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世界は愛おしい!  作者: 終マ2
3章 人の道
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31話 お昼は騒がしい!

 ほとんどの子は小学校に通い勉強を学ぶ。国語、算数、理解、社会、英語を使用教科にして、先生という師に習う。


 習うまではわからないし、知らない。彼らの中では存在すらしていない。

 だから、漢字なんてものはないし、和差積商もないし、水が100度で沸騰することはない、法律も存在しない、Good morningなんて歪な形をした図形に過ぎない。


 けれども、教わればそれらは事実となり、認識ができるようになる。


 人間は皆、先人を見て育ってきた。

 食べるとは、眠るとは、生きるとは……全部教えてもらい、ずっと心の中に生きていく。


 では、感情を教えられずに育った人間には感情とは何なのだろう。喜びも悲しみも教えてもらえなかった人間がそれらに出会ったとき、どう表現するのか。




 あの子はどう向き合うのだろう………




『おい。もう1度申してみよ』

 お前って何気に弱いんだな。

『………理由(わけ)を聞こう』

 だってちょっと喋っただけで力尽きて寝ちゃうんだろ?だって事件のときずっと喋ってなかったじゃん。


『確かに今の妾に力はほぼない。じゃが、そもそも妾と汝の力は少し違うのじゃ』

 違う?どっちも摩訶不思議の力だろ?

『そうじゃが、そんな力でも種類があるのじゃ。異能力(アビリティ)を使うと代償が生まれる。大きく分けて2つ、常に代償が発生する常時型と使うときにだけ発生する瞬時型じゃ。前者は八潮の声じゃ。後者は汝のじゃ』


 確かに八潮さんは異能力(アビリティ)を使って無くても声が聞き取れなかった。俺のは使うと気が狂うし、遠くなる。

 確かに違うな。


『じゃが、妾はどちらでもないのじゃ。人に作られたが故に特殊でな。妾には代償が無いんじゃ。その代わりに力を蓄えなくてはいけんのじゃ。前にも話したが、妾は先の事件の犯人を知っておった。教えん理由は汝の異能力(アビリティ)と言ったが、あれはそういう意味じゃ』

 …つまり時間が経てば経つほど強くなるってことか?


『そうじゃ』

 それじゃあ今はどれくらい溜まってるんだよ?


『うーん…学校の靴箱に入