表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界は愛おしい!  作者: 終マ2
3章 人の道
43/43

40話 会議中に踊るはアリス

投稿が遅くなってすみません。いろんな物語考えてたらこの作品に手がつかなくなっちゃいました。あとゲームとかしてたら…

 結果的に学校をサボった俺たちは宮黒さんに自宅学習を命じられた。

 だから俺は布団にくるまってスマホをいじっている。


 自宅学習を命じられ本当に勉強する人は沖縄で雪まつりをするぐらい珍しい。と思っている。


 美郷と宮黒さんは居間で話しているらしい。


 コンコンコン

 ドアのノック音が耳に届く。

「はい?」

 俺は顔だけドアに向けて返事をする。


「開けるぞ」

 声の主は宮黒さんだった。

 ギィーとドアが軋む。


「立て付け悪いな」

「まあ色々ありましたから」

「……荷解きまだ終わってないのか」

「やろうとするとやる気がなくなるんです。あと色々と起きすぎて時間が足りません」


 宮黒さんは小さくため息をついて、「まあいい。アザトースに訊きたい。こゆりの異能力(アビリティ)は何だと思う?」


 突如に心のイチモツが浮き彫りになった気がした。俺のではない。アザトースのものだ。ドス黒い何かが襲いかかる。

「妾の知見の限りでは、断言は出来んが……空間を裂くものじゃろう。じゃが……」


「弱すぎる、か」

「ああ。|あの2人の(・・・・・・)じゃとすればもっと強大な力があるはずじゃ。父似でも、母似でも、まだこゆりは弱すぎる」


 2人とも何の話をしてるんだ?俺だけが理解できない会話を繰り広げられて頭に疑問が駆け巡る。


「アザトースも来い。こゆりと話して判断してほしい」

「汝が妾に乞うとは気分が良いな」

「くだらないこと言ってないで来い」


『ほら立て。行くぞ』

 行く?居間?

『そうじゃ』

 行くのはまあ良いけど、俺に説明してくれ。父似とか全然何言ってんのか分かんないぞ。


 俺は立ち上がり、廊下に出る。


『そうじゃな……まずは昔の話をしよう』


 あ、回想入るやつだ






 およそ10年前、妾を含めた8人は世界征服を企んでおった。妾を筆頭に着々と世界征服は進んでいた。北海道を治め、東北を制覇し、遂に関東に手を出した直後じゃった。


 それまで妾たちと対立する組織は山のようにおった。じゃが、所詮は烏合の衆。蹂躙しつくした。


 組織とすら呼べないほどの集団が妾たちの前に立ちふさがった。


 その集団は現、宮黒優が属していた連中だった。その集団は他とは違い、1人を除いて能力者だけで構成されていたり、本名を呼び合わない、金を積まれれば依頼をこなすが組織の戒律を破ってはならないなど特殊だった。関東制覇の足元にすら及んでない小規模の集団だったが、その組織の名を聞けば裏社会の連中は顔を真っ青にさせておった。


 じゃが、その集団を調べると、集団に臆しておるというよりかは、集団の幹部的存在の2人に怯えている様子だった。


 2人の片方は男、もう片方は女じゃった。


 誰しもが口を揃えて2人のことを死神と呼ばれておった。どうやら2人の姿を見た連中は全員殺されていたんじゃとか。命からがら逃げたとしても、次の満月を見ることはできないと言われておった。


 そこまで強い者に、妾は興味が湧いてその嬉々として対峙した。


 結果、妾たちは負け、同胞らは散り散りになってしまった。妾は深手を負いこうして誰かの中ではないと消失してしまうほど弱くなってしまった。




 ここからは推測にすぎんが妾たちを倒した後の死神2人は子を宿した。いつ妊娠し、どこで出産したかは分からんが、何らかの経路であの仮面の男が死神の子を手に入れた。仮面の男は何を目的か、その子を汝に託した。



『とまあ、経緯をざっと言えばこんな感じじゃろう』

 ……つまり、さっきの発言は美郷こゆりの両親が強いのに、こゆり自身は弱いってことか。


『そうじゃ』


 異能力(アビリティ)って遺伝するものなのか?

『すると断言はできん。試験体も情報も少なすぎる。じゃが、現段階の研究では相関関係があると言われておる』


 思ったんだが、その情報はどこから来てるんだ?あのアリスさんから?

『妾の同胞らの内の1人からじゃ。アリスは今日初めて見た。が、懐かしい感覚じゃった。まるであの死神を相手にしているときのようじゃった。気をつけろよ司、メソメソしていると取って食われるからな』


 取って食われるって……言い方がまるで怪物だな。


『怪物で間違いないからな』


 えっ?どういうこと?

『まあ、先に優と話をしよう』


 俺は座布団に座る。宮黒さんは俺の隣に、美郷はちゃぶ台を挟むように座っている。


「単刀直入に訊こう。汝の親は誰じゃ」

 口が勝手に動く。


「私に親はいない」

 美郷は俺を見つめながら言う。声に悲壮感はない。抑揚の無い言葉は不気味さを感じさせた。


「汝、異能力(アビリティ)はわかるな?」


「わからない。思ったところにあなができる」


「ふむ。なら脱げ」



 は!?なな、何言ってんの?!

『これが1番手っ取り早い』

 なんで!?

『もし親が死神なら人間じゃない。男は心臓が無い。女は性行為をすると極楽浄土に行けるほど気持ち良いと聞いたことがある』


 ちょっと待て。嫌な予感がする。


『要はセッ〇スしろ』

 頭イカれてんの?

『身体的特徴なら遺伝するじゃろ』

 だからって…!


 美郷は立ち上がって大きさに合わないTシャツの裾を摘み、持ち上げようとする。後もう少しで色々見える直前に、「やめろ」と宮黒さんが言った。


「それ以上は許さん」


 宮黒さんは俺、というよりかはアザトースを睨み言い放つ。


「何じゃ?目の前で強姦は汝でも気分が悪いか?」

「そうだ」

「じゃが、試す価値は十分にある」

 俺と宮黒さんの視線が交差する。普通なら耐えられない重圧を嬉々として受けている。





「あったとしても、それは許されねぇなぁ」



 瞬間、後頭部に硬い何かが押し当てられる。

 見なくても感覚でわかった。銃口だ。




 全身に悪寒が走る前に身体が宙を舞い、天井に着地と同時にカーヴを構える。カーヴの銃口の先は……


「おー…凄い凄い。世界征服を企む奴になるとその位まで出来るようになんのか。これはいざという時に殺し甲斐があるな」


 アリスだった。


『圧巻じゃ。全く気配を感じ無かった。惨殺のアリスの俗称も伊達ではないようじゃ』

 ざ、惨殺のアリス?

『そうじゃ。惨たらしい所業で恐怖を植え付けて最後は殺す。言うなれば悪魔じゃ』


 アリスさんと目が合う。サングラスは掛けておらず、黄金に輝く右目と紺碧の左目が見える。


「惨殺のアリス……懐かしい響きだ。こっちに来てから細々と暮らしてはいたが、そのニックネームがここまで来てるとは感慨深いな」



 なっ!?何で心の中で言ったことを!?もしかしてアリスさんの異能力(アビリティ)は人の心を読むのか?


「人の心を読む…当たらずとも遠からずだな。覚えときな、能力者にとって異能力(アビリティ)がバレることは死を意味する」


 アリスさんが話している間に宮黒さんはアリスさんの背後を取っていた。

 しかし、アリスさんは背後すら見ずに、

「下の奴にカッコ悪い姿を見せないほうがいいぜ。信用問題に関わるからな」

 アリスさんは構えていた拳銃の銃口はいつの間にか宮黒さんの顎に押し当てられていた。



 アリスさんは拳銃をホルスターに収める。


「遊びはここまでにしとくか。ほら下りてこい。ここで暴れるつもりはねぇよ。ただ伝え忘れてたことを伝えに来ただけさ」


 突然、上に感じていた重力が、無くなり落下する。肩甲骨辺りから畳に打ち付けられ、肺がおかしくなって呼吸ができなくなる。血の匂いもかすかに感じた。



「ガキはまだまだだな。まあいい」



 アリスさんは靴を履いたままちゃぶ台に上る。

「あのダッセェ仮面からの言伝だ。このガキを小学校に通わせて、真っ当な道を歩ませろだとさ。入学は明後日まで待ってやる。あと、レイプとか売春とかはなし。こいつは正真正銘死神の子だ。丁重に扱えだと」

 アリスさんは美郷の前に行くと、美郷と対面するような形で腰を下ろした。


「だけど、つまんねぇよな。あいつは甘すぎる。神里、人は何を乗り越えたら強くなれる?」


 俺は不意の質問に思考が止まる。ただ頭に思い浮かぶのは歌詞や名言などで見た、困難を乗り越えた数だけ強くなるというフレーズ。


「そうだ。本当はあのまま帰ろうかと思ってたが、あの野郎から連絡が来てな。あいつのあの言葉を聞いたら、気が変わったんだ。神里、てめぇの真価は治癒じゃねえ。私が強くしてやる」


 アリスさんは右手で美郷の右頬を優しく触れる。親指がまゆ毛に触れる。その親指をゆっくりと下に持っていく。美郷は下がるにつれて瞼を閉じる。


 親指が遂に瞼を挟んで眼球の上に来た時だった。


 何をするかが分かった。でも身体は動かない。まるで夜道に飛び出してきた狸のように身体が固まり呼吸もできないまま見ていた。


 アリスさんは親指で眼球を押し込む。みるみると、美郷の瞼の隙間から血が流れる。


 痛いはずなのに美郷は黙ったまま左目でアリスさんを捉らえている。


 アリスさんは手を離し、不気味な笑みを浮かべて「目を見せろ」と美郷に言う。


 美郷はゆっくりと目を開ける。すると右目には羊のように横棒があった。


 アリスさんは俺たちの方に振り向き、

「2週間後のこの時間、こいつの右目は頭を吹き飛ばすほどの爆発をする。もちろん即死だ。特別に教えてやる。神里の異能力(アビリティ)は死人には通用しねえ。蘇生はできねぇ。だが、お前なら美郷を助けられる」


 アリスさんは美郷を優しく抱き寄せて

「死なせてやるなよ。死なせた場合、約束を破ったとしてここにいるやつら皆殺しだ」


 そう言い残して、アリスさんは消えた。文字通り消えたのだ。瞬きをしたらいたはずアリスさんがいなくなっていた。


「……な、何が起きてるんですか?」

 俺は現状が理解できず、宮黒さんに訊く。

「……アザトース、お前は嘘をついたのか?」

「嘘をついた覚えはない。異能力(アビリティ)は何度も使って推測するしか無い。こいつにまだ異能力(アビリティ)があってもおかしい話じゃなかろう」


 宮黒さんは俺を睨む。正確に言えば、俺の中にいるアザトースを睨んでいるのだろう。


 宮黒さんはため息をついて、

「予想以上に面倒くさいことになったな。とりあえず……」

 宮黒さんは縁側に座り、タバコに火を付ける。


「それ今じゃなきゃダメなんですか?」

  俺は宮黒さんのマイペースさに苛立ちを覚え、問い立てる。


 宮黒さんは煙を吐き出し、「物事が思ってたより速く進んだときは立ち止まるんだよ。止まれるときに止まっとかなきゃ望まない方向に突っ走ることになるからな」と言い、タバコにまた口をつけた。

レビュー、評価、感想、ブックマークを頂けると励みになり、投稿頻度が上がるかもしれまん。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