の方に突っ込んで来た。
「っう!!」
その速さに遅れて反応し、左肩に入り込んだ釼を引き抜いて武器を構え、見えないアバラ骨を開かせようとしたが、女性はそれよりも速く右の手刀を赤黒いアバラ骨に打ち込んで来た。
次の瞬間、見えないアバラ骨はいとも容易く砕け、その手刀を咄嗟に神器で防ごうとするが、手刀が当たった私の釼も音を立てて砕け、その手刀は僕の右肩にぶつかり、そのまま反対のアバラ骨の壁に打ち付けられた。
「がはっ!!」
右肩の中で痛みが駆け回り、脳も内蔵も揺れているためすぐさま神器の力を使い、身体中の傷を治してコピーしている力を解除して後ろに飛び、地面に落ちた『煉獄の釼』を手元に戻して前をしっかりと向くと、身体中の皮膚を赤黒くさせ、苦しそうに肩で息をする女性の姿がハッキリと見えた。
(・・・なるほど、あまり長く展開出来ないのか)
そう理解し、戦闘を長引かせればこっちが有利になるなと思っていると、女性は口で大きく息を吸い、体を大きく丸めた。
次の瞬間、女性の身体中から赤黒い骨が皮膚を突き破って現れ、その骨達が生々しい音を立てながら女性の体にまとわりついて行く。
その姿に思考が一瞬止まるが、急いで神器に赤炎を纏わせて地面を蹴る。
しかし、その時にはもう遅かった。
女性の体を絞り上げるように赤黒い骨が体を覆っており、赤い顔、赤黒い体、その姿はまるで・・・化け物の様だった。
その姿に気を取られた瞬間、女性は血を吐きながら足を大きくあげ、踵を僕の接近に合わせて振り下ろして来た。
それを翼を動かして勢いにブレーキを掛けて後ろに引くと、ぬかるんだ地面から土が有り得ないほど飛び散った。
「っう!!」
あんなものを喰らえば神器ごと顔面を砕かれるだろうと理解し、生み出した翼とは別に光の翼を4本生み出してさらに機動力を上げる。
そして、『天界の釼』を展開させた事によって強化された光を体に纏い、細い息を吐く。
「ふぅぅ」
翼をはためかせながら地面を蹴り、光速で敵に接近をしてから骨が纏っていない顔面に右の突きを放つが、敵はそれをいとも容易く右手で内側に逸らし、僕の顔面を潰そうと右腕が伸びてくるが、翼を動かして身をひねり、その腕を躱しながら左足の先に光の刃を生み出し、その足を回転の勢いをつけながら敵の顔面に打ち付けると、敵の左目の潰すように光の刃が顔面にくい込んだが、敵は死ぬ様子はなく、僕のその足を両腕でへし折った。
「っう!?」
このまま振り回されればたまったものでは無いと翼を動かし、体を回転させて自分の左足を引きちぎり、敵から離れて地面に着地すると、敵は僕の引きちぎった足を口に咥え、敵は獣の様に四足歩行で僕に向かって突っ込んで来た。
しかし、その単調な行動には目が慣れたため翼をはためかせて片足で地面を蹴り、逆に敵との間合いを詰め、再生しかかった黒い眼をもう一度潰すために左の突きを眼に向かって放つが、敵はそれを体を左向き大きく傾けて躱し、体のひねりを加えた右の蹴りを僕の腹に打ち込まれ、背骨や臓物が潰れる感触が脳に響いた。
「うっ!!!」
後ろに吹き飛ばされ、痛みが腹の中を駆け回るが、すぐさま神器の力を使い、体に治療を施す。
(あと17回!!)
