シンデレ・・・・ラ?
調子に乗って第二段やってみました。
リクエストしていただいた西の国です。
最初にあらすじっぽいことを白雪ちゃんのときに書いちゃったので、書いてる途中暴走して違う終わり方になってしまったときは焦りました。
軌道修正してみると結構元の童話とかぶっちゃったので、ぶっ飛んだものをお望みの方には物足りないかもです。
勢いで書いちゃったので、後日ちょいちょい修正入れるかもです。
コンコン
ノックの音が響き、部屋に四十歳前後の長身の男が入ってきた。ここは、シンラーデ国の第一王子の自室である。この部屋の主は、椅子に座りテーブルに足を乗せるという王子らしからぬ行儀の悪さでくつろいでいた。
「殿下…結婚相手のことなのですが……」
「相手なら決めた。スピーナ国の第一王女だ。」
「……その方は呪いで眠り続けておられるではないですか!」
「だからいいんだ。眠っているなら相手をしないで放っておいても文句は言わないからな。」
「いけません! 殿下はこの国をお継ぎなられる唯一の方なのですぞ! そのことをお分かりになっておいでですか?!」
「わかっている。だからこうして問題なさそうな嫁を選んだじゃないか。」
「殿下。そんな風だから男色家などと言う噂がたってしまうのですぞ。」
「いいだろ? 別に。言いたいやつには言わせておけ。」
「殿下は次期国王なのですから、そういった醜聞は避けていただかねば。」
「俺が女嫌いなのは事実だ。」
「……王子がまじめに考えぬというなら私が選びましょう。そうですな…お隣のレイメイ国の金鈴王女なんていかがです? とても美しいと評判ですぞ。」
「そいつは女か?」
「…それは勿論。王女ですから女性の方です。」
「却下だ。女なんていやだ。」
「殿下。女性が相手でなければ子は生せませんぞ。それにこの王女、巷では『じゃじゃ馬姫』と呼ばれているとか。殿下の想像する女性とはまた違っているかと。」
「却下だ却下。子なんぞつくらんでいい。俺は一生独身を貫くぞ。だいたい、『じゃじゃ馬姫』とか言う名からしていやだ。きっと好き放題に暴れまくるに決まっている。」
「ですが、このままでは王家の血が途絶えてしまいます。」
「そんなものは知るか。父上たちにがんばってもらってもう一人子を作ってもらえ。」
「殿下! そのようなことを口になさってはいけませぬ。陛下方はもう老齢の身。さすがにもう一人子をなすのは……」
「なら、あれだ。適当なやつを養子にしろ。」
「ですから、それでは王家の血が…」
「うるさい! 王家の血王家の血と…。だいたい、父上が玉座につくときに親族を皆殺しにしたのが悪いんだ!」
シンラーデ国の今の王にはかつて兄弟が十四人いた。が、王位争いの際に王に全員殺されたのだ。
王は徹底的に王家の血を継ぐ親族たちを滅ぼした。そしてこれから後にまた王位争いで民が苦しむことが無いよう、王位は王の一番上の子どもに継がせるという法を創った。
そして、法を浸透させるために子は一人しかつくらず、次代の王位継承のときに王位争いが無いよう全力を尽くした。
が、しかし。生まれた子どもは必ず王位を継ぐとわかっていた城に勤める侍女たちは幼い王子に猛烈なアプローチをかけた。王子の目にとまり、正妻とまでは行かなくとも側室にしてもらえれば将来は安泰だからである。
王子が無邪気に遊び相手を選ぶ、その裏では誰よりも目立って王子に選んでもらおうという醜い争いが繰り広げられていた。
王子が誰か一人の侍女を気に入れば、その侍女は他の侍女たちから徹底的な嫌がらせを受けた。
王子がそのことに気づいたときにはもう遅かった。
当時、王子が気に入っていた傍仕えの侍女が他の侍女たちの嫌がらせに耐え切れず自殺を図ったのだ。
そして、王子は女性たちが水面下で繰り広げていた醜い争いに気づいた。
王子は侍女を死に追いやった侍女たちを憎み、侍女たちの醜い争いを恐れた。だが、王子の周りの女性たちは相変わらず醜い争いをし続けた。
それから数年がたち女性たちの醜い争いを見続けた結果、少々性格の曲がった女嫌いの王子が出来上がってしまった。
そして、冒頭の会話へと戻るわけだ。
王子は女性と結婚したくはないが、子をなさないと王家の血が途絶えてしまう。そのことに危機感を持った家臣一同は王子には内緒で会議を開くことにした。
「どうしますかの…このままでは本当に王家の血が途絶えてしまいますぞ。」
「女嫌いさえなければ王としては非もないのだがなぁ……。」
