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世界は愛おしい!  作者: 終マ2
3章 人の道
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34話 銃声はかまびすしい!

「素晴らしい……」

 唖然とする俺の横で大川は目を輝かせながら言った。

 

 大川は壁に掛けられている銃の目の前に「触ってもいいですか?」と北村に訊く。

「どうぞお好きに。なんならあっちで撃ってきてもいい」

 そう返答の直後に大川は拳銃を手にして、いじり始める。


「マテバ2006Mですよ!ハンサムです!」


 キャッキャッと今にでも飛び跳ねそうなほど喜ぶ大川を横目に北村は俺に話しかけて来る。

「神里にあげるのはマキシム9とカーヴっていうハンドガンだ」

 北村は大川の横を通り過ぎ、2つの拳銃を手にとって、また俺のところに戻って見せてくる。


 片方は小さく、もう片方は倍大きい拳銃だ。


「小さい方がカーヴ、大きい方がマキシムだ」

 先にかーゔとやらを手渡される。

 手渡された瞬間、思っていたよりもずっしりとした重さが伝わる。

 思わず「重っ!」と口走った。


「逆だ。人を殺す物にしては軽いすぎる」


 その言葉を聞いて、途端に怖くなった。


 そうだ。俺が持ってるのはいとも容易く人の命を奪う代物であって、かっこつける物じゃない。


「次はマキシムだ。ほら」

 俺はまきしむを受け取る。まきしむは倍以上重い感じがした。手には余るほどの重さがかかっている。


「銃の扱い方を教える前に覚えとけ」

 北村はマスクを外して、髪をかきあげて素顔をあらわす。いつ見ても息を呑んでしまうほどの整った顔立ちは俺を見据える。威圧感すら感じてしまうほどに瞳には信念のようなものが感じられた。


「お前にとって銃は殺すための物じゃない。脅しとか威嚇とか、身を守るための物だ。それでも使い所、使い道には命を奪う覚悟を持ってから使え。いいな?」


「い、言われなくても……俺が殺すぐらいの度胸なんて───」

「トリガーを引くのに必要なのは指の力だけだ。覚悟も度胸もいらない。どういうことか分かるか?」

「え?」


 北村は俺が握っていたかーゔを奪い、銃口を俺の眉間に向けた。

「時には覚悟して無くても殺すことがあるんだ。それが銃を扱うってことだ。お前に殺す度胸が無いことなんて知ってる。だからこそ、銃を誰かに構える時に覚悟が必要なんだよ。この1発で(・・・・・)殺してしまう(・・・・・・)かもしれない(・・・・・・)っていう覚悟だ」


