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二 気分は修学旅行

自分はあんまりチャットとかスレとか分からないので、細かい所を突っ込むのはなしでお願いします。


「いやいやいやいやいやいや、何言ってるの皆!?」


「いや、もうこれしか手はないだろう」


「……天才(笑)」


 次々に頷く皆。流石にそれは無理だし、嫌だ。兄弟同士で恋愛はないだろう。


「しかし、他に手がないのも事実でござる」


 風魔の言葉に僕は呻く。


「ま、まだ他にも手はあるかもしれないじゃないか!」


「…なら、行ってみる?」


 雪がワクワクといった様子で口を開く。僕を含め、皆その言葉の意味が分からず首を傾げる。


「人間界。もしかしたら、他にも手はあるかもしれないわよ?」


 その提案に、僕達は目を輝かせた。







 魔界から出て来た僕らがいたのは、森の中だった。


「…そんなに魔界と変わらない?」


「いや、変わってるでござるよ」


「そうねぇ、日の光が強いわぁ」


 魔界から出て来た僕らを太陽が歓迎する。ただ、僕らには問題ないんだけど…、


「いやぁ、暖かいなぁ」


「!?アルカード!崩れてる!何か身体が砂になってるよ!!?」


「うおっ!ホントだ!?」


 ヴァンパイアのアルカードには問題ありまくりらしい。


「とにかく日陰に避難でござるな」


 砂になっているアルカードを風魔が木陰に突き飛ばす。衝撃で身体が崩れてしまい驚いたが、暫くしたら再生した。良いなぁ、あの能力。


「で、人間界に来たのは良いけど…。どうするの?」


「私は人間界の竜を持ちかえりたいわぁ」


「…じゃあ、サンドバッグ。なるべく丈夫な人間が欲しい」


「拙者は忍者の里に行きたいでござる」


「俺は…早く夜になってほしい」


「何で皆、修学旅行気分なんだよ」


 全く協調性の無いメンバーだ。けど、正直僕もギルドと言う所に行ってみたい欲求はある。


「はいはい、皆静かに。先ずはこれからどうするかを決めましょう。そうね、弟君は―――」


「姉ちゃん馴染めてるかなぁ。……っ!」


 何気なく口走った言葉に僕は皆の顔を見る。皆はやけに暖かい目で僕を見て言った。


「シスコン乙w」


「流石は弟君wwホームシックであるかww」


「…ワロス」


「…大丈夫、皆ちゃんと分かってるから」


「遠見の魔法で覗いてみる?」


「いらないよ!大体シスコンって何だよ!!」


 その視線に耐え切れず僕は叫ぶ。くそ、意味は分からないけど腹立つ。


「と、取り敢えず!僕はちゃんとした男物の服が欲しい!!」


「「「「「却下」」」」」


「早いよ!もう少し考えてよ!!」


「もう弟君は女で良いでござるよ。似合っているでござるよ、うん」


「殴るよ!?いくら温厚な僕でも怒るからね!!?」


 僕の言葉に皆がぶーぶー言う。けれどそんなもの知るか。ずっと女物の服でいるなんて耐えきれない、精神的に。

 僕は憤慨して街道に出ようとする。しかし、不意に周囲が薄暗くなった。


「弟君!上でござる!!」


 その言葉に、僕は上を見上げる。そこには無数の牙が並んだ何かの口があった。


「うわぁ!」


 思わず僕は尻餅を着いてしまう。その間にも、その何かは僕に迫って来る。


「ほっ!」


「……!」


 しかし、僕を襲ってきた何かは風魔の投げた手裏剣とユイの拳の前にその活動を停止した。


「大丈夫でござるか、弟君」


「…気を付ける」


「あ、ありがとう二人とも」


 僕は立ち上がると二人に礼を言う。


「何これ?」


「植物だねぇ。魔界の奴より擬態が上手いなぁ」


「魔界の植物は脳みそが筋肉で構成された様な奴らばっかりだからね」


「ハエトリグサならぬリュウトリグサだったものね」


 そんな風に言葉を交わしながら僕ら一行は歩いていく。たぶん、皆適当に歩いてるんだろうなあ、などと思いながら僕も皆に進む。結局の所、人間界の地理が分かる人はいないのだ。だったらこんなことて騒いだって仕方ない。


