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宛兎磨学園の日常  作者: onmayuko1119
第1章 宛兎磨学園の恐怖
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第1話 大屋肇の苦労



「夜の学校もスリルがあっていいわね」

(…まるで少女漫画のヒミツのでえとみたい。)「……きゃっ❤️」


「ん?」


色々言いたいことがあるのに言えないもどかしさと戦っていた大屋は最後の悲鳴の部分しか聞き取れなかった。




(っそうだ、彼女は?さっきまで悲鳴をあげていたはずだが…。

まさか………?!)


なおもしゃべり続ける彩葉を尻目に大屋は辺りを見回した。すると、かすかに何者かの足音が聞こえてくる…。


「…チッ」 

(おいおい、マジかよ…。勘弁してくれ………。)


(最悪俺だけなら逃げ切れる。ただ、生徒の彩葉が見つかってしまうと……流石にヤバい。

常識的に考えて、どこだろうが夜の学校に忍び込んでる時点で建造物侵入罪だ。

それがバレたらコイツは……、最悪長期の停学処分になる。それだけは駄目だ。)


思わず舌打ちをして考え込む大屋を見て、彩葉は驚愕する。


(い、いつもは舌打ちなんてしないのに…、……それにしても似合うわね、惚れちゃう…。)


そう、彩葉の前での大屋は少し荒っぽいだけで、常に礼儀正しく、優しいジェントルマンなのだ。

因みに言うと彩葉も、大屋に関するときが異常なだけで、通常はお手本と褒め称えられるほど淑女らしい。大屋の前でだけ、恋する乙女になるのである。


しかし、どんなイチャラブをしても現実は覆らない。聞こえてくる足音は着実にこちらへと近づいてくる。


「……おい、学生証は持ってるな?」


「え?……え、えぇ。さっき入る時に使ったから持っているけど。

……何かあったのね?」      



「誰か来た。これは氷刃さんじゃねぇ。

いいな。合図をしたら扉にむかって走れ」


「で、でも、…そんなことしたら貴方がっ!」


「そんなのどうとでもなるさ、気にしなくていい。

……分かったな、俺が合図をしたら出口まで走るんだ。…悪ぃ、夜道に一人にして。」


「ふふ、大丈夫よ。私だって鍛えてるんだから!」


「…悪いな。無理だけはしないでくれよ。

……………よし。今だ、走れッ!」





…ッッなんだコイツは…!この現大屋組組長の俺に、気配を悟らせないとは…。何者だ??


「まあまあ、そう殺気立たないでくださいよ。あなたになにかしたいわけではありませんからね。俺…いえ、私はそこに倒れている女を回収しに来ただけのしがない執事ですから。」


本当になんなんだ?こいつ。

氷刃さんの執事だとか言っておきながら、主人であるはずの彼女を"女"と呼ぶなんて。


(ホラ吹いて誘拐でもするつもりか?)


見たこともない男の顔をじっくりと観察する。


しかし裏業界に住まう人間特有の血生臭さもなければ、服も上等で金に困っている様子もない。もしそうだったとしても、男に漂う色気や、嫉妬も通り越して見惚れるほどの目鼻立ちの整った顔つきを見て放っておくような令嬢は居ないだろう。


(ということは、なんらかの理由で無理やり雇われている…ってことか?

脅されている可能性も捨てきれねぇな。)


二人して腹の中を探り合うように見つめあっていると、さらに別の足音が聞こえてくる。


(しまった…、……音からして女性だな。)


双方睨み合いを中止する。そしてそれぞれ逃げようと一歩踏みだした瞬間。


大屋の顔を懐中電灯の明るい光が顔を照らした。自身の顔を、目を遠慮なく照らす光に思わず目を瞑る。


光が逸らされ、目が暗闇に慣れてきた頃。


濃い紫色のピンヒールを履いた美女が、男二人の逃げ道を塞ぐように仁王立ちしていた。


(うん、詰んだ。)


その美女から放たれるオーラに自身の死を悟る。逃げ出そうにも、その美女__おそらく教師だろう___に経路を塞がれているため、身動きが取れない。


美人教師がその艶やかな唇を開いた。


「すでに学校は閉まっているはずですが…。一体何のご用で?」


凄まじい、しかし神々しいとも言える笑顔で問いかけられる。


二人とも何も答えず押し黙っていると、笑顔が消え、呆れた表情になった美人教師に、


「はぁ…。とりあえず敵意はないのですよね?」


と問われた。それに、


「「もちろんだ(です)!」」

と、両手をあげて答える。大屋は命の危機を感じて必死だが、余裕があるのか手を上げた時に謎の執事が氷刃さんを吹っ飛ばしたように見えた。


(………気のせいか?流石に。)


そんなことを場の雰囲気に似合わないポヤポヤとした頭で考えていると、再び教師の視線が突き刺さる。


「ならば、即刻お帰り願います。ここへの用などもうないでしょう。」


それに「それでは失礼致します、レディ。」と答えると、氷刃さんの執事(?)は彼女を大切に抱えるでもなく、米俵のように抱え、闇に溶けていった。


何故かそれを苦しげな表情で見つめていた彼女だったが、流石と言うべきか、すぐに切り替えると、大家に向き合った。


「これからはこういったことは謹んだ方がよろしいのでは?現大屋組組長の大屋肇さん。」


(チッ、バレてやがる。)


「さもなくば、あなたの大切なものが傷つくことになりますよ。

例えば、……。御宮さん、とかね?」


「…あ“?」


「まぁ怖い。御宮さんの前とでは、随分と態度が違うんですね?」


「…何が言いてぇんだよ」


「ふふ、______でしたが…このまま見守るのも面白いかもしれませんね。」


「…?だから、どういう__」


「あら、もうこんな時間。それではお気をつけて。

彼女が貴方の帰りを心待ちにしていますよ。」


そう言い残し、彼女はピンヒールの軽やかな音を響かせ、いかにもご機嫌な様子で部屋を去っていった。それを呆然と見ていた大屋だったが、その意味にすぐに気がつくと、すぐに気がつくと、帰路を急いだ。




その数分後、玄関で右往左往としている彩葉を見た大屋が頬を緩ませていたのはまた別のお話。






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