「もういっそのこと殿下の言うとおり陛下方にがんばっていただくというのは…?」
「宰相まで何を言い出す気じゃ! それに、陛下のご意志は変わらんだろうよ。王位争いの火種になるといって、子を欲しがった王妃様を説得なされていた時の恐ろしさといったらもう……」
当時のことを思い出したようにぶるりと体を震わせる大臣。
「こうなったらもう、強硬手段しかないですな。」
「えぇ。無理やりにでも殿下には女性に慣れていただきましょう。」
「名づけて、国中の女を呼んで女に慣れさせよう作戦!」
「決行は一週間後じゃ。各々方、くれぐれも王子に気取られぬよう細心の注意を払って行動されるよう。」
一週間後。王子に気取られることなく国中におふれを出し舞踏会の準備を完了させた家臣たちは最大の難関、『王子を舞踏会に参加させる』を実行するため、王子に舞踏会の存在を知らせた。
「ふざけるな! 何で俺がこんな女だらけの舞踏会に出なけりゃならないんだ! 俺は部屋に戻る!」
「ですが殿下。彼女たちは殿下のために集まってくださったのですぞ。」
「知るか。俺が呼び出したわけじゃない。お前たちが勝手にやったことだろう。」
「それでも国民は殿下の命令だと思っております。人心の掌握も立派な公務ですぞ。」
「公務といいさえすれば俺が何でもやると思うなよ! ダンスだぞ? 女に近づくだけでなく、手を握り、体を密着させなければならないんだぞ?!」
「初心な発言ですな。」
「茶化すな! あんなに女が集まっているだなんて……寒気がする。」
ドアの隙間から広間を覗き見る王子は体を震わせた。
「わかりました。では最初の一時間だけでよろしいので広間にいてください。」
ため息をついて譲歩案を出す大臣。
「わかった。ただし、俺は踊らないからな!」
これ以上は何を言っても折れないと悟った王子は、早々に白旗をあげ舞踏会へ参加することにした。
舞踏会を行う広間には思い思いの格好をした女性たちがおり、ダンスの邪魔にならないよう壁際に寄せられたテーブルには豪華な食事が所狭しと並んでいた。
そして、王子はというと……王族の座る豪華な椅子に座っていた。脇には大臣が控えている。
「では殿下。乾杯の音頭を。」
「ああ。」
大臣からささやかれ、王子は立ち上がりグラスを頭上に掲げた。
「みなのもの! 本日はよく集まってくれた。今日ばかりは身分を気にすることなく飲み、食べ、踊りあかすがいい! 乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」
音楽が流れ始め、広間の人々は飲み、食べ、踊り、談笑する。そんな和やかな雰囲気の中、王子は一人仏頂面で椅子に座っていた。
「殿下。一度でいいのです。一度でいいのでどなたかと踊「却下」っていただ………」
「殿下、あの赤いドレスの方はいかがです? とても美しゅうございま「却下」すよ……」
「では、あの萌黄色のドレスの「却下」かたは…」
大臣がどの女性を薦めても王子は相手にしない。それどころか、大臣が一人薦めるたびに機嫌が悪くなっていく。
「殿下……殿下が一度も踊らないと国民が…殿下?」
とうとう大臣が泣き落としにかかろうとしたとき、王子が突然立ち上がった。
「ナ……タリー…?」
「殿下? どうかなさったのですか?」
王子の視線は壁際でぽつんとたたずんでいる白い色のドレスを着た女性に向けられていた。
「おい、……部屋を用意しておけ」
「へ? ……は、はい!」
うれしそうに顔を緩ませる大臣を置いてふらふらと王子は白いドレスの女性の元へ歩いていく。
「お嬢さん。一曲、お付き合い願えますか?」
優雅に一礼し、女性にダンスを申し込む王子。言葉使いががらりと変わっている。
「え、ええ。」
戸惑いながら女性が王子の手を取り、二人はダンスフロアへ躍り出た。
「お嬢さん、お名前は?」
「硝子と申します。」
「そうですか。私の名は灰零といいます。」
くるくるとワルツを踊りながら会話する二人。
「その靴、とても美しいですね。お名前に合わせたのですか?」
硝子の足元には硝子の靴が輝いていた。
「ええ。魔法つ……父が、用意してくれましたの。」
そうして、硝子と王子は何曲も何曲も踊り続けた。
「硝子、踊り疲れたでしょう? 少しやすみませんか?」
踊り疲れたのは王子がずっと手を離さず踊り続けていたせいなのだが、王子はあえてその事実を無視して甘い声でささやく。
「部屋を用意させました。少し座ったほうがいいでしょう?」
「ありがとうございます。では、少しだけ…。」
