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常識破りの異能者《レネゲイド》  作者: 凪
二章 学院受験編
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5話 討伐

さて、服屋でも寄っていこうかな。何故突然こんなことを言い出したかというと、急にファッションに目覚めたわけでは勿論無い。悪目立ちしてるのだ。受付員さんは普通に対応していたけれど、胸の内では好奇の目を向けていたと思うな。というわけで、さっさと目立たない格好に着替えたいんだが・・・

如何せん金がない。小遣い稼ぎが出来ればいいんだが・・・

ん?そういえば・・・確か、身分証を貰った時・・・


———————この身分証があれば、ギルドへの登録が可能ですよ。


とか言っていたな。ついさっきの事だからか、とても鮮明に思い出すことができた。ギルド・・・ギルドか。魔物討伐とかで金を稼ぐ、あれ。確か、ギルドもこっち方面だったよな・・・寄ってみるか。そう思い、俺は目的地を変え、ギルドへと足を運ぶ。リーラには悪いが、少し待ってもらおう。そもそも、このままじゃ寝るところもままならないからな。背に腹は代えられない。つーか腹減ったなあ・・・何食おうか・・・つかなんか食えるかなぁ・・・正直、このままじゃリーラに会う前に飢え死ぬ気がするんですけど・・・なんて、密かに生命の危機を感じていると、あっというまにギルドに辿り着いた。


「いらっしゃいませ」

なんかお店みたいな挨拶してるが、気にしない。これがこの世界の普通なんだろ、うん。


「すみません、ギルドの登録をお願いしたいんですが。」

「わかりました。身分証をお見せいただけますか?」

そういわれたので、俺は素直に先ほどもらった身分証を差し出す。

「ありがとうございます。では」

そういうと、身分証を受付机の上に置き、手をかざす。その途端、手のひらに複雑な模様をした円が現れる。橙色に光を放つそれ(・・)は、まさしく・・・


「・・・魔法陣」

魔法陣。魔法を使用するときに使う複雑な魔法式だ。いいものを見れた。一生の思い出にしよう。見惚れていると、受付員さんに声を掛けられる。

「どうぞ。登録が完了しました。」

「あ、ありがとうございます。」

どこか変わったのか見てみると、右上に少し小さく二つの剣が交差したような白いマークが描かれていた。これがギルド登録の証か。さて、リーラも待たせていることだろうし、さっさと依頼を・・・あーまた字が読めない。不便すぎるな、これ。こういうときは・・・

“おーい”


“ん?どうした。また字が読めんのか?”


“ああ、頼めるか?”


“人間なのに人語が読めんとは・・・つくづく興味が尽きんな。”


“まあ、な。その話はまたあとでな。ところで、これなんだが・・・”


“ふむ・・・『ダークオーク三体の討伐、報酬金は銀貨二枚と銅貨三枚』だ。”

銀貨二枚がどれ程高価なのかは解らないが、とりあえずこれでいいか。コルクボードに張られた張り紙を綺麗に剥がし、受付に持っていく。

「すみません、これ、受けたいんですが。」

「え?」

「え?」

「い、いえ、何でもありません。本当にこの依頼でいいんですか?」

「え、ええ。大丈夫です。」

受付員さんが少し狼狽えたように見えた。何故だ?


「わかりました。では、期限時間は今から5時間です。出現場所はここから南東1kmの森林内にある洞窟。馬車は無料で貸し出し可能ですので、ご利用ください。」

「わかりました。」


そんな疑問は水に流され、俺はギルドを出る。確か隣に馬車小屋が・・・ん?

俺は馬小屋へ向かおうと視線を向けたと同時、丁度馬車に乗り出てくる人がいた。それだけなら別に気にも留めなかっただろうが。そのあとの出来事に俺は目を見張ることとなる。馬の身体が黄緑色に光に包まれた。光が収まった後、馬は走り始めたのだが———————

その速さが明らかに異常だったのだ。なんあれ。90㎞/hぐらい出てるんじゃないか?もしかして・・・

「加速魔法・・・?」

俺は慌てて異能力(スキル)『魔法創造』を起動する。できるか・・・?

————先の加速ができる様な・・・



—————常駐可能魔法『亜音速移動』を獲得しました。


常駐可能魔法?聞きなれない単語だが・・・名前からするに、亜音速で飛べるということだろう。速度は不安定だが、200m/s強でるなら満足だ。早速だが、出来るかな?俺は高めの木に登り、魔力を全身に通す。少し体が痺れるが、多少慣れた。えーと、どうすればいいんだ?


