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対面

「…ありがとう」



「いや、捕まったのだって私のせいだし…ごめんなさい」


白い雪が風に乗せられ、頬に吹き付ける。そんな中、イヴは深く頭を下げた。一つに纏められた金髪がさらりと垂れて、風に吹かれていた。


「そ、そんな。キミは仕事をしただけだし…頭上げて!」


おどおどしながらルークが必死に言うと、イヴは申し訳無さそうな顔でゆっくりと頭を上げた。


「ええと…多分今頃貴方が逃げ出したって局では騒ぎになっている頃だと思うから…信頼できる魔法使いが居るの。取り敢えず其処に行きましょう」


イヴがそう言ってルークの腕を掴むと、二人の姿はしんしんと雪の降る住宅街から吸い込まれる様に消えた。


薄っすらと積もる雪に、二人の足跡だけが残っていた。







「なんですって…!?」


「は、はい…。今捜索隊の編成と手配書の作成を進めているところです」


CMS議会は大混乱に陥っていた。

シャトルーズがクロムエルを連れて逃げ出したと。

議長は忙しく走り回りながら、自分の感情と葛藤していた。

彼女が、どうして___。


「議長」

「…ああ、シリウス」


そんな彼女の許にやって来たのは、CMS刑法執行部部長のシリウスだった。


「…シャトルーズへの処罰はどうされるおつもりですか」


「……勿論、アルテミス送りよ…」


「…そうですか」


冷静を装う議長の声に、シリウスは眉に皺を寄せた。議長は今、自分と葛藤をしているのだ。シリウスだけが、それを知っていた。


「あまり、無理はなさらずに…。それと議長。最近うちの部に入ってきた例の最年少の彼女が捜索隊に入りたいと懇願しているのですが」


「私はいいと思うわ。実戦にも一度向かわせるべきと思っていたし…、」

「そうですね」










雪山の麓。小さな小屋の屋根には雪が薄く積り、辺りが一面銀世界となっているのが窓から見えた。

紅茶でも飲もうかと立ち上がると、木のドアが突然鳴いた。


「やあ、君か。」


ドアを開けると、其処にはイヴと、見慣れない男が立っていた。


「久しぶりね。この人はクロムエルさん。貴方にお願いがあって来たんだけれど…」

「どうも…」


「初めまして。私はエイデンだ。取り敢えず入りなさい、寒いだろう」


ドアを大きく開き二人を中に入れると、直ぐに扉を閉めた。パチパチと暖炉の音が鳴り始める。


「それで、お願いって?」


二人を椅子に座らせ、エイデンは尋ねながら湧いたお湯をカップに淹れ始めた。


「僕は闇魔術の対抗できる魔法を探しているシーカーだったんですけど…それがCMSに見つかって捕らえられてしまったんです。けど、彼女が逃してくれて…それで…」

元々人と話すのがあまり得意でないルークが必死に喋っているのを見て、イヴが続ける。

「それで、私達を匿ってほしいの」


二人の真剣な表情が、彼らがどれだけ本気かを物語っていた。


「イヴ、君は本当にお人好しだね。いいよ」


あっさりと許可が降り、二人は思わず脱力した。元々良い人だと思っていたが、これほどとは。


「え…本当に?」


「うん。君にはよくお世話になっているし」


にこやかな笑みを浮かべる彼を見たルークは、内心ほっと胸を撫で下ろした。

どうぞ、と出された美味しそうな紅茶を一口啜ってから、これからの事を考える。

けれど途中で考えるのをやめた。

読んで下さってありがとうございます。


どんどんと話が進んでいっていて説明が足りていないと思うので此処で少し説明しますね。


中央魔法管理局(CMS)とは


イギリス魔界を管理する大きな国家組織の中心。およそ1500人の魔法使いが働いており、支部を含めると5000人にも上る。CMSには部署があり、次は部署について説明する。


議会部


魔界を取り締まる法律を作ったり、裁判や罪人への処罰決めたりと様々な役割を担っている。

CMSの中でも一番大きな部署で、この部で働いている者は赤い鷹が施されたバッチが与えられている。


刑法執行部


二番目に大きな部署。

街の見回りや罪人を捕らえたり、など、警察のような活動をしている。

議会部との関わりが大きく、この部署に入っている者は手練れが多い。

与えられるバッチは青い蛇が施された物。トップは部長のシリウス。


魔法生物管理部


魔法生物の研究、調査、管理を行っている。バッチは黄色いフクロウが施されたもの。






闇の魔術師とは


禁術である闇魔術を使う魔法使いのことを指す。見つけ次第アルテミス送りにする事が定められているが、闇魔術に対抗できる呪文が無い為捕まえるのはほぼ不可能。



シーカーとは


探求者、または研究者。魔界での職業の一つであり、活躍に応じて国から報酬が支払われる。


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