二人はそうっと広間を抜け出し、王子が用意させた部屋へ向かった。
部屋につき、王子は硝子をベットに座らせた。
「足が疲れたでしょう? 少し、靴を脱いでおいたほうがいい…。」
そういいながら王子は硝子のガラスの靴を片方脱がせる。
ここで何かがおかしいと気づいたのか、硝子は王子から少し離れようとした。が、王子はそんな硝子の腕を取りそのままベットへと押し倒した。
「ねぇ、離れないで。俺と一緒に…イイコトしようぜ?」
色気たっぷりに耳元でささやく王子。
耳元でささやかれた声に、真っ赤になって固まる硝子。が、それもしばしの間だけ。
十二時の合図の鐘がなったことをきっかけに我に返った硝子は大きな声で叫び、王子の頬へ思いっきりビンタした。
そしてそのまま脱がされた靴を履くのも忘れて窓から飛び出し、逃げていった。
「何事ですか?!」
硝子の叫び声から少しして、衛兵と大臣、そして宰相が部屋へ飛び込んできた。
それも出迎える王子の頬にはくっきりと赤い手形が残っていた。
「殿下?! お怪我をなさって……」
「ふふ、ふふふふ。」
「で、殿下? 灰零殿下?」
「ハーッハッハッハ!」
心底楽しそうに笑う王子を見て、宰相はまじめな顔で大臣にすがりついた。
「どうしよう大臣。殿下が壊れた。」
「落ち着け宰相。殿下? 何があったんですか?」
「襲おうとしたら逃げられた。」
笑うのをやめ、まじめな顔つきでとんでもないことを言った王子に大臣たちは口をあけて固まった。
「ふふ。まさか私に媚を売らない女性がいるなんて…。そうだ、衛兵! 先ほど出て行った女を逃がすな! 俺の妃にする!」
笑顔で宣言した王子に、衛兵たちは慌てて硝子を探しに部屋を出て行った。
しかし、硝子は見つからず、手がかりは王子が脱がせた硝子の靴だけとなった。
「大臣! 国中を回ってこのガラスの靴がぴったり合う娘を探し出せ!」
「殿下。無茶を言わないでください。同じサイズの足の者が何人いるとお思いで? おそらく、この城内だけでも十人はおりましょう。」
「手がかりなら他にもある。硝子という名前だ。いいからとっとと探せ!」
「承知いたしました。」
ため息をついて大臣は兵士たちに硝子の靴を持って国中を回るよう命令を出した。
二週間がたち、ようやく王子の下に硝子が見つかったとの報が入った。
硝子は商家の娘だった。
王子はすぐにでも硝子を妻に迎えようとするが、
「殿下…王族ともあろう者が平民と結婚するなど……」
「そうですぞ。いくらそれなりに栄えた商家の娘であろうと平民は平民。王族とはつりあいませぬ。」
当然、大臣たちからは猛反対される。しかし、王子の味方は意外なところからあらわれた。
「いいのじゃないかしら。灰零がせっかく女性と結婚する気になったのだし。」
「そうだな。わしらも猛反対されたが、結局わしが王妃を攫って事後承諾させたのだし。それに比べれば事前に了解を得ようとする灰零はマシなのではないか?」
王子の両親、王と王妃である。まともな援護射撃をおくったのは王妃であるが、家臣たちには王の言葉のほうが効き目絶大であった。
「そ…そうだった……殿下はあの陛下の血を継いでいるんだった…。」
「あ、あのときの事後処理に比べればこれはマシだというのか…?」
「ここで反対を続ければまたあの悪夢がよみがえるというのか?!」
青くなって震えるもの、頭を抱えるもの、遠い目をして宙を見つめるもの……等々さまざまな反応を見せた家臣団は一度全員で額を寄せ合ってから、声をそろえて言った。
「「「ご結婚おめでとうございます、殿下。」」」
家臣たちの了解も得られた王子は意気揚々と硝子の実家へ行き硝子の両親と話をつけた。硝子の了解を得ずに。
そして迎えた結婚式当日。
時間間際になっても現れない新婦を心配した王子が控え室へ行くと、そこに新婦の姿はなく、窓が開いていた。
驚き急いで窓から外を眺めると、逃げ出したばかりらしく、そう遠くない場所に白いドレスを着た女が走っているのが見えた。王子は窓から飛び出し、新婦の後を追いかけた。
ドレスの女と日ごろから鍛えている動きやすい格好の男では足の速さは一目瞭然。すぐに硝子は王子に追いつかれてしまった。
「こないでください!」
「なぜ逃げる?!」
「なぜですって? 望まない結婚だからに決まっているでしょう?!」
硝子の声にわずかに顔をゆがませる王子。
「嫌…なのか?」
「嫌に決まっているじゃない! 何もかも私の知らない間に話が決まって、いつの間にか結婚よ?
それを受け入れるほうがおかしいわ!」
「私は、王子だ」
「だからなんですか? 王子だから、結婚の命令に従えと? ふざけないでください! だいたい舞踏会の夜だってあんな……」
言いながらそのときのことを思い出したのか、硝子の顔が真っ赤に染まっていく。
「とにかく! 私はあなたのおもちゃじゃないんです! 愛してもいないのに結婚だなんて出来ません!」
硝子の『愛していない』という言葉に王子は目を見開いた。
「愛して…いないのか……?」
「当たり前でしょう?! だいたい、殿下だって私のことを愛してはいないではありませんか!」
「……なぜ?」
「なぜって…私はあなたから結婚しようとも愛しているとも言われておりませんもの。すべて人伝に私とあなたが結婚すると聞いただけですわ!」
「…………………。それは、自ら言うものなのか?」
「はい?」
「そうか。」
戸惑う硝子にはかまわず一人でうんうんとうなずく王子は、きりっと表情を一変させ、硝子の前にひざまづいた。
「硝子、愛している。俺と結婚して欲しい。」
「なっ」
とびっきりの甘い声で求婚された硝子は思わず顔を赤くさせた。
「さあ、これでいいだろう。式場へ戻ろう。」
やりきった…というさわやかさを背後に浮かべ、笑いながら王子は硝子へ手を差し伸べた。
「待ってください!」
「なんだ、まだ何かあるのか。」
「私は、それを承知しておりません!」
「……じゃあ、承知しなくていい。権力を使ってお前と結婚する。」
そういって王子は硝子を抱き上げ式場へと歩いていく。
「何をするんですか!おろしてください!」
「おろさない。お前は私と結婚するんだ。」
「ふざけるのもいい加減にしてください! 私とあなたはあの舞踏会の夜に一度会っただけではないですか! 何でそれで結婚なんて話になるんです?! からかわれているとしか思えませんわ!」
硝子の言葉に足を止める王子。
わかってくれたのか…と胸をなでおろす硝子。
「では、お前は私がふざけていると思っているんだな。」
「え、……えぇ。」
「私は真剣だ。ふざけてなんていない。…確かに会ったのは一度きりだ。だが、俺はそこでお前にほれた。」
「は?」
「一目ぼれしたんだ。」
真剣な顔で硝子を見つめる王子。
「だから、お前は俺のものにする。異論は認めない。」
そういってまたすたすたと歩き出す王子に、硝子の胸は高鳴っていた。いや、はじめから硝子の胸は王子と関わるときだけ、鼓動を早くしていた。硝子が認めたくなかっただけで。
「……仕方がありませんわね。」
「とうとう観念したか。」
「それは悪役のせりふですよ、灰零様。」
そういって硝子は灰零の唇に自身の唇を押し当てた。
実は二人とも一目ぼれだったんだよって話のはず。
灰零君が盛ったりしなければ二人はもっと穏便にゴールインできたはずだったのに・・・。
この後、不器用灰零くんは硝子を怒らせてばっかりな結婚生活を送ります。でも最後はラブラブ(^^♪
やっぱりこれのジャンルは恋愛じゃなくてギャグなんだろうか?
恋愛要素があまりない・・・・。
今回は名づけにもこだわってみました。
灰零→シンデ○ラの日本Ver.の題名『灰かぶり姫』と零時の鐘から。
硝子→そのまんまです。ガラスの靴からとりました。
ちなみに白雪ちゃんの雪白は反対にしただけですね。
後、国の名前にも微妙に・・・。
スピーナ国→イタリア語で『茨』という意味です。
シンラーデ国→シンデレラをちょっといじりました。
一応。元のお話はこの話とは似ても似つかないすばらしい童話です。シン○レラさんを誤解しないでください。
そして朔夜は童話・御伽噺の類が大好きです。よってこの改造に悪意はありません。
改造が改悪になっていないことを祈ります。