僕の神器の治療は22回しか出来ないため、致命傷を避けなければと両足から地面に着地するが、上げた顔の前には鬼が居り、腹を右手で貫かれた。
「がっ!!」
けれど痛みには慣れてきたため、その貫かれた腕を掴み、『禁足の鎖』で女性をがんじ絡めにしようとするが、敵は体に絡みついた鎖を体を捻って引きちぎり、僕の腹に突き刺した腕を上に向かって振り上げられ、僕の左肩と体が泣き別れになったが、すぐさま神器の力で治療を施し、光速で敵の首に左の突きを放つと、女性の喉に神器は深々と突き刺さったが、女性は気力も力を奪われても死ぬ様子はなく、僕の胸ぐらを掴み、そのまま私を振り回し、地面に僕を叩きつけた。
「がはっ!!!」
口から血が溢れ、骨も内蔵もシェイクされるように体の中を暴れ回るが、頭の上に見えた女性の足を見てすぐさま翼をはためかせ、体を治療しながら後ろに飛ぶと、僕の頭があった場所に巨大な足が振り下ろされた。
「っう!?」
低空で飛んだせいで体を地面に擦れてしまい、地面を転がりながら勢いを殺し、すぐさま体を起こして敵の追撃に備えるが、敵は接近する様子はなく、苦しそうに顔を抑えながら血を吐いていた。
「がはっ!!ゴホッ!オッ!・・・ガバッ!!」
恐らく神器の力で苦しんでいる女性を眺めながらため息を吐く。
このまま戦えば、僕は負けてしまう。
長引かせるのももう無理だ。
だから・・・これをするしか道はない。
「・・・ごめんなさいね」
「あっ?」
「『煉獄の釼』、神器 展開」
女性に謝りながら左の神器を前に構えながらそう呟くと、空気を塗り潰した様な闇が『煉獄の釼』から生み出され、それがゆっくりと腕に絡み付いて行く。
「っう!!」
闇が体を這った場所には普通の痛みとは違う激痛が走るがそれを身体を力ませて耐え、『煉獄の釼』を地面に突き刺すと、その闇が僕達の足元に素早く広がって行く。
「っう!?」
女性はすぐさま得体の知れない闇から逃げようとするが、闇が広がる方が速く、女性は闇に触れてしまった。
その瞬間、その闇は女性に光速で纏わり付いた。
(・・・頼みますよ)
こんな事はなるべくしたくなかったが、この女性を殺すためには仕方がないと諦め、人型の闇をじっと眺めていると、その闇は急に暴れだし、闇を引きちぎりながら鬼が闇の中から姿を現した。
「はははっ!!こんなもの効かねぇよ!!!」
「・・・」
笑う鬼を無視し、目を閉じて覚悟の準備をしていると、前から地面を蹴る音が聞こえた。
それに反応するように目を開くと、目の前には鬼の赤黒い右の手刀が見えていたが、それを躱さずに体の力を抜いて待っていると、その手刀が僕の顔面に当たった瞬間、凄まじい音が辺りに響いたが、右頬に当たった手刀は手首からへし折れており、手首からは骨が開放骨折しているのがよく見えた。
「っう!!」
敵はすぐさま後ろに飛び、地面に足を滑らせながら着地し、折れた右腕を再生させ始めた。
「ふぅぅぅ」
その隙に細い息を吐き、心を落ち着かせてから辺りに広げた闇を一気に体に収縮させる。
すると闇達は一目散に僕へ群がり、冷たく底が無い闇の感覚を身体中で感じていると、その闇が背中側で移動して行った。
ふと後ろを振り返ると、そこには背中に生えた美しい翼と、醜く原型をとどめないボロボロな翼が生み出されていた。
その何処か懐かしい翼達から、腕を再生し終えた女性に目を移すと、女性は荒々しく肩で呼吸をしており、怒っている様だった。
その姿を見て、思ったことがある。
あぁ、なんて滑稽なんだろうか。
そんな事を思っていると、自分の意思とは反して意味不明な言葉が口から漏れた。
「罪人よ。・・・もう眠れ」
「あぁっ!?何言って」
女性の言葉を無視して翼をはためかせ、強化された体で間合いを詰めると、女性は僕の接近に遅れて反応し、すぐさま赤黒い両腕をクロスさせたが、『煉獄の釼』を下から滑り込ませ、女性の股から頭にかけて一直線に刃を振り上げると、その刃はなんの抵抗もなく女性の股を切り裂き、腹を通って頭を真っ二つに切り裂いた。
「かっ・・・」
「・・・ふぅ」
刃に付いた血を剣圧で落とし、地面に落ちた真っ二つに別れた死体を眺め、脳を殺られたからもう魔法では生き返らないよなと少し心配していると、『煉獄の釼』を展開した反動が来たのか絶大な苦痛が身体中に生まれて行く。
「ぐぅっ!!」
その苦痛に耐えきれず地面に膝を付いて蹲っていると、左腕から先の感覚が無くなった。
消えた感覚に恐怖が背中を走り、苦痛に耐えながら左腕を恐る恐る見てみると、茶色く変色した断面図が見えており、茶色く腐り落ちた左腕が地面に落ちていた。
「がぁぁ!!!」
その痛みに耐えきれず、苦悶の声が喉から漏れてしまった。
『煉獄の釼』は展開すると、特別な闇を生み出すことができ、その闇に触れた罪人は神器であろうが自壊すると言った強力な物だが、それは僕も例外では無いため、闇に最初に触れた左腕が一番最初に腐り落ちた。
「はぁ、はぁ」
このままでは体も腐り落ちてしまうため、すぐさま『天界の釼』で生み出した翼で体を包み込み、特別な癒しの光を生み出して体を腐敗が追いつかない程のスピードで再生させるが、痛みと癒しが体の中で暴れ回り、地面にのたうち回ってしまう。
