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常識破りの異能者《レネゲイド》  作者: 凪
二章 学院受験編
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4話 身分

「では、身分証をお見せ下さい。」

「は?」

「え?」


思わぬ返答に素っ頓狂な声を上げた俺に、受付の女性もまたもや素っ頓狂な声を上げる。身分証...身分証か。転生して間もない俺は、知識も含め、この世界に関する持ち物は皆無に等しい。強いていうなら服を着てるくらいだ。


「あの、俺身分証持ってなくて...」

「ええ?」


勿論身分証も然り。まあ前世同様、身分証は持ち歩いて当たり前のものらしいが。


「そ、そうですか、では...」

そういうと、受付員さんは一枚の紙を差し出してきた。おぉ、なんか綺麗に書いてある。なんかの発行手続きみたいだ。


「こちらに、氏名等を御記入下さい。」

「驚いていた割には用意周到なんですね。」

「貴族の中には、家から出ない故、身分証を持たない方も稀にいらっしゃるので。実際見たのは初めてなので驚いちゃいましたけど」

苦笑を浮かべる受付員さん。釣られて笑みを浮かべた後、用紙に視線を下ろす。

と、俺の笑みが凍りついた。

────そう、氏名である。道すがらリーラにそれとなく聞いた。

「そういや、この世界に日本式の名前の人、いるのか?」「いないわ。」

即答だった。そりゃいないわな。ザ・ファンタジーって感じだもんな。

...にしても、名前か...記入欄には氏名と書いてあるから、苗字も考えなきゃな...うーん...そういや、『異能複製』のとき、リーラの本名言ってたよな...確か、『リーラ=クリスタ』だ。身内にしといた方が何かと楽だし、苗字はクリスタにしよう。名前は...そうだな、ぱっと思い付いたやつにしよう。

と、考えを巡らせ、俺はすらすらと名前を...って、あ。俺、こっちの言葉わかんねえ。喋れてるってことは、音声言語は一致してるんだろうが...

こういうのは、知ってそうなやつに頼むのが一番だ。

"なあ、お前、人語って書けるか?"


"ん?ああ、一度書物で読んだ記憶がある。書けるぞ"


一度見ただけで書けるのか...簡単なのか、それともこいつが精霊だからか...


"じゃあここに書きたいんだが、出来るか?"


"心得た。我の知識を汝の脳と共有し、字体を修正しよう"


頼もしい。こいつがいて良かった。

俺は手続き書に身内や使える魔法等を記入していく。氏名『ゼル=クリスタ』と共に。書き終えた途端、受付員さんに声をかけられた。


「ありがとうございます。では、こちらをお預かりしても宜しいでしょうか?」


「あ、はい。大丈夫です。」

「ありがとうございます。では、あちらの席でお待ちください。」

はい、と俺は返事をして、大人しく端の席に座る。入った時は受付に一直線だったから気付かなかったが、こうして見るとだいぶ広いな。テニスコート四面分ぐらいはありそうだ。

そんなことを考えながらボーッとしていると、俺の「名」が呼ばれた。


「ゼル=クリスタさん」

「はい。」

席を立ち、呼ばれた方へ向かう。


「はい。こちら、身分証と、受験票になります。受験日は再来週になりますので、お忘れの無いようご注意ください。」

「わかりました。」

そう言い、軽くお辞儀をしてから受付を去る。ふむ、体感時間では数分しか経っていないんだが、随分早く出来たものだ。

そう心の内で感心する俺の手には、黒いキャッシュカードのようなものが握られている。そしてこれ、ハイテクもといハイマジカルな一品だ。なんとこれ、身分証としては勿論、本当にキャッシュカード機能まで付いてるんだから驚きだ。勿論銀行に預けた分のみだが。他にも、24時間以内に斃した魔物を魔力パターンを読み取り記憶するレコーダー機能など、便利すぎる機能が様々ついているらしい。気を取り直し、遅くなったが受験票ゲットだ。次にやるべきことは...そうだ、文字を覚えなきゃな...気が遠くなる。

あまりの途方の無さに倒れ込みそうになる体をなんとか押さえつけ、俺は歩を進める。俺の姉。リーラ=クリスタが待つ広場へ。

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