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Myrla ~VRMMOでやりたいほうだい~  作者: 佐藤悪糖
7章 行くぞお前ら祭りの時間だ
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7章 10話

「というわけなので、なにとぞラグア様をお助け願えませんか」

『ふん……。事情は分かったわ』


 困った時の神頼みってことでリグリ様にお願いしてみた。胃薬は事前に飲んである。

 人間の頼みを聞いてくれるかどうかは賭けだけど、どうにかしてくれそうなのってリグリ様しかいないんです。なんとかしてくださいお願いします。


『安心しなさい、断る理由は無いわよ。あなたには貸しがあるし、それに他ならぬあの子のためですもの』

「マジですか。ありがとうございます」

『でもね、あれに亀裂が入ったとなると話は面倒になるわ。まずはそれをどうにかしないといけない。それができるのはアイツだけよ』


 指示語が多すぎて頭悪いですよリグリ様。啓示は難解でなければいけないって決まりでもあるんですか。

 亀裂が入ったのは十字架。その十字架を修理しないといけない。ご神体になり得るレベルのアーティファクトを修理できるってのは、おそらく金鎚と算盤の神アーキリスかな。


『アイツの下へはあなたが行きなさい。私は嫌よ、あんな奴顔も合わせたく無い』

「リグリ様、アーキリス様のことお嫌いですものね」

『次にその名を呼んだら殺すわよ。ああもう、名前を聞くだけでイライラするじゃない』


 自然を愛するリグリと、人工物を祝福するアーキリス。仲が良かろうはずもない。


『いいからとっとと行って直してきなさい。それが終わったら、私の下まで直接持ってくるのよ。後はどうにかしてあげる』

「直接ですか。それはまた遠い道のりになりそうですね」

『早く来なさいよ。私はあまり気が長い方ではないの』


 直接ってことはリグリの本体がいる神殿まで持って行かなきゃいけないのかぁ。

 あそこは……。背面界の最奥部にあるリグリ神殿は、私にとっても因縁の場所だ。


『ああ、それとね。来るんだったら好きな植物の種を持って来なさい。ついでにあなたを転生させてあげるから』

「…………申し訳ありません。人の身に生を受けた以上、人の身のまま生を終えるのも私の咎ですので」

『そう、あなたは己の業を背負い続けるのね。惜しいわね、あなたが植物として生まれてきていたらどんなに良かったか』


 植物エンドのフラグが立った。マジで勘弁してくださいよリグリ様。

 神様のちょっとした親切がハードすぎて胃が痛い。


『でも死んだ後なら良いわよね。あなたの死体に種を植え、芽生えた植物にあなたの魂を宿してあげるわ。ねえ、どんな花になりたい?』


 マジで勘弁してくださいよおおおおおおおおお!

 うちの神様のヤンデレレベルが高すぎて死ぬのが辛い。ちくしょうホラー系は苦手なんだよやめてくださいお願いします。


『嬉しそうな顔ね』

「勘弁してくださいよ……」

『あら、嫌だと言うの? 眷属としての自覚が足りないんじゃないかしら?』

「死は全ての人に約束された最後の安息ですよぅ……」


 それを蹴っ飛ばして二周目にGOしたのは秘密。


『じゃあこういうのはどうかしら。あなたが魂を明け渡すのなら、あの子の留守を私が守ってあげる』

「それは……、大結界を維持してくれるということですか?」

『ええ。人間を守るなんて癪だけど、ここはあの子の作った街ですもの。加えてあなたが身を捧げて願うとあれば、主として叶えてあげなくもないわよ』

「うぐぐ……」


 なんと卑劣な……! おのれ邪神リグリめ! これが神のやり方か!

 でも、大結界が無いとラインフォートレスどころか世界中からセーフティゾーンが消えるし……。安全地帯が無くなるのは色々とヤバイ。


「私の死後、ということでしたら……」

『いいわよ。交渉成立ね』


 受け入れてしまった……。

 いやいや、死ななきゃいいんだ死ななきゃ。そう簡単に死んでたまるか。ウツボカズラになんてならないぞ。


『それじゃあ楽しみにしてるわよ。さっさと死んじゃいなさい』

「あはは……」


 リグリはゆっくりと消えていった。

 しばらくその場に座り込んで体育座り。泣きたい。

 すると、肩をトントンと叩かれる。


「俺はアセビが良いと思うぞ」

「……その心は?」

「花言葉が『犠牲』」


 ちくしょう銀太なんて嫌いだ。


「それ以外にも『危険』って意味もあるぜ。店長にピッタリじゃないか」

「『献身』とか『清純な心』とか、そういうのもあるでしょ。なんでそっちをチョイスするのさ」

「でもまあ、中でも一番は」

「「『二人で旅をしよう』」」


 私は淡く、銀太はにっと笑った。こうなったらこいつも道連れだ。地獄の底まで付き合ってもらおう。


「銀太、話したいことがあるの。部屋まで上がって」

「おう。やーっと聞かせてくれんのか――部屋ぁ!? 部屋って、店長の部屋か!?」

「うん。絶対に人に漏らしたくない話だから、一応ね」


 アトリエに入って設定をいじり、銀太に自室への入室許可を出す。ちょいちょいと手招きしてみると、銀太はアトリエの外で呆然と突っ立っていた。


「何してるの? はやく」

「お、おう……。お、お邪魔するぜ……」


 何で緊張してんだこいつ。

 とは言いつつも、実は私もちょっと緊張してる。私の事情はいくらなんでもオカルトすぎて、信じてもらえないんじゃないかなって。


(ま、なるようになるか)


 最初は行きずりの関係だったけど、なんだかんだで今じゃすっかり相方だし。

 銀太となら大丈夫でしょって、そう思った。

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