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16.「俺の出番」と赤いRV車

16.「俺の出番」と赤いRV車



 二人組が釈放された。 取り調べた結果、松波とのつながりはないということだった。 「もしかしたら、二人と接触するかもしれない」俊彦はマッチョに二人組を尾行させた。


 別荘では、外へ出ることを禁じられた奈美恵が居間でテレビを見ていた。 健司は電話の前でイライラしながらそんな奈美恵を見張っている。

 ニュース番組が始まると、元国交省の役人が襲われたニュースの続報が報道された。

『元国交省の役人が天下り先で暴漢に襲われた…』そのニュースが報道されると、健司はテレビの前に寄って来た。 奈美恵は健司の表情で、健司がこの事件にかかわっていることを察した。「建ちゃんが逃げている訳はこれなの?」

 健司は無言のまま、じっとテレビを見ている。 すると、仕留めたはずの男が画面でインタビューを受けている。 健司は我が目を疑った。

「どういうことだ? 死んだんじゃなかったのか…」


 二人組は釈放されると公衆電話から松波に電話した。 松波は二人組に健司と女を始末するように指示すると、引き続き健司が隠れている別荘に電話をかけた。


 健司はニュースで仕事が失敗に終わっていたことを知り、胸騒ぎを覚えた。 奈美恵はそんな健司の表情で、健司が不安に駆られていることが分かった。

「ねえ、やっぱり自首した方がいいよ。 あの人も死んでないんだし、松波って人に無理やりやらされたと言えば、罪は軽くなるよ」奈美恵は健司を必死で説得し続けた。

 健司も、このままでは松波が許さないだろうと考えていた。 奈美恵の言うとおり自首しようと電話の受話器をつかみかけた瞬間、電話のベルが鳴った。 健司が受話器を取ると相手は松波だった。

「よくここまで逃げ切れたな。 女も連れて来たのか?」相変わらずドスの利いた声だ。

「ええ、でも仕事は失敗しました」

「まあいい。 いずれにしても捕まって貰っちゃあ俺が困る。 もうすぐ、使いをやるから、そいつらと一緒にマニラへ発ってくれ」そう言って松波は電話を切った。


 俊彦は引き続き別荘地を調べていた。 すると、新聞配達の青年から、怪しい二人連れを見たという話を聞いた。 確認のため、携帯で撮ったマリの写真を見せると、女の方はこの女性で間違いないと言った。 俊彦は青年に聞いた別荘へ車を飛ばした。

 ちょうどその時、マッチョから連絡が入った。「ヤツら旧軽の別荘地へ向かっています」俊彦がマッチョの現在地を確認すると、自分の方がはるかに近い。

「ああ! 俺も居場所を突き止めた。 そいつらがこっちへ来るのを何とか阻止してくれないか?」俊彦がそう頼んでみると、マッチョは声を弾ませ、「待ってました! やっと俺の出番ですね」と言った。


 二人組は尾行に気が付いていた。 別荘地に入るとすぐに脇道へ入って車を停めた。 ずうずうしくも、マリのクーペにまだ乗っている。 尾行してきた車も近くに泊るのを確認すると、車を降りて近付いて行った。


 マッチョが車を停めると、向こうの方から近付いてきた。 マッチョはニヤッと笑った。

「飛んで火にいるなんとやら。 これでマリさんのクーペを傷つけないで済む」


 松波の話を聞いて受話器を置いた健司は確信した。 松波は自分たちを始末するにいがいない。 すでに、松波の部下がここへ向かっているかもしれない。

「すぐに、ここを出るぞ。 用意しろ」健司は先に外へ出て、車のシートを外した。 すぐに奈美恵も出てきた。

「自首するの?」奈美恵が聞くと健司はうなずいた。


 マッチョは二人組が近づいてくるのを見て、車の外に出た。 二人組の片方がマッチョの胸ぐらをつかんで凄んで見せようとした瞬間、マッチョの膝が股間を直撃した。 男はその場に崩れ落ちた。 それを見たもう一人の男がふところに手を入れた。 マッチョは崩れ落ちた男を担ぎあげると、その男めがけて放り投げた。

「物足りねえなあ」二人組を縛り上げるとマッチョはそう言って二人の顔面にけりを入れた。


 健司は奈美恵を車に押し込むと、運転席にまわり車を発進させた。 別荘を出ようとした時、一台の車に出口を塞がれた。 赤いRV車だった。 健司は窓を開けて「速くどいてくれ」と怒鳴っている。 奈美恵はその車に見覚えがあった。

「トシさん…」





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