「うぐっ!あぁ!!っう!あ゛あ゛あ゛!!!」
そんな痛みに耐えきれず、年甲斐もなく叫んでしまうが、いつまでもこうしては居られないため、痛みに耐えながら腐りかけた足で立ち上がった瞬間、後ろから柔らかい地面を踏む音が聞こえた。
「っう!!」
その音に反応し、翼を動かして横に飛ぶと、左の脇腹に太い蹴りが突き刺さり、そのまま横に吹き飛ばされた。
「がっ!ぐぅぅ!!」
横に飛んだため、折れた骨が臓物に刺さった程度で済み、すぐさま体を捻り地面を滑るが、腐りかけた足ではその勢いに耐えきれず、両足が太ももから引きちぎれた。
「っう!!」
その痛みに耐えながら地面を転がり、砕けた神器を地面に刺して勢いを殺し、腐り落ちた足と左腕の代わりに義足と義手を作って前を向くと、そこには泣き別れになった左右の体を腕で抑えて無理やり再生させている鬼の姿があった。
「ぶぅ・・・ぶぅ。まだっ・・・だ」
(・・・不死身か)
恐らく敵の魔法は、想像ではなく条件下なのだと勝手に理解し、それならこちらが取れる行動は一つだけだと思考を回し、地面に落とした『煉獄の釼』を左手に戻し、もう一度あの闇を釼に纏わせると、段々とその闇は僕の体を呑もうと上に登ってくる。
それを無視して地面を蹴り、スピードを乗せた左の一閃を首に滑り込ませるが、女性が体を逸らしたため首を完全に両断する事は出来ず、皮一枚の状態で首は繋がっている。
それではすぐに再生してしまうとすぐさま首にもう一閃を滑り込ませ様とするが、それよりも速く女性は左足で地面を踏み込み、右足の蹴りが僕の腹に向かって来た。
が、神器を2つ展開している僕の方がまだ速く、すぐさま神器の軌道を変えて向かってくる右足を切り落とすが、敵はそれを承知の上だったのかその勢いを殺さずに足を振り上げ、先がない足を振り下ろして来た。
「っう!」
神器で受ければ神器ごと体を潰されるだろうと悟り、わざとに神器で受けず、生身の右腕を頭の上に隙間なく置くと、脳を揺らす衝撃が身体中に走り、地面に叩きつけられたが、右腕に走る痛みが気付けになってくれ、すぐさま左の釼を女性の脊髄を貫くように突き刺すと刃はなんの抵抗もなく脊髄を断ち、背中を貫いた。
すると女性は前にぐらりと体を前に倒したが、その目から生は消えていなかった。
「っう!!」
すぐさま翼を動かして後ろに飛ぶが、それよりも早く女性は抱きつく様に僕の脇の下に腕を回し、僕の体を押し潰す様に力を込めたが、この位置はちょうど良かった。
心臓が潰れる前に腹筋の力を使い、女性の血で赤く染った様な顔に顔を近づけ、その女性の人間味が残った唇に自分の唇を重ね、女性の口の中に舌を潜り込ませる。
「んぅ!?」
そして左肩まで差し掛かっている闇を口に集中させ、闇を女性の体の中に押し入れると、僕を女性は放り投げる様に地面に放り投げ、喉を赤黒い爪先で掻きむしりながら、苦しみ始めた。
「がぁっ!!おぉっ!がァァァ!!!?」
すると女性の黒い目から、耳から、鼻から、口から、穴という穴から血を垂れ流し始め、女性は金切り声を上げながら顔面をぬかるんだ地面に何度も頭を叩きつけ始めた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!!!」
その隙に口の中に入った女性の唾を吐き出し、口元をボロボロになった袖で拭ってから地面をのたうち回る女性に声を掛ける。
「その闇は罪人を許さない闇です。罪人の体内に入ればその物を永久的に自壊させ続けるし、神経も組織も自壊させてるので、痛みに慣れることは永久に無い。だからですね、さっさと死ね」
最後の言葉は口から勝手に漏れた言葉だが、僕が言いたいことはそれに似た様なものなためまぁいいやと投げやりに考え、念の為に叫び、もがき苦しむ女性の体を強度が上がった光の鎖でがんじ絡めにし、痛みでバタバタさせる女性の頭に生み出した闇の剣を突き刺し、息の根を止め続ける。
こうすればいくら再生しようと剣が邪魔で肉は再生できないし、闇のお陰で脳組織は破壊され続ける。
「んぅぅぅぅ!!!」
それでも鎖の中で暴れる女性を見て、意識はあり続けるのだろうなと気を遠くしながらため息を吐いていると、体がふらつき、柔らかい地面に受け身も取れず倒れてしまうと、それに続くように、強烈な眠気が私の体を襲ってくる。
けれど、まだ眠る訳には行かない。
女性は言っていた。
目的は不死の国を滅ぼすことだと。
けれど、彼女はだけではこの国を滅ぼす事など到底出来ない。
なぜなら・・・大和が居るから。
けれど、女性の眼は本気だった。
そうなると考えられることは2つ。
1つ、女性は1人で本気でこの国を滅ぼせると本気で思っていた。
2つ、女性には仲間がおり、そいつが大和を殺せるだけの力を持っているかだ。
大和はどうでも良いが、そんな奴が居れば心花さんや美琴さんも危ない。
だからこそ眠気を自力で跳ね除け、腐った足を光の剣で切断して義足を生み出してから、ふらつく足取りで霧の中へ足を運ぶ。
霧の中に響く、女性の苦悶の声を聞きながら。




