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復活-楽屋落ちシーン-

<楽屋落ちシーンの前振り>


歌手「北島由希」の弟に暴力をふるわれ、首に怪我をした北条きたじょう明良あきら。医者の許可が出、歌のレッスンを再開するも、サビになると首をかばってしまい声が出なくなってしまう。

そんな明良を、同じアイドルである「相澤励」と姉の「百合」が励まし、何度もレッスンを続けるうちに明良の声が出るようになり、音楽番組で「復活」を果たした。


~楽屋落ちシーン~


音楽番組にて…。


「今回は相澤さんのお姉さんのプロデュースによるものだそうですが、見つめあったり、抱き合ったりするのがお好きなんですか?」


その司会者の女性の言葉に、スタッフが笑った。


「抱き合ったりっていうのは、僕たちが思わずやったことなんですけど…」


相澤先輩が答えた。


「でも考えてみれば、僕たち、よく抱き合わされたというか…なぁ明良」


僕は苦笑して何も言わなかった。前で百合さんが頭を掻いている。


「例えばどんな?」

「明良が、首を無意識にかばって、どうしてもサビのところで声が出なかったんですけど、姉が急に僕に「明良の後ろに立て」って言うんですよ。」

「はい」


司会者の女性の目が興味津々だった。彼女もまんざら嫌いではないようだ。


「で、こうやって…あ、明良立てよ。」

「え!?やるのー?」


僕がびっくりしていると、司会者の女性が「是非!」と言った。僕と先輩は立ちあがって、先輩が僕の後ろに回った。


「で、おい、マイク持って」


先輩が僕にマイクを渡そうとしたが、司会者の女性が「私が持ちます。」と言って持ってくれた。


「で、左腕をこうやって、明良のウエストのところに回して、自分に引き寄せろって。」


先輩はそう言って、僕の体を左手で抱き、ぐっと体を密着させた。


「きゃぁぁ」


司会者の女性は、もう声を上げている。スタッフが笑った。


「で、右手のてのひらで、明良の首の後ろを抑えろって。」


先輩は僕の首に手を当てた。


「このまま、明良は歌わされたんですよ。」

「ずっとこのままですか?」

「そうそう。」

「でも、どうしてこうなんですか?」


司会者が先輩と百合さんを見比べるようにきょろきょろして尋ねた。先輩がそのまま答える


「声を張ろうとすると、どうしても後ろに体が反る形になるんですよ。で、明良はその時首に怪我していましたから、無意識にかばおうとして、そのままひっくり返っちゃうんですね。」

「あ、それで危ないと。」

「そうです。で、僕がこうやって抱きとめるような形にすれば声を出せるんじゃないかと姉は考えたわけです。」

「で、実際どうでした?」

「すぐに声が出たよな?」


先輩が僕を抱いたまま、肩越しに尋ねてきた。僕は笑いながらうなずいた。


「きゃあぁ…お姉さんさすがですねぇ…」


司会者がそう言って百合さんを見ると、百合さんは恥ずかしそうに笑っていた。


「で、明良の声が出た瞬間…やっぱり嬉しいじゃないですか。1週間くらいずっと出なかったし…。」


司会者の女性がうんうんとうなずいた。先輩は続けた。


「で、僕は思わず、こうやって後ろから「やったな!」って言って、両腕で抱き締めたんですよ。」

「ひゃあぁぁぁ…」


女性司会者のキャラクターが壊れかけている。僕は思わず笑った。


「そしたら、姉貴…なんて言ったと思います?」

「?…なんでしょう?」

「『男前同士が抱き合ってるのって、いい絵だわぁ~』…だって。」

「きゃはっはっはっ…!」


女性司会者のキャラクターが完全に壊れた。スタッフも大笑いしている。百合さんは額に手を当てて照れくさそうにしていた。先輩は僕から離れ、マイクを受け取りながら言葉を続けた。


「そこかよっって!明良が歌えたのが嬉しいんじゃなくて、そこかよっ!って僕つっこみたかったですよ。」


女性司会者は「その場にいたかったです~」と言いながら、なかなか笑いを抑えられなかった。


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