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世界は愛おしい!  作者: 終マ2
3章 人の道
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36話 食事は荒々しい!

「今晩はお刺身ですよ」

 リビング?みたいなところにはいくつものテーブルが並んでいて、その1つに皿が並べられていた。

 ほくほく湯気が出ている白米と輝く刺し身たち。

 美味しそうだとは思ったが、近くに仮面男と謎の女児、略して謎児がいると思うと恐怖に押しつぶされそうになる。


「こんなにもおもてなしをしてもらい恐縮です」

 仮面男は何事もないように椅子に腰掛ける。謎児も彼の隣に座る。


「……僕たちも座ろう」


 北村が先導して仮面男と対面する椅子に座る。

 大川は謎児と対面するように座る。俺は最後にセバさんと対面するように座った。

「ではいただきます」

 セバさんが手を合わせてそう言うと仮面男と謎児が続いて「いただきます」と復唱する。

 俺たちも続いて言い、箸を進め始める。


 仮面男だけは箸を進めることなく、俺の方を見つめてくる。それに気を取られて俺の箸が止まった。

「……な、何ですか?」

「いえ、ただ訊きたいことがありますので食べ終わるのを待っていようかと」


 つまりは食べ終わるまであの視線に晒されるということか?ムリムリムリムリ!きついって!

「……気にしないで話してください」


「いいですか?なら訊きます。アザトースさんにはこの話が聞こえてますか?」

 あ、アザトース?何で…

「聞こえている」

 口が勝手に動く。

「見ないうちに出世したのう」

「ええ。前の組織が壊滅した後に生き残ったもので再結成したんですよ。今ではわたくしは幹部ですよ」

 か、幹部…!?この人ってそんなに上の人だったのか!?


「その幹部がそんな忌み子を連れてるとは、何を企んでおる?」

「やはり分かりますか?しかし忌み子とは頂けませんよ。この子は聞き分けのいい子です」


「あいつらの子供だと思うとそいつにも何かあるんじゃないか?」

「……さあ?さておきわたくしが話したいのはこの子のことです。この子は見ての通り感情が死んでおります。可哀想とは思いませんか?」


 確かに謎児の無表情しか見たことがない。


「わたくしから1つお願いがあるのです」

 仮面男の声のトーンが低くなる。


「この子を」

 

 仮面男はスーツのポケットから注射器を取り出して、謎児の腕に刺す。すると謎児が仮面男に手をかざす。まるであの日の柚伏や鶴山を殺しにかかったときのようだった。でも何も起きない。


「引き取って貰いたいのです」


 謎児は無表情だが、どこか驚いたような困惑しているような気配が感じられた。しかし、すぐに懐からナイフを取り出して、仮面男に刺しにかかる。

 仮面男はナイフが刺さる前に謎児の腕を掴んで腕の関節を本来曲がるべき方向の逆に曲げる。痛々しい音が腕から聞こえた。仮面男は直ぐ様立ち上がって、顔をテーブルに押さえつける。


 顔は食器類に当たり、刺身やお米が飛び散る。そして仮面男は謎児からナイフを奪い、謎児の両目を切り裂いた。

「あひぃ〜」

 謎児は声をいっさい出さず、すでに戦意を喪失しているようだった。あひぃ〜は俺だ。


「お見苦しいところをお見せしてしまい申し訳ありません」


 彼はそう言って、ナイフを謎児の手のひらとテーブルを突き刺す。

 北村の方を見るとポケットに手を突っ込んでだまま座っていた。大川も手は膝の上に置いて、ただ2人の動向を伺っていた。


 俺はと言うと、目の前の光景に耐えられず仰け反ってイスから転げ落ちた。




「テーブルを壊してしまいすみません。テーブルは後日賠償します。話を戻しましょう。わたくしは」

「帰れ」


 仮面男の言葉を遮って、北村が言葉を発した。


「お前と囲む食卓はない。帰れ」

「…うーん…わたくしはアザトースさんと話しているつもりですが」

「ここの家主が言ってるんだ。帰ってもらおう」

 北村は立ち上がることなく、ボッケに手を入れたまま話し続けた。


「北村さん、食事マナーとして手をテーブルの下より持っていくのは頂けませんよ。大川さんも」

「分が悪いぞ」

「構いません」


 何かが起こる。全員の視線が交差し、今にでも人が死にそうな空気が漂う。


「おやめなさい」


 しかしその1言で空気の色が変わった。発したのはずっと黙々と食事をしていたセバさんだった。


「私は敵意が無いと判断してここにいるのを許可したのです。これ以上暴れるのならその子供もろとも処分いたしますよ?」


 仮面男は動きを止める。表情が見えずどんな感情を抱いてるか分からないが、さっきまでの切羽詰まった雰囲気は感じられなかった。


「坊っちゃんも、ここにいる限り客人です。テーブルマナーは守りましょう」


 北村は仮面男を睨んだまま手をテーブルの上に置いた。


「大川さんもテーブルマナーは知っておきましょうね。神里さん、良い転びっぷりですね」

 セバさんがからかうように言ってくるが、こんな状況で笑える筈がない。気にする余裕もない。


 ただこれからどうなるかが気になって、腰が抜けた。


「これは失礼いたしました。ではお話の内容は手紙で済ませましょう」


 仮面男はスーツの裏ポケットから手紙を取り出して、テーブルの上に置いた。


「この手紙は宮黒さんに渡してください。他の人は見ないでくださいね。親展ですから。ではわたくしたちはこの辺で帰らせていただきます」


 仮面男は謎児の手に刺さったナイフを抜いて、謎児を担いで去って行った。


 俺はもちろん、北村も大川も箸を進めるきにはなれず、結局夕食は手を付けずに残してしまった。

レビュー、評価を頂けますとそのたびに私の口角がtan[α・cos∫¹₀{6÷2(1+2)dβ}]°(αは星の数、βは感想の数)上がります。

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