“魔法を発動したときのイメージを思い浮かべると良い。今回の場合は、移動したときのイメージをすれば良い。”


うわ、突然だな。魔力が途切れかけたぞ。・・・にしても、移動したときか。ううむ・・・何となくだが、俺は新幹線に乗った時に窓から見える景色を想像した。速度も似ているし、そんなもんだろう。そんなことを考えていると、今度は俺の身体を橙色の光が包んだ。ほんの二秒ほどだが。これが魔法発動の合図、か。

「よい、しょっ!」

俺は太めの木の枝に立ってから幹を右足で蹴り、ほぼ地面と平行に身を躍らせる。・・・う、うわあ・・・なんというか・・・気持ち悪いな。俺は別に酔い易いわけではないのだが、この光景には多少堪えるものがある。が、風は来ないな・・・もしかして、障壁が張られてるのか?高速移動系魔法のテンプレ、発動中は障壁が自動生成される、か・・・と、おもったところで、地面に猛烈な勢いで地面に激突した。痛くは無かったのだが、思わず「痛い」と口にしそうになったが、後ろを振り向き思わず絶句する。俺が通ったところにあった枝葉はバキバキに折れ、綺麗に半径1m程の円状の隙間ができていた。俺が通っただけではこんなにはならないはずだし、やはり障壁か何かが展開されていたのか。


「はあ、速いのも悩みもの、だな。」

やれやれと首を横に振りながら、現実逃避するように目を背け、前を向く。


「お」

小さく声が漏れる。なんせ目の前には、大自然のど真ん中に忽然と佇む石で出来た大穴があった。おそらくあれが目的の洞窟だろう。目当てのそれに近づきながら、小さく言葉を紡ぐ。

「さて、行くか。」

誰に行ったわけでもない独り言は、大きく口を開けて待ち構える闇の中に、俺本人とともに吸い込まれていった・・・




「ううん、歩きにくいな、ここ・・・」

洞窟の中は勿論整備されているわけがなかった。凸凹とした地形に、縦長になっている道なき道は、人を寄せ付けないものとしては十分なものだった。いつまで続くのかとうんざりしていた矢先、今までの急斜面が嘘のように、なだらかな地面が見えてくる。ところで、この洞窟、ここまでほぼ垂直に出来ているだけあり、陽の光が差し込めぬほど深い場所まで潜ってきてしまった。よって、途中から『魔法創造』で手当たり灯りを灯す魔法を生成した。いままでとんとん拍子に進んでいたが、ついにここで『魔法創造』のランダム要素が牙をむいた。


———魔法『雷炎爆発ボルティックエクスプロージョン』を獲得しました。

確かに炎を想像したが、違う、そうじゃない


———魔法『劣化生成』を獲得しました。

劣化生成ってなんだよ。なにを生成するんですかね。


———異能力(スキル)『異能複製』に作用し、『|異能生成(劣)』が生成されました。

えっ...(劣)ってついてるせいで退化した感が否めないんですけど・・・

そんな忙しいことを繰り返し、ようやく十回目ほどで目当ての魔法を獲得することができた。


———魔法『点灯(トーチ)』を獲得しました。

ふう、やっとか・・・。何度も連続で異能力(スキル)を使用してせいで、少し頭痛や倦怠感を感じる。今も魔法の継続使用のせいで、倦怠感を加速させているのだが・・・

多少憂鬱になっていると、何か音が聞こえた。石が崩れた、などという環境音ではない。明らかに・・・

何者かの、足音。恐らく、獲物(ヒョウテキ)であるダークオークだろう。そして、この音から察するに・・・

「ブモォ・・・」

もう、出くわす。


「よう、元気か?家畜(ブタ)共。悪いが、俺の飯のために死んでもらう。」


「ブモォォォォォ!!」

家畜共(ダークオーク)が怒る様に声を荒げる。



「死ね。こっちは腹が減っているんだ。さっさと済ませる・・・」

ちょっと格好をつけながら、右腕を前に掲げながら先の通り魔力を通す・・・が、気持ちいつもより時間がかかった気がする・・・初めての戦闘で無意識下に緊張しているのか、それとも先の連続使用の所為か・・・まあ、どちらにしろ誤差の範囲内だ。

すると、右手の平の前方に大きく先のような魔法陣ができる。今度は受付員さんのような橙色一色ではなく、魔法陣を白寄りの黄色と、黒寄りの紫が交互に彩り、また先の魔法と同様に慎ましく発光する巨大な魔法陣ができる。大きさ的には、俺の首元から腹ぐらいまである。本当に巨大だ。


「『堕天ノ光芒(フォールン・レイ)』・・・!」

魔力の充填が終わったのか、魔法陣がより一層光を発する。すると、魔法陣から、白く衝撃波が前方へ走る。オークが若干後ろに押される・・・え?これだけ?と思ったのもつかの間・・・魔法陣の大きさを二回りほど大きい、黒い光線が、家畜共を穿った・・・いや、吹き飛ばしたの方が正しいか。あとには塵すら残っていなかった。まるで荷電粒子砲みたいだな。最初の衝撃波が何の意味を成しているのかはわからないが・・・ん?

