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第25話 ひとりよがり



「ふぅ…ただいま 」


 自分の声が誰も居ない家の中に響き渡るが、誰からの返事も帰ってこない。

 そんな現実にため息が出てしまうが、心は楽になることは無く、孤独感は心を蝕んでいく。


 今日も私は『不死の国』へと攻めてくる人間を殺して回った。

 本音を言えば人殺しなど辞めて、ゆっくり永遠の生を謳歌したいけど、今一度自身の罪を自覚し、気を引き締める。


 人を殺し、血に染まるのが私の罪滅ぼしだと…

 

 そんなことを思いながらも、気持ち悪い血の感触を落とすためにお風呂場へ向かっていると、薄暗い廊下の中で小さな赤い光が点滅している事に気が付いた。


 暗闇で少し目を凝らすと、赤い光は固定電話から出ているのが見える。

 確かこれは、『王宮』から電話がかかって来た時の印だ。


(大和…かな? )


 受話器を取ってボタンを押し、スピーカーに耳を近付ける。

 何度か不快な音が鳴り続け、大和の声が聞こえない事に心配していると、何かが切れたような音と共に、安心できる声が電話越しに聞こえてきた。


「おっす桜、今忙しいか? 」


「うんん、今人を殺したところだよ。何か用事? 」


「あ〜…用事と言うか報告と言うか…な 」


 忙しいか?と聞くあたり、いつものような世間話かなと勝手に思ってしまうけど、それは間違いだと伝えるように、電話越しの大和は何かを言いづらそうに唸っている。


 私の()()が決まりでもしたのかな?

 ………申し訳ないけど、殺してくれるなら大和がいいなぁ。


「今日から3人、お前んとこに住ませるわ。ちなみにこれは確定事項な 」


「………はっ!!? 」


 死を考えていた脳に突如として響いた言葉…それは私の脳と心臓を震わせた。


 大和が言う3人がどんな人達かなんて分からないけど、私の所に住まわせるなんて辞めて欲しい。

 だって…()()()と同じ空気を吸うなんて、誰でも嫌なはずだ。


「大和…いくらなんでも」


「そんじゃ仕事忙しいし切るな 」


「ちょっ! まっ」


「じゃっ 」


 電話を切られた。

 そのせいで喉から出かかった言葉は行き場を無くし、胸の中を彷徨い続ける。


(どうしよう… )


 大和は嘘なんて付かないから、今日中に3人がここに来る事は間違いない。

 それが決まっている以上、今から大和に掛け直してもしかたないし、来た人達を追い返す事はできない。

 となれば…何か(もてな)しをしなければいけない。


(せっかく罪人(わたし)が住む場所に来てくれるんだ…意地でも饗そう )


 つい最近、(つむぎ)さんに色々と良くしてもらったから、お肉や野菜…香辛料のストックは十分にある。

 けれど悩むのは献立だ。


 来る人達はお米が好きなのかパンが好きなのか…

 好きなお肉は牛か鳥か…いや、猪や鹿の可能性もある。

 野菜は好きか嫌いか…嫌いな香辛料はあるのか…


 こめかみを右手で抑えながら思考を回し続けるが、今から来る人達の事を知らない私にとっては、それは考えても仕方がない事だ。

 そこまで考えると、自然とやる事は決まっていた。


 自分の頭で考えれる料理を片っ端から作り、有無を言わせず食べさせる。


「ヨシっ! 」


 罪人(わたし)の料理を食べさせるのは気が引けるけど、『どうせ作るなら美味しいものを』…その気持ちを胸の灯火とし、狭い廊下を全力で走る。

 自分の胸を蝕む、罪悪感から逃れるように…



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