Prologue-01<Tu-160M3-ブラックジャック3>
天は汚れた雲で覆われ、大気は灰色に澱んでいる。そんな空を俺達は飛んでいる。
大気中に浮かぶその澱みがキャノピーにぶち当たる度に、それが汚れエフェクトとなって少しばかりずつ視界を塞いでいく。
「なあマック、この大気状態って絶対ヤバイよな」
『だろうなアンドレ。機体にも、人間にも良くないと思う』
だがこの澱み、ALJPと呼ばれる対レーザー妨害粒子の散布はレーザー兵器を有する敵へ対抗するのに必須なのだ。
そして、ALJPを散布するために多くの味方SBと彼らのクレジットが犠牲になっている。
しかしそれでも、ALJP環境下の機体に対して視界Nerf効果が生じるのは如何ともしがたい。
『まあ、マッハ1.3以上で飛行すれば風圧で吹き飛ばせるんだ。戦闘が開始されたらこんなカス気にもならんさ』
「ま、それもそうだよな」
それでも、これまでずっとCFに乗り続けてきた俺からすると、いくら速度を出そうが澱みが付着して吹き飛ばされるまでの僅かな時間だけは持続する視界Nerf効果が嫌だった。
『にしてもアンドレさんよ、この対空レーザー砲台マシマシのニーズヘッグ要塞攻略作戦の直前にTu-160M3を発掘するなんてイイ運してるぜ。いったいそのデカブツには何トンもの兵器が搭載できるのやら』
「ふふっ。マック、よく聞いてくれた。聞いて驚けよ、なんと52トン、LoLW内で最大の兵装搭載量だ」
『ご、ごじゅうに、とん。そりゃ……おい、もしお前のブラックジャックの腹が吹っ飛んだ場合、被害半径はどれだけになるんだ?誘爆の巻き添えなんて湿気た死に方は御免だからな』
「さあ、どうだか。手持ちのクレジットを全部注ぎ込んで兵装スロットを全部埋めてはみたが、それが何かはまだ調べてる途中、―――おっ、機外の大型ミサイル4発は対レーダー長距離ミサイルか」
『は……、はぁ!?えっ!?自分の機体の兵装が分からないって何!?』
「しょうがないだろ、今までMCもSBもロクに乗ってなくて格納庫に大型兵器なんか一発も無かったから、大慌てで手配して離陸前に搭載するのがやっとだったんだ」
『そんな、そんな馬鹿な話があるかよ……』
まあ、コイツのお陰でALJP散布作戦で想定以上に失われてしまったSBの穴埋めが出来たのだ。搭載量も多いから多少ハズレ兵器を積んでても何とかなるだろう。
ともかく、判明した兵装データをJM-WACSを操縦するストルツ氏に送信する。
『まさか、核なんか積んでねぇだろうな?』
「ご名答だな。胴体爆弾倉の第3セクションにある6連装ミサイルランチャーに3発装填されてる」
『うへぇ……、間違っても敵味方が入り乱れた空域にはぶっ放すなよ』
「当たり前だ。ストルツ氏が立案した作戦じゃ序盤に速攻でMDを駆逐した後に、この核を2発やってニーズヘッグ要塞の敵地上戦力と装甲隔壁を蒸発させる。これで味方地上軍の被害を抑えるってあらすじさ」
そして作戦通り事が進めば、52トンもの兵装が敵地上戦力を悉く粉砕、蒸発させて莫大なクレジット報酬が頂ける。つまり、この作戦の最高スコアは俺に決定したようなもんだ。
まあ、俺にとっちゃ乗ってて一番楽しいのはCFなんだが、如何せん収支バランスが悪いもんだから稼ぎやすいSB、もしくは次点でCASが欲しかった所だったのだ。
そんな懐具合の所に丁度よくOBの地下ダンジョンでコイツを発掘、しかも今回の戦域ボスも都合良く要塞と来たからには稼ぐしかないだろ。
『こちらJM-WACSストルツだ。あと300秒で全機が作戦空域に到達、ニーズヘッグ要塞攻略作戦が開始される。
第一矢として、MCとCASによるワイルド・ウィーゼルとSBによる対レーダーミサイル攻撃を敢行し敵MDを撃破。
第二矢として、アンドレ氏による核ミサイル2発によってニーズヘッグ要塞の装甲隔壁を蒸発させる。MCとCAS、そしてアンドレ氏は巻き添えに注意してくれ。
第三矢として、はどうしようか。私にも250ktクラスの核弾頭の威力は想像が付かないのだ。もしかしたらそれだけでニーズヘッグ要塞が崩壊するかもしれないし、あるいは傷一つ付かないかもしれない。だから、臨機応変に頼むよ』
「「『了解!!!』」」
さあ、まもなくエンゲージ、心躍る空戦の時間だ!!
#機体データ<Tu-160M3-ブラックジャック3>
乗員―4名(ゲーム内ではプレイヤー1名+補助NPC3名)
全長―56.1m
翼幅―55.7m
全高―13.1m
空虚重量―113,500kg
兵装搭載量―52,000kg
エンジン―NK-32M×4基
推力―142kN/基 (巡航)、248kN/基 (アフターバーナー)
最高速度―2,180km/h(高度12,200m)
備考
超音速戦略爆撃機Tu-160(1981年初飛行)の近代化改修、再生産モデル。
当初、ロシア連邦は2022年に新型亜音速戦略爆撃機PAK DAの配備と、Tu-160などの旧式爆撃機の退役を予定していたが、2020年の最終戦争勃発に伴いPAK DA計画を中断。
PAK DA計画で得られた知見を既存機に反映させる形でTu-160を近代化改修したのが本機である。
胴体の延長と改良型エンジンによって兵装搭載量が増大し、アビオニクスに至ってはPAK DAへの搭載が予定されていたモノが流用され、大幅な近代化が達成された。