荷電粒子砲の射線上に沿い、大穴が空き・・・

そこから陽の光が差し込んでいる。

「えぇ・・・」

そりゃ困惑もするだろう。なんて威力なんだこれ。とか考えていると、激しい倦怠感に襲われ、立てなくなってしまった。


“全く、そんなに異能力(スキル)や魔法を見境なく放っていれば、そうなるのも当然だ。待っていろ、我の魔力を分け与えよう。”

え?ああ、ありがとう・・・

なんというか、身体の内側から温かいものが湧き出るような感じだ。例えるなら、温泉に入っているかのような、心地よい気持ち。外出はあまり好きではなかったので、あまり行ったことはなかったが。


「ふぃー・・・」


“ありがとう・・・えーと、そういや名前を聞いてなかったな。なんていうんだ?”


“ん?ああ、そういえば名乗っていなかったな。我が名はゼクス。闇の精霊の最上位、神霊と呼ばれる存在だ。”

あらぁ・・・最上位に、神と来たか・・・


“お、おお、よろしく、ゼクス。”


“うむ。”

まあ、いいか、とりあえず帰ろう・・・あ、でも、街中に突っ込むかもしれないから、『亜音速移動』は使えないか・・・


「あ、そうだ。」

そういえば、『異能生成(劣)』とかあったな。高速移動とか覚えられるのかな?


———異能力(スキル)『加速』を獲得しました。


お?加速・・・か。これはまた便利そうなものが手に入ったな。どんな効果なんだろうか。


———異能力(スキル)『加速』効果。

   思考加速・・・思考速度を最高二倍まで加速する。

   移動速度加速(脚力強化)・・・脚力、移動速度を最高三倍まで加速させます。


うむ、なかなか丁度良いものが手に入った。いったい何が(劣)なのかわからないが、まあ今はいいか。それよりも、早くここから出よう。『加速』の使い心地も少し試そうかな。

「よい、しょっと」

軽く地面を蹴ったつもりが、『加速』の脚力強化で、普通の三倍ほど高く飛び上がった。

「おっとと・・・」

足を滑らせかけ、また地面——この場合は壁といった方が適切か———を蹴ると、壁の反対方向にぶっ飛ぶ。

「うわっと!?」

又もや地面を蹴ると、同じようにぶっ飛ぶ。

「お、おお・・・?」

慣れてくると、某国民的ゲームの様に、壁を蹴りながら出口へ向かっていく。その感覚に多少感動を覚えながら登り進んでいくと、あっという間に地上に戻ってしまった。

「もう着いたのか。戻りの方が全然早かったな。」

そう独り言を呟きながら、『加速』による脚力強化で、すいすいと森林を駆け抜けてく。ううむ、なかなか心地よい感覚だな。『亜音速移動』とは大違いだ。

7分ほど経ったところで、先ほどの木まで、戻ってきた。ふえぇ・・・幹が途中から深く抉られていて、今にも折れそうになっている。

少し酷いことをしたか・・・。なんて考えたのもつかの間、ギルドにそそくさと戻り、受付員さんに話しかける。先ほどと同じ人だ。

「すみません、依頼完了をしたいんですが。」

「もう、ですか?まだ20分ほどしか経っていませんが・・・」

「ええ。お願いします。」

受付員さんは怪訝な顔をしたが、身分証を一応受け取ってくれ、そして驚くような仕草を見せる。


「本当に三体討伐してる・・・?ついさっき登録したばかりで、しかもこんな短時間に・・・?」

「あの・・・」

「え!?あ、すいません!はい、依頼達成です。お疲れ様でした。こちらが報酬の銀貨二枚と銅貨三枚になります。また、これによりギルドカードのランクアップ条件を満たしたので、ランクが上がりました。」

え?もうか。早いな・・・少し驚きながら受け取ると、ギルドのアイコンが黄色に変わっていた。光沢があるから、金色に見えなくもない。

「ありがとうございます。」

「ええ。それにしても、すごいですね。ダークオークは危険度Bの魔物なんですよ?それが三体なんて、一人で討伐できる人はほとんどいないのに。」

「は、はあ・・・」

危険度が何なのかわからない以上、生返事しか出ない。調べることは山積みだな。

「あ、引き留めてしまいましたね。またのご利用お待ちしております。」

「あ、はい。」

軽くお辞儀をし、踵を返し出口へ向かう。さて、リーラのこと、大分待たせてしまったな。うまい飯の一つでも奢ってやろうかな。

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