 鼓動がへそまで伝わって来る。頸動脈が振動しているのが感じ取れる。


「…扱い方を教える。来い………大川も撃ちたいのがあるならこっちで撃ってくれ」

「ええ!?撃たせてもくれるんですか!?感激です!」


 北村はガラス張りのドアを開けて、電気をつける。

 暗い奥が一斉に明るくなる。

 そして俺は驚愕した。


「最大1000mまで射撃ができる」

 奥にずーっと続く直線に圧巻されて、口が開く。


「さっそく撃つか」

 北村はそう言って、ガラス張りの壁の方にあるクーラーボックスをひと回り大きくした程度の箱を開けた。

「ちょっと準備するから、そこにかかってるイヤーマフ着けて待ってて」


「イヤーマフ?」

 俺は聞き慣れない単語を口にする。

「これですよ」

 不意に横から声がかかる。相手は大川だ。

 大川はコンクリートでできた仕切りのような壁に掛けられたヘッドホンを手に取って耳に着けた。


「ヘリに乗った時に着けのと似たやつです。主に耳を音から守るものですよ」

 へ〜と口にこぼしながら、俺は仕切りに掛けられたイヤーマフを取って着ける。


 大川はイヤーマフの耳当て部分にあるボタンを俺に向けてトントンと指差す。

 なにやら電源があったらしい。俺はボタンを押してイヤーマフを起動させる。


「聞こえますか?」

 イヤーマフから声が出る。

「大きな音は遮音しつつ話し声は拾う優秀な子ですね。いくらかかりましたか?」

 大川は大きなスマホくらいの大きさの厚い箱を両手に持つ北村に話しかける。


「さあ?買ったのは僕じゃないからわからない。それよりも射撃の訓練だ」


 北村は大川に箱を投げ渡す。

「.357マグナム……本当に撃っていいんですか?」

 北村はイヤーマフを着けて、「壊さなければいい」と言って、俺の方に振り向く。


「先にカーヴから試そう」

 北村は持ってきた箱を開けて、中から弾を取り出してかーゔをガシャッとして、弾を1発入れて、もう1度ガシャッと戻してから俺に手渡した。

「最初はイヤーマフなしで撃ってみろ」


「え、わかった」

 俺はイヤーマフを外して、銃を前に構える。


 映画で見たものを見様見真似でする。


「その握り方はティーカップって言う。映画じゃ見るけど現実でやるバカはいないな」

「当たりキツくない!?もう普通に教えてよ!」


「1回こーゆう嫌な上司みたいのやってみたかったんだ」

 北村は俺の手に触れて握り方を変えられる。


「まあこれが1番メジャーだな。あと足はもっと開け」

 北村が俺の足を軽く蹴り、蹴られた方向に広げる。


「…よし。的は10メートル先、バツ印があるところを狙え」

 そう言って北村は仕切りに埋め込まれているパネルを操作する。


 すると人形の的が遠ざかっていく。

「撃ていいぞ」


 俺は強く脈打つ心臓を落ち着かせるように肺に空気を大量に送り、吐く。

 左目をつむり、垂直方向に伸びる白線をバツ印に合わせて指に力を加えていく。引き金は思っていたよりも重くて、手先が震え始める。


 パァンッ!


 突然、手元の銃が発砲した。

 両手には殴られたような感覚が走った。

 耳はジンジンと痛み、鼓膜が破れたのではないかと錯覚する。


 反射的に俺は銃を手放して耳を防ぐ。

「いってえぇ……!」

 俺は身を守るかのように屈む。



 すると後ろで見ていた北村が「7点か…まあまあだな」と呟き、落ちた拳銃を拾う。


 徐々に痛みが和らいできて、ゆっくりと手を離す。


「……襲撃された日とは比べ物にならないくらい大きかったんだけど………」

「当たり前だ。宮黒さんから聞いた話だが、アイツラが使ってたのはMP5SD4。サプレッサーで音を軽減してたから違うんだ」 

「さ、サプレッサー?それって音を無くすんじゃないのか?スパイ映画とかだと誰にも気づかれずに撃てるイメージなんだけど」


「あれ嘘だぞ。どんなに頑張っても70デシベル……まあ蝉の鳴き声程度が限界だ。サプレッサーはあくまで減音器。射手の耳を守ったり、銃口から出る光を隠したりする目的で、無音なのはフィクションだ」


 俺は立ち上がって、机に落としたかーゔを拾う。


「7点って良い方なの?」

「撃ったことがない素人に加えて、カーヴの使いづらさを考えたら御の字だな。ちなみにここを押すとライトとレーザーが付くからもっと狙いやすくなる」

「…先に言えよ」


「次はマキシムを撃ってみろ」

「イヤーマフは?」

「つけない」


「絶対ヤダ!!またあれ聞いたら鼓膜が死ぬっ!」

「安心しろ。これはサプレッサー付きだからさっきよりも音は控えめだよ」


 北村は俺にまきしむを差し出してくる。俺は渋々手にとって構える。

「これにはレーザーはあんのか?」

「ない。全部にあるって訳じゃないから」

「へぇー」


 俺は左目を閉じて、3つの突起を視界の中で噛み合わせてバツ印を狙う。


 今回は最初っから指に強く力を入れる。


 パンッ!


 ……文字だけだと表現はほとんど変わらないが、さっき撃った音とは確実に違っている。

 まず、大きさだ。さっきよりもずいぶんと音が小さくなっている。かーゔは手元に落雷が落ちた感覚だが、これはそこまでじゃない。

 次は音色だ。さっきは暴力的な音で爆発そのまんまの音だったが、こっちは乾いた音のような気がする。紙鉄砲をご存知の方ならその音を少し大きくした感じだと思っていただければ良い。


 まあそれでも心臓が飛び出る程には大きい。アメリカのアニメだったら、口からハートがでる演出がされているだろう。


 今回は銃を落とさなかった。誰かに褒めてほしいくらいだ。

『すごいのぉ』

 お前じゃない。


「……蝉の鳴き声くらいって聞いたんだけど……」

 俺は銃をゆっくりと机の上に置く。

「あれは頑張ったらだよ。普通はそんなに小さくはならない。ただ、耳が安全になる程度の音になるだけ。……次はイヤーマフを着けて撃とう。流石に大川がかわいそうになってきた」


 何を言ってんだ?と思いながらイヤーマフを着けて大川の方を見る。すると、こっちをまじまじと見る大川がいた。


「もういいですか?」

「うん、大丈夫」

 大川は返答を聞くとすぐさま銃を構えて撃ち始める。


 パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!


「イヤーマフ着けててもうるさいじゃん」

「まああの音だしな。仕方ないだろ」

 北村はかーゔを持って「次はリロードのやり方を教える」と言った。

レビュー、評価を頂けますとそのたびに私の口角がtan[α・cos∫¹₀{6÷2(1+2)dβ}]°(αは星の数、βは感想の数)上がります。

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