「取り敢えず、当面の目的は姉君を止める方法がないか探すことね」


「弟君が文句ばかり言うから…」


「あれは当然の文句だと思う」


 皆が真剣に考えた結果があの案と言うのは……正直酷い。


「この森ってこんなのばかりなのかな?」


「…弟君ビビるの早過ぎ」


「ビビってないよ」


「……弟君、その割にやけに周囲を警戒するわね」


 雪の言葉に僕は不安を隠しながら、大したことない様に言う。


「腰が引けているでござるよ」


 風魔が何か言っている気がするけど気のせいだろう。うん、僕は怖くもなんともないから。


「ああ、その前にこれを皆に渡しておくでござるよ」


 そう言って風魔は何処から少し大きめの端末を取り出す。


「何だこれ?」


「“魔界ねっと”に繋ぐ為の端末でござる。代金は弟君の口座から―――」


「え?!聞いてないよ!!?」


「これで弟君の安全が保障されるなら安いものでござろう」


「…うっ」


 そう言われると何も返せない。これももしかしたら役に立つのかもしれないし。


「何かあったら何時もの板に。特に弟君、特に弟君は!」


「何で二回も言ったし…」


「何時も逃げ回って逸れるものねぇ」


「……」


 エリーの言葉に僕はそっと目を逸らす。仕方ないじゃないか、運が無いんだから。


「取り敢えず、連絡用ってことか」


「…普通に水晶でも良かったんじゃ」


「こっちの方が面白いでござる」


 何かどうでも良い理由で僕の口座からお金が消えていく気がする…。


「それじゃぁ、いざという時はこれを使いましょうか。先ずは…近場の街にでも行くわよ」


 風魔から渡された端末を胸ポケットに入れ、雪は皆へと言う。僕達はそれに頷くと、先ずは街道を探す為にその場から歩きだした。






【生存】絶望的状況から如何に面白く弟君を脱出させるか考案しよう!【不可能】


1:忍者に憧れた狼男

 さぁ、これより会議を始めようじゃないか


2:綺麗な真っ黒人形

 ドンドン、パフーパフ―


3:花屋の吸血鬼

 やる気ねえだろw





「おい、何でこんな傍に居るのに板で会話してんだよ」


 試しに接続してみたら既に三名いた。





4:淫魔(笑)な糖分女

 スレタイを如何にして落とすか、に変えるべき





「いや乗るなよ」


「まぁまぁ」


 ツッコム僕を雪が宥める。いや、駄目でしょこれ。ここで止めないと絶対終わらないからね。





5:闇堕ちした元王女

 >>4

 同意ww





「おいぃぃぃ!?何で雪まで乗ってるんだよ!おかしいでしょ!!」





6:忍者に憧れた狼男

 すまん、うっかりしてたでござる∑(゜Д゜)


【攻略】絶望的状態から助かる為に頑張って姉君を落とそうとする弟君を応援しよう!【可能?】


7:忍者に憧れた狼男

 これでおk?


8:淫魔(笑)な糖分女

 ( `д´)bグッ


9:闇堕ちした元王女

 ( `д´)bグッ


10:花屋のバイト吸血鬼

 確かにこれがしっくりくるなww


11:凡夫な弟君

 殴るぞ


12:花屋のバイト吸血鬼

 ( ゜∀゜)・∵.wwwwwwww





「ふん!」


「ぐふぅ!!?」


 どうしようもなく腹が立ったので笑いだしたアルカードのお腹を思いきり殴った。自分が出せる全力だった上に、油断していたアルカードは躱すことすら出来ず痛みで悶絶する。それを見た皆もすぐに端末を弄るのを止めた。最初からそうすれば良いのに。


「ほら、さっさと行くよ皆」


 僕は皆に早く進むように促して歩いて行く。ついでに風魔の脛も思いきり蹴っておいた。全く痛がってないのが悔しかったけど。


「む、街道でござるな」


「おいおいおい、待て待て待て待て!」


 街道でへと出ようとする僕らを、慌ててアルカードが止めに来る。どうしたのだろうか?


