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Myrla ~VRMMOでやりたいほうだい~  作者: 佐藤悪糖
外伝『まいるら ~本編以上にやりたいほうだい~』
116/144

外伝 1話

※挿絵表示推奨

挿絵(By みてみん)


「書籍化するって聞いたけど、この目がキラキラしてる美少女は誰?」


 そう思った方もおられるかもしれません。いえ、きっとここまで読み進めて頂いた方ならば誰しもがそう思ったことでしょう。

 彼女についてお話しましょう。そう、主人公のラストワンを差し置いて、書籍版Myrlaの表紙絵を張ることになった、"彼女"の話を――。


 これはノリで生まれた新キャラクター表紙おもてがみの子のこ(生気に満ち溢れた瞳の美少女)と、彼女に色々と乗っ取られたラストワン(殺意に満ち溢れた瞳の狂人)が、本編以上にやりたい放題する外伝です!


※全力で悪ノリです。本当にごめんなさい。表紙の美少女は皆様ご存知主人公のラストワンです。

※本編キャラは要所要所で出てきますが、原則あまり出さない方向でやります。


 ちょっと話を聞いてくれ。信じられない事が起きたんだ。

 ついさっきのことだ。私はウルマティアの奴に単騎で決戦をしかけ、返り討ちに遭い、死んだと思ったらよくわからないやつに時間を巻き戻された。

 それだけでも大分信じられないんだけど、今の状況はそれの数段上をいっている。


「いったた……」


 私体を起こす。リスポーン地点の大神殿に放り出された私は、周りをキョロキョロと見回し、キョトンとした顔をしていた。


「……ここ、どこ?」


 はそんなとぼけたことを言っていた。こうして意識の中に追いやられたが言っているのではない。

 簡潔に状況を説明しよう。

 ゲームスタートと同時にずっこけた拍子に、私の意識が一瞬すっ飛んだと思ったら、私の中から新しく生まれた人格が私の体を乗っ取っていた。

 やべえ、自分で言ってて意味がわからん。


「なんか、頭痛い……。何も思い出せないし……。そもそも私、誰だっけ……」


 体の方の私も状況を認識しているわけではないらしい。というよりも、自分が誰かすらわかっていない。大丈夫かこいつ。

 ま、いいや。なんでもいいから体返してよ。それ私のなんだから。


「返すって? どうやって? というか、あなた誰?」


 おっと、意外にも声は届くらしい。これは行幸だった。

 自己紹介しておこうか。私の名前は敗残兵ラストワン。死に損なった最後の一人ラストワンだよ。今からウルマティアぶっ殺す計画を始めるから、可及的速やかかつ後腐れ無いようその体を返しなさい。


「あ、どうも、よろしくお願いします」


 よろしくお願いするな。とぼけてやがる。

 ……この私ってやつは、思ったよりも能天気らしい。私と違って目がきらきらしてやがる。

 歓喜と殺意に満ちた狂人のような瞳もしていなければ、視線だけで射殺さんばかりの強く輝く瞳もしていない。

 思えば私も昔はこんな頃があったのかもしれないと、もう思い出せなくなった過去を想って少しだけ感傷に浸った。

 ――おい、私。気が変わった。ちょっとだけその体貸してやる。


「え、いいの?」


 まあ、失った昔への感傷だよ。いいや、こっちの話だ。気にしなくていい。

 ただし行動方針は私に従ってもらう。私にはやらなきゃいけないことがあるんだ。いいな?


「そもそも現状がよく分かってないから、頷くしかないけど……。よろしくね、ラストワン」


 はいよろしく。となったら、そっちの私にも名前が必要だな。私と私でこんがらがってきた。

 ねえ私、何か名乗りたい名前ある?


「お母さんがくれた名前も思い出せない」


 安心しろ、それは私も忘れた。あれ、私現実のこと忘れてんじゃん。なんてこった――。

 私が12章くらいで明かされそうな衝撃の真実に打ちひしがれていると、ふらっとNPCっぽいじいさんがやってきた。


「の子というのはどうじゃ?」

「の子?」

表紙おもてがみの子のこ。良い名前じゃと思うぞ」


 急に現れて何言ってんだこのジジイ。さては事案だな。


「うん、じゃあその名前にするよ! ありがとう!」

「ほっほっほ。礼には及ばんわい」


 やっべえ……。こいつ、人を疑うことを知らない純真な瞳をしてやがる……。

 どこからどう見ても怪しいじゃねえかこのジジイ。ほら見ろよ、言うだけ言って音もなく消えてるじゃん。絶対あいつが黒幕だよ。最終話で久々に現れたと思ったら、衝撃の真実と途方もない取引を持ちかけてくるやつだよ。気づけよ。

 なんて感想を浮かべている私と裏腹に、体の方の私はその名前――の子が、いたく気に入ったようだった。


「ラストワン、状況を教えて。どうすればいい?」


 まずは人を疑うことを覚えて、の子。


「? いい人だったよ?」


 悪いヤツほどいい人ぶるのが上手いの。地獄の道は善意で舗装されているとはよく言うけど、私に言わせれば全ての道は地獄に通ずるよ。


「ラストワン。なんでもかんでも疑うのは良くない」


 だめだこいつ。

 ……まあ、の子はそれで良いのかもしれない。むしろの子には、私にできなかった可能性を追い求めてほしいとすら思った。

 ひょっとしたら彼女の善意があれば、私には想像もつかないような方法でこの地獄を打破してみせるのかもしれない。

 結局のところ。善意ってやつは、突き詰めれば全ての悪徳を駆逐するんだから。

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