念願の“銀ブラ”~山之上舞花さんへの誕生日ギフト小説~
ある人から贈られた東京行のチケット。
「今回は僕が呼び出したから」
東京駅まで迎えに来ていた彼がそう言ってにっこり笑う。
「歩くのは嫌いじゃなかったよね」
以前、神保町の古本街を二人で巡った時もけっこう歩いたから。
「はい」
「じゃあ、銀座まで歩こうか」
幸い今日は天気もいい。
ぶらぶら歩いて銀座で銀ブラ。
彼が連れて来てくれたのは“銀ブラ”という言葉の発祥になったお店、“カフェーパウリスタ”。
場所的には新橋に近い。だから、東京駅からはけっこう歩く。
“銀ブラ”というのは銀座をぶらぶらする…。そう思っている人も多いと思うけれど、本当の意味は“美味しいブラジル産コーヒーを銀座に飲みに行く”というもの。
店に着いた時には少し汗ばむくらいだった。
お昼過ぎだったからお店は少し混み合っていたけれど、何とか席に着くことが出来た。少しお腹が空いていたから、私はキッシュセットを。そして、彼はキッシュと外国瓶ビールセットを頼んだ
「良介さん昼間から飲んでも大丈夫なんですか?」
「今日は特別です」
何が特別なのかは解からないけれど、おかげで念願の“銀ブラ”を体験できた。そして、帰りに嬉しいことがあった。このお店、コーヒーを頂くと“銀ブラ証明書”が貰えるのだ。
『あなたは本日、銀ブラ(銀座通りを歩いてカフェーパウリスタにブラジルコーヒーを飲みに行くこと)を楽しんだ事を証明します。平成30年1月19日』
「うわあー! これは嬉しい! 日付がまた嬉しい!」
これは本当に何よりも嬉しい誕生日プレゼントだ。良介さんありがとう。
「喜んでいただけて、僕も嬉しいですよ」
店を出た私たちは再び銀座の街並みを眺めながらぶらぶら歩いた。そして、もう一つ、私は彼に驚かされた。
高級ブランド店が立ち並ぶ中央通り。そこにあるお店の一つに彼が入って行った。彼が手招きをするので私もついて行った。店員さんから小さな紙袋を渡された。
「誕生日のプレゼント」
「えぇー! これで充分だったのに」
私はそう言って、さっきの“銀ブラ証明書”を示した。
「それはオマケみたいなものですよ。こっちが本物。まあ、高価なものではないですけどね」
「えー! この紙袋だけでも高価だよ」
ただただ驚く私を見て微笑む彼。
私たちはそのまま、また東京駅まで歩いた。
「今日は短い時間で忙しかったですね」
「いいえ、充分楽しませてもらいました」
「では、これから大変でしょうけど、舞花カフェの方も頑張って下さいね」
こうして、私は彼に見送られて帰路に就いた。もちろん、帰りのチケットも彼が用意してくれていた。
あのプレゼントはなんだったかって? そんなの言えないわ。内緒よ。な・い・し・ょ!
舞花さん、誕生日尾根で党ございます。