「まだ昼間だぞ?街道になんて出たら砂になっちまう」


「…そう言えばそうね」


「となると、街道に近過ぎず遠過ぎずで街を目指した方が良いでござるな」


 それはそれで面倒臭い気もするけど、アルカードが砂になってしまうのは困る。


「と言うかさ、街に行ってどうするの?」


「…情報収集、人間界の地理情報、買い物」


「最後のはいらないね」


「…え?」


 僕の言葉に、ユイは何を言っているのか分からないと小首を傾げる。可愛いけど、可愛くてもこれは譲れない。だって下手したら僕のお金がなくなるから。というか、魔界のお金ってこっちでも使えるのかな?


「普通に使えるわよ?元々魔界のお金は人間界の物を取って来て広まったんだもの」


「あ、そうなんだ。詳しいね雪」


 そして出来れば人の心を読まないで欲しい。


「そりゃぁ、広めたのは私だもの」


「……雪の歳って幾つ?」


「………」


「ごめんなさい!」


 流石に女性に歳のことを聞いちゃいけないらしい。雪に無言で殴られてしまった。痛い…。

 魔族はある程度成長すると肉体の年齢は止まる。基本的には不老なのだ。死んでも記憶を失って転生する為、その数が増える事はあっても減ることはない。

 見た目的には雪は二十代前半なんだけれど…。もしかしたら親父と同年齢と言う事も有り得る。……無粋かな。


「情報収集が終わったら一回魔界に戻るでござるよ」


「え、何で?」


「何でって……弟君は馬鹿ねぇ。私達だけで姉君を倒せる訳ないじゃない」


「魔界にいる魔族も戦力に加えないと、勝負にすらならねえからな」


 アルカードとエリーの言葉に僕はそれもそうか、と頷く。僕達だけで人間界に出て来たからてっきりこのメンバーでやる気かと思っていた。


「役に立ちそうなもんは魔界に持って帰る」


「…そして厄介そうな人間界の魔物を姉君に嗾ける」


「そこからは一気に畳み掛けて消耗させると言うのが妥当でござるな。でも、これは最後の手段。弟君の告白が上手く行かなかったらでござる」


「え、あれ本気で言ってたの?というか僕が姉ちゃんを好きみたいだから止めろ」


 僕の言葉に皆が頷く。絶対無理なのにどうしてそこまでやらせたがるのか。僕が半殺しになって終わりだよ。


「弟君はツンデレであるか」


「ふん!」


「…!」


 ふざけたことを言う風魔の足を踏み抜く僕。誰がツンデレか、誰が。


【攻略】絶望的状態から助かる為に頑張って姉君を落とそうとする弟君を応援しよう!【可能?】


13:綺麗な真っ黒人形

 弟君が御乱心


14:淫魔(笑)な糖分女

 弟君×狼男、ほむ…続けて


15:花屋のバイト吸血鬼

 >>14

腐っていたかwww


16:綺麗な真っ黒人形

 昔からドジばかりしていた弟君を優しくサポートする狼男


17:淫魔(笑)な糖分女

素晴らしい。

そして何時しか狼男は、自分の思いに気付く…


18:忍者に憧れた狼男

 拙者で変な妄想を繰り広げるなww


19:闇堕ちした元王女

 名作の予感ww


20:凡夫な弟君

 女性陣の悪ノリが酷い…


21:花屋のバイト吸血鬼

 あ、何か壁が見えて来た


22綺麗な真っ黒人形

 口で伝えなさいw


23:闇堕ちした元王女

 あ、ホントね。そろそろ戻りましょうか




「何でまたチャット会話なんだよ…」


「拙者、二時間に一回はチャットをしないと死ぬでござる」


「死んでしまえそんな忍者」


 忍ぶ者なら忍べよ。チャットなんかしてないで寡黙でいなよホント。


「ほらほら、喧嘩しないで。街に入るんだから仲良く行きましょうよ」


「そうそう、皆仲良くしなきゃぁ」


「…あ、そう言えばアルカード」


「ん?俺が何だよ?」


「日光、どうするの?」


 ユイの言葉に、アルカードだけでなく全員がその足を止める。


「「「「………あ」」」」


 森の中、僕達の間抜けな声がやけに響いた気がした。


読んで下さった方、ありがとうございます。思ったより多かったので少しびっくりしました。なるべく失踪しないように努力します。

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