第2話 氷刃百仁華の朝
________チュン、チュピチュピ__________ウッキャァァーー!!!
さわやかな春のそよ風と、かわいらしい小鳥の囀り(?)で目を覚ます。
ぅぅうん。もう朝?……きっとまだ大丈夫よね。そうとくれば二度寝を…
_________________ウッキョェェェェーー!!!!!! コケッコケェェェェェェ!!!!
いや、うるせぇわ!!嘘でしょ、!?こんなうるっっさい鳥なんているの!?
_____コォォォォケコッッッッッッッッッッッッコォォオォォォォォォ!!!
あぁぁぁぁ、頭痛が痛い……………。一体どうなってるのよ…、
もぉ…、こんなにうるさい中で寝られるわけないわ、二度寝は無しね。
それで………ここは保健室、、ではないわよね…。どう見ても、私の部屋だもの…。
それにしてもおかしいわ…私、昨日どうやって帰ってきたのかしら?
昨日、入学式と始業式の打ち合わせをして、生徒会室の戸締りをして…、それから……?
「……そうだわ、意味のわからない、…あの…アレよ。あの…、アレを見たの、アレよ。」
「…お化けじゃないですかね、お嬢様が見たの。」
「そう!お化けよ!そうそう、それそれ。スッキリしたわー。はっ、もしかして宛兎磨学園の七不思議ってほんとの話だったの?!
……ってきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「はぁ…、おはようございます、百仁華お嬢様。お元気そうで何よりです。」
「お、おはよう…。急に話しかけるのやめてもらえるかしら???」
「そろそろ慣れていただきたいです、もう12年の付き合いなんですから。」
「無理よ、私が怖がりなの知っているでしょう?」
「そう、ですね。…もう12年の付き合いですから。」
「ね?私のこれはもう治せないのよ!」
「はぁ、自慢げに言わないでもらえますか?誇れるところではございません。」
「むぅ、腑に落ちない……。ところで、お元気そうで何よりってどういうこと?
私、どうやって帰ってきたの?……昨日のこと、ほとんど覚えていないの。」
「切り替えの速度がえげつないっすね、お嬢様。
……お嬢様は昨日学校で倒れていたんですよ、びっくりしました。もう。
ですから、あれほど夜の学校にはお気をつけくださいと、何度も言いましたのに。」
「むむむ、だって、あんなお化けが出てくると思わないじゃない!あり得ないわ!」
「まぁ、お嬢様のいいところですよね。……その能天気なところ。
愛すべきバカとはよく言ったものです。」
「はぁ?貴方ねぇ、誰のおかげでここにいると思っているの?
この私が能天気ですって……?……………、あながち間違いではないわね。」
「あ、認めるんですね。能天気お嬢様?」
「………。」
「ゴフッッッ」
「愛の鞭、よ。喜びなさい。」
「うぐ……。み、鳩尾に拳を入れるとは…少々愛が足りないのでは?」
「あら、おかわりが欲しいの?もぉ、仕方がないわね…。」
「お、お嬢様、可愛い所作で殴ろうとしないでください…!!」
「こほんっっ!
……百仁華お嬢様、ご主人様がいらっしゃいました。お通ししてもよろしいですか?」
「ええ、もちろん構わないわ。」
「っちょ、え゛」
紀之守が何か言ってるけど、気にしなぁい気にしない。
「おはよう、百仁華。体調は大丈夫かい?今日は始業式だからな。」
「おはようございます、お父様。ええ、もうすっかり元気よ。学校に行くのが楽しみだわ!」
「はは、それは良かった。無理だけはしないように。
それから………、?どうした紀之守。お前も体調が悪いのか??」
(まぁ、お父様ったら。紀之守に気づくのが少し遅いわ、初めに気づかなくちゃ。
ふふ、紀之守も可哀想にね…、私たち氷刃家の人間に気に入られてしまったなんて。)
なんてことを考えていることなどおくびにも出さず、紀之守の声を遮って代わりに答えてやる。
「ふふ、きっと私が元気になって嬉しいのだと思いますわ。」
「な………あ゛っ……!?」
もちろん、お父様の前だから、紀之守を心配する《《フリ》》も忘れない。
(見えないように紀之守の手の甲をつねるのも忘れない。)
「そうかそうか。やっぱりお前たちは仲がいいなぁ。いいことだ。
さ、もうすぐ出発の時間だ。進学式に遅れないようにな。」
「もちろんですわ、お父様。ではまた後ほど。」
「あぁ。」
お父様が踵を返して私の部屋を出ていく。パタン、とお父様の秘書である館風一颯が扉を閉めるのを見届けた後、
「ゴハッ」
「うう…お、お嬢様、ゴリラですか?力強すぎでしょう……。」
「あら、クビにされたいのならハッキリ言ってくれる?お父様に進言して差し上げるわ。」
「すんませんでした!お嬢様のだぁぁい好きなル・コワン・ドゥイエのショートケーキワンホール、ご主人様に内緒で買ってきますから!」
「………まぁ、許してやらんこともないわ?」
「よっしゃチョロ!お嬢様ってやっぱ単純…しかも食い意地張ってる………。」
「聞こえてるわ、ワンホール追加。」
「うああああああああああああああああああああああ!!」
紀之守回収隊の皆さんが来て、無事、紀之守は回収されていった。
___________あぁ、そういえば
_________________倒れていた私を運んできてくれたのはいったい、誰だったのかしら…?