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宛兎磨学園の日常  作者: onmayuko1119
第1章 宛兎磨学園の恐怖
1/6

プロローグ

ラブコメ、青春、ホラー、ミステリー、全てが織り込まれた滅茶苦茶な物語。






※この物語はフィクションです。

物語に出てくる人物や学校名は全て架空のものです。













「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!?」




薄暗い校舎に甲高い悲鳴が響き渡る。


夜の校舎に怯えながらも先へと進み、時折先ほどのような悲鳴を上げる1人の少女を見つめ、小さく息を吐いた。


(頼むから静かにしてくれ〜〜〜!!)


男は少女に念じながら、自分の経営するアパートに越してきた高飛車なもう1人の少女と、ここに至るまでの経緯を思い出し、先ほどと同じように息を吐いた。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


                        

ことの発端は男の経営するアパートに住む1人の少女が、"また" 、突拍子もないことを言いはじめたことだった。


男、改め大家の大屋はまたか…と呆れるがそんなことも構わず少女、御宮彩葉が話し始める。


「ねぇ、お願いがあるの。」


「お願いィ…?」


大屋の言葉には若干の呆れが込められている。

「そう、お願い。」


(今度は何を言い出すんだ…??)


今までの話やお願いから大屋は彩葉が次に言おうとしていることを推測する。


(この前は主従関係になれ、その次は大家を譲れ、そのまた次はこの土地を売れ、更にその次は高御堂ホールディングスの代表取締役社長の御令息のフリをして私と婚約しろ、だったよな……というかコイツ、変な上に出来ねぇことばっかり要求してきやがる………)


今更すぎることを考えている大屋を見て話を聞いていない、と感じたのか彩葉が大屋の肩を揺らす。


「ねぇ、聞いているの?」


「あぁ、あぁ。聞いてるよ」


「もぅ、絶対に聞いていなかったでしょう!ちゃんと聞いていて?」


(…別に変なことなら聞きたくねぇんだけどな)


そんな大屋が考えていることなど知る由もなく、彩葉は話を続ける。


「あなた、私の通っている学校、知っているでしょう?」


「あぁ、宛兎磨学園だろ?前々から思ってたけど、なかなかに酷い名前だよな…」


「えぇ、本当。誰がつけたのかしら、当て馬の方?」


くすくすと笑う彩葉に半ば呆れたように大屋が続きを促す。


「はぁ、お願いがあるんじゃねぇのか?」


「あら、ごめんなさい。

それでね、明後日の夜、宛兎磨学園に忍び込んで来て欲しいの。」



「…………。」

「…………はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


「随分と溜めたわね。」

 

「うるせェ!お前、自分が何言ってんのかわかってんのか!?」


「えぇ、もちろんよ。私の通っている学校、つまり政治家のご令嬢や大企業の社長のご令息…日本の最高権力をもつお方の子供が集まった超お金持ち学校である宛兎磨学園にコッソリお邪魔してきて、生徒会副会長である氷刃百仁華さんを脅かしてきてほしい、と言っているの。」



「はぁぁぁ、…………お前なぁ、そこまでわかっててなんでお願いできンだよ……。」


宛兎磨学園は金持ちや権力を持つ者、さらに偏差値の高い優秀な者ばかりが通う学校で、それ故にセキュリティーはとても厳しい。


そう、宛兎磨学園は阿呆らしい名前からは考えられないほどにしっかりとしている学校であり、そこに不法侵入するということはまさに自殺行為なのだ。


「でも、あなたならできるでしょう?」


それを理解していても、彩葉がここまで自信を持って聞けるのは単に大屋の凄さからである。


表立って言えることではないが、大屋は昔闇バイトを行っていた。


その内容はチンピラたちがやるような子供騙しではなく、それこそ宛兎磨学園に侵入するほどの難易度だった。


彩葉は両親がそういった情報に強いことで、大屋が闇バイトをしていたこと、同じアパートに住む和佳奈も闇バイトをしていることを知っており、その実力を買いお願いしているのである。


目的が仕様もないことを除けば、素晴らしい信頼関係なのだ。……彩葉にとっては。


そんなことなどつゆほども知らない大屋も実際には宛兎磨学園に侵入することなど造作もないが、足を洗った彼はこれ以上法を犯すようなことはしたくなかった。


結局、彩葉の心無い脅しによってこのお願いを聞くことになるのだが。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




(………………いや、結構マジで酷くねぇか???)


一昨日起きた一連の出来事を思い出し思わず震えた大屋だったが、また聞こえてきた


「きゃぁぁぁぁぁ!?」


という悲鳴と、


「あら、震えているけれど…大丈夫?」


といういないはずの少女の声で現実に戻される。



「ッッ!?」


なんとか悲鳴を殺しきり、早鐘を打っていた心臓を落ち着かせると、

静かにこちらを見つめる彩葉に、小声で問う。


「……いつのまに来たんだよ?」


「あら?気づかなかったかしら、最初からいたわよ。元闇バイト、現大屋組組長も大したことないのね?」


「お前なァ……」

(くそ、コイツが女じゃなきゃ殴れンのに…‼︎)



荒々しくも紳士的な大屋の葛藤を見て、くすくすと笑いだす彼女の表情は悲鳴を上げる少女を見つめていた時よりも愉しげだった。











(……それにしても…あの女。あの“演技”は私に対する当てつけかしら?)




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