3話 決意
「・・・ハイクを読め、介錯してやる!」
「え?」
「いいか?動くなよ?動いたら痛いぞ?」
多分俺の顔は、感情の抜け落ちた笑顔で満ちていることだろう。
「え?は、ちょ、私なんか変なこと言ったかしら!?」
大変失礼でございますよ、ええ!自慢じゃないが、中学以降友達出来たことがない人類最底辺だぞ!?行くには行っていたが、ほとんど保健室登校だからさ、学校とか暴言の中の暴言だからな!
・・・と、俺はたっぷり30分理不尽な説教を聞かせてやったのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「なんか・・・すんません」
「うむ、わかればよろしい!」
リーラは解せないような顔で渋々頷いた。自分ルールを理不尽に突き付けた俺はご満悦顔だ。
“・・・我が友よ”
ん?この声は・・・俺は『意識掌握』を使いテレパシーを起動する
“目覚めたのか。気分はどうだ?”
“・・・ああ、大分楽になった。感謝している”
“・・・それは良かった。・・・それで?どうしたんだ?”
“ああ、魔力の馴染み具合を確かめようと思ってな。我とそなたの魔力属性は対となる聖属性と魔属性だ。それに、我が友といえど人間。精霊の異能力が使用できるかを確かめたかった。・・・が、前者の方は問題なさそうだな。”
属性?んだそりゃ。そんなん持った覚えないぞ?・・・まいっか。
“異能力はどうか、試してみてはくれぬか?”
“いいけど・・・何があるんだ?”
“ふむ、全体的には私の異能力の引継ぎだ。『詠唱破棄』、『魔法創造』の二つに加え・・・私の依代であるそなたは『精霊顕現』も所持しているようだな。”
魔法創造・・・だ、と・・・?
“左様。創造などという偉そうな名がついているが、そう万能なものではなくてな。自らの魔力の質に応じた魔法をランダムに取得する。”
成程、要するにガチャだな。・・・よし、やってみるか。
“初めてだからな、勝手がわからんだろう。我も援助しよう。先ず、先ほどの様に魔力を体に通すのだ。”
言われた通り、全身に魔力を流していく。・・・ううむ、やはりこの痺れる感覚は慣れないな・・・
「え!?ちょ、何してるの!?」
リーラがなにか騒いでいるが、気にせず続ける。もとより、ここで気を向ければ魔力が途切れるからな。
“ううむ、本来はそれに見合ったイメージを持つべきなのだが・・・そうだな、何か作りたい魔法を想像してくれ。それが直に習得できるわけではないが、それに見合うものが習得できるかもしれん。”
そうだな。習得できるなら強いものが欲しいだろう。こう、どんな相手にも通じるような・・・
————魔法『堕天ノ光芒』を習得しました。
お?できたみたいだ。にしても、中二心を擽る名前だな。俺の気持ちを反映させたのか?
「ね、ねえ、今なにしたの?」
「えっと、『魔法創造』、らしいぞ」
“どんな魔法かはあとで見させてもらいたいが・・・よいか?今はもう眠い・・・”
“お、おう、後で見せてやるから、今は寝てていいぞ”
“感謝する・・・我が友よ・・・”
二度寝か。
「はえ~、あなた今いくつスキル持ってるのよ・・・?」
「女神なんだからそれくらいわからないのか?」
決して煽ったわけではない。単純な疑問だ・・・多分。
「生憎『鑑定系異能力』は持ち合わせてないの。覗きは趣味じゃないわ。」
覗きて。まあ、あながち間違ってない・・・ないのか?
「ところで、学校って、あるのか?」
「あら、乗り気じゃない。ええ、あるにはあるわよ。えぇと・・・ここからだと、『国立魔導高等第二学院』?ていうのが一番近いかしら。」
リーラがどこから仕入れてきたのか、地図を広げ呟く。随分とアナログだな。
つか第二ってなんだ。第一はどこ行ったんですかね。
「何歳から入れるんだ?」
「ええと・・・15歳」
ううむ、余裕で入れるか・・・
「入試とかは?」
ここが問題だ。まあ、高校ならどうせ・・・
「あるわ。ええと、ペーパーテストに加えて、魔法試験があるみたいね。」
「いつからなんだ?」
「ええと、志願の〆切が・・・」
・・・
「・・・明日の昼まで」
おいおい。もう時間ねえじゃんかよ。どないしようか。学校行きたくないという欲と、行かなければ前世の二の舞だという理性が鬩ぎ合っている。
うむむむむむむ・・・
「よし、決めた!」
前世の俺にはなりたくない。前世を糧にしなければ。
「?どうするの?」
そうした建前で、俺は。
「志願、出しに行こう」
青春謳歌を目指し、新たな世界で歩むのだった。
次回から学園受験編です。