表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

Prologue-01<Tu-160M3-ブラックジャック3>

 天は汚れた雲で覆われ、大気は灰色に澱んでいる。そんな空を俺達は飛んでいる。


 大気中に浮かぶその澱みがキャノピーにぶち当たる度に、それが汚れエフェクトとなって少しばかりずつ視界を塞いでいく。


「なあマック、この大気状態って絶対ヤバイよな」

『だろうなアンドレ。機体にも、人間にも良くないと思う』


 だがこの澱み、ALJPと呼ばれる対レーザー妨害粒子の散布はレーザー兵器を有する敵へ対抗するのに必須なのだ。

 そして、ALJPを散布するために多くの味方SB(ストラトボマー)と彼らのクレジットが犠牲になっている。

 しかしそれでも、ALJP環境下の機体に対して視界Nerf効果が生じるのは如何ともしがたい。


『まあ、マッハ1.3以上で飛行すれば風圧で吹き飛ばせるんだ。戦闘が開始されたらこんなカス気にもならんさ』

「ま、それもそうだよな」


 それでも、これまでずっとCF(コンバットファイター)に乗り続けてきた俺からすると、いくら速度を出そうが澱みが付着して吹き飛ばされるまでの僅かな時間だけは持続する視界Nerf効果が嫌だった。


『にしてもアンドレさんよ、この対空レーザー砲台マシマシのニーズヘッグ要塞攻略作戦の直前にTu-160M3(ブラックジャック3)を発掘するなんてイイ運してるぜ。いったいそのデカブツには何トンもの兵器が搭載できるのやら』

「ふふっ。マック、よく聞いてくれた。聞いて驚けよ、なんと52トン、LoLW内で最大の兵装搭載量だ」

『ご、ごじゅうに、とん。そりゃ……おい、もしお前のブラックジャックの腹が吹っ飛んだ場合、被害半径はどれだけになるんだ?誘爆の巻き添えなんて湿気た死に方は御免だからな』

「さあ、どうだか。手持ちのクレジットを全部注ぎ込んで兵装スロットを全部埋めてはみたが、それが何かはまだ調べてる途中、―――おっ、機外の大型ミサイル4発は対レーダー長距離ミサイルか」

『は……、はぁ!?えっ!?自分の機体の兵装が分からないって何!?』

「しょうがないだろ、今までMC(ミサイルキャリアー)もSBもロクに乗ってなくて格納庫に大型兵器なんか一発も無かったから、大慌てで手配して離陸前に搭載するのがやっとだったんだ」

『そんな、そんな馬鹿な話があるかよ……』


 まあ、コイツ(ブラックジャック3)のお陰でALJP散布作戦で想定以上に失われてしまったSBの穴埋めが出来たのだ。搭載量も多いから多少ハズレ兵器を積んでても何とかなるだろう。

 ともかく、判明した兵装データをJM-WACS(作戦統合警戒管制機)を操縦するストルツ氏に送信する。


『まさか、核なんか積んでねぇだろうな?』

「ご名答だな。胴体爆弾倉の第3セクションにある6連装ミサイルランチャーに3発装填されてる」

『うへぇ……、間違っても敵味方が入り乱れた空域にはぶっ放すなよ』

「当たり前だ。ストルツ氏が立案した作戦じゃ序盤に速攻でMD(対ミサイル防衛兵器)を駆逐した後に、この核を2発やってニーズヘッグ要塞の敵地上戦力と装甲隔壁を蒸発させる。これで味方地上軍の被害を抑えるってあらすじさ」


 そして作戦通り事が進めば、52トンもの兵装が敵地上戦力を悉く粉砕、蒸発させて莫大なクレジット報酬が頂ける。つまり、この作戦の最高スコアは俺に決定したようなもんだ。

 まあ、俺にとっちゃ乗ってて一番楽しいのはCFなんだが、如何せん収支バランスが悪いもんだから稼ぎやすいSB、もしくは次点でCASクローズエアーサポートが欲しかった所だったのだ。

 そんな懐具合の所に丁度よくOB(作戦拠点基地)の地下ダンジョンでコイツ(ブラックジャック3)を発掘、しかも今回の戦域ボスも都合良く要塞と来たからには稼ぐしかないだろ。


 



『こちらJM-WACSストルツだ。あと300秒で全機が作戦空域に到達、ニーズヘッグ要塞攻略作戦が開始される。

 第一矢として、MCとCASによるワイルド・ウィーゼルとSBによる対レーダーミサイル攻撃を敢行し敵MDを撃破。

 第二矢として、アンドレ氏による核ミサイル2発によってニーズヘッグ要塞の装甲隔壁を蒸発させる。MCとCAS、そしてアンドレ氏は巻き添えに注意してくれ。

 第三矢として、はどうしようか。私にも250ktクラスの核弾頭の威力は想像が付かないのだ。もしかしたらそれだけでニーズヘッグ要塞が崩壊するかもしれないし、あるいは傷一つ付かないかもしれない。だから、臨機応変に頼むよ』


「「『了解!!!』」」


 さあ、まもなくエンゲージ、心躍る空戦の時間だ!!

#機体データ<Tu-160M3-ブラックジャック3>

乗員―4名(ゲーム内ではプレイヤー1名+補助NPC3名)

全長―56.1m

翼幅―55.7m

全高―13.1m

空虚重量―113,500kg

兵装搭載量―52,000kg

エンジン―NK-32M×4基

推力―142kN/基 (巡航)、248kN/基 (アフターバーナー)

最高速度―2,180km/h(高度12,200m)


備考

 超音速戦略爆撃機Tu-160(1981年初飛行)の近代化改修、再生産モデル。

 当初、ロシア連邦は2022年に新型亜音速戦略爆撃機PAK DAの配備と、Tu-160などの旧式爆撃機の退役を予定していたが、2020年の最終戦争勃発に伴いPAK DA計画を中断。

 PAK DA計画で得られた知見を既存機に反映させる形でTu-160を近代化改修したのが本機である。

 胴体の延長と改良型エンジンによって兵装搭載量が増大し、アビオニクスに至ってはPAK DAへの搭載が予定されていたモノが流用され、大幅な近代化が達成された。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