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世界は愛おしい!  作者: 終マ2
1章 曙の道
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6話 朝ご飯は美味しい!

 枕が振動して、目を覚ます。

 あぁ朝…か。

 重たいまぶたを持ち上げて、体を起こして枕を見る。


 なんということでしょう……枕に巻いた白いバスタオルが赤黒く染まっているではありませんか。

 俺は鼻の下を触る。

 うおぉ、と自然と声が漏れる。

 まさか、2日目から鼻血とは。


 ……昨日の風呂の夢でも見たのだろうか?

 とりあえず俺は枕の下に潜らせていたスマホのアラームを消す。

「はぁ……」

 小さいため息をついて、体を伸ばす。

 顔洗おう。


 俺は2階の洗面台に向かい鏡を見る。

 予想以上に顔は血まみれだった。寝返りのせいでこめかみまで血がついている。これは顔だけじゃなくて頭から洗わなくちゃいけないかもしれん。

 水道をひねり、水を出す。

「おはようございます」

 後ろから声が聞こえた。

 この声は…

「おはようございます、大川さん」

 俺は振り返ろうとしたが首をひねったのか痛かったため、ゆっくりと振り向く。

「ふふ、昨日も言いましたが敬語じゃなくても……」

 大川さんの顔色が青くなる。

「も、もしかして……明里ちゃんに……」

「え、いや…たぶん普通の鼻血です」

「それならいいのですが……いえ、良くはありませんけど」

「すみません、すぐ洗いますね」

 俺は顔の血を洗い流して、洗面台を大川さんに譲る。

 大川さんは感謝を言って洗面台で顔を洗った。そのまま居間に向かう。

「昨日も言いましたが、敬語じゃなくてもよろしいのですよ」

 ああ、そういえば風呂から上がったとあとにそんな事言われたな。なんとなくで敬語で話していたが同い年だし、何より許可が下りている。

「でも、出会って昨日今日だと早すぎると思うんがな」

「ふふ、明里ちゃんも敬語を使っていませんし、気にすることないですよ」

「なら、大川さんは敬語使ってるけど」

「これはもう癖なので」

 育ちが良いな。柚伏さんもこんなに育ちが良かったら……

「明里ちゃんの家は少し特殊なんですよ」

「もしかして、心を読める異能力(アビリティ)でもある?」

「いえ、私には(・・)そんな異能力(アビリティ)はありません。ただ明里ちゃんの事を考えてそうだったので」

 含みのある言葉だったが、あえてスルーして話を逸らす。

「そう。そういえば柚伏さんは?」

「まだ起きていませんよ。遅刻ギリギリにいつも起きるので」

「起こさないのか?」

「起きませんので」

 大川さんが悲しそうな顔をする。本人は隠しているのだろうが、気がついてしまった。

 俺はふ〜ん、と興味のないふりをする。

 別に興味がない訳では無い。柚伏の家も含みのある言い方も、その表情の理由も気になる。でも、彼女から語らないなら根掘り葉掘り訊くのは野暮というものだろう。

 大川は少し微笑んで聞き逃してしまいそうな声量で

「あなたがお優しい人で良かったです……」

 


 それとほぼ同時に朝食が運ばれてくる。

「うおぉ〜」

 ご飯と味噌汁と焼き鮭が湯気をもくもくと立てる。ザ・ニホンのアサゴハンのような雰囲気だ。

「いただきます」

 と、みんなで手を合わせ言い、食べ始める。

 ちなみに今、パジャマなのは俺だけである。なんか恥ずい。

 明日からは着替えてから部屋から出るか。


 朝食を食べ終わったら俺は自室へ向かい、急いで着替えた。

 ここから学校までは歩きで20分ほど。今から出ると遅刻ギリギリというわけではないが、大川さんが「一緒に登校しませんか?」とお誘いがあったのだ。


 つまり、登校デート、つまりアベック登校!

 妙に高いテンションになりながら、ブレザーのボタンを留めて部屋から出る。

「では行きましょう」

 目の前にいるのは大川さん

「背負ってくの?」

 とおんぶされている柚伏さんだった。

「そんなに起きないのか……」

「いつもは10時くらいには寝付くのですが、お風呂の件もあって寝るのが遅くなったのでしょう」

「意外と早寝なんだな……」

 寝る子は育つというが嘘なのかもな。

「さあ、行きましょうか」

 俺たちは階段を下り、玄関で靴を履き、戸を開ける。

「待ってたぜっっっ!!」

 跨っているいかついバイク、学ランの上からでもわかる筋肉質の体型、それでいて筋肉を全面に出さない体格の細さ、要は鍛え抜かれた細マッチョだ。

 細マッチョはフルフェイスヘルメットを被っていて顔が見えない。意図的に隠しているのだろうか。

「神里司っっっっ!!!お前をっ!誘拐っ!!しにきたっっっ!!!」



 フルフェイスヘルメットとバイクに跨ってこちらに体を捻っている体勢、学ランによりこのセリフはあまりカッコよくなかった………




〜とあるビルの一室〜

「昨日の夕刻、ターゲット(・・・・・)に気づかれ監視及び調査を中止しました」

「そうか……それで、わかったことは……?」

あの情報(・・・・)は嘘ではありません。最大限気配は消しましたが、気づかれたことが証拠です」

「そうか……荒山(あらやま)、交渉してこい。無理なら殺せ」

「わかりました。行くぞ、ガキ」

「私はガキではなく三郷(みさと) こゆりです」

「ガキなのに変わりねぇだろ。…………あとオヤジ、この5分で、そうか……を30回言ってます」

「そうか………早く行け」

「そうか………は今ので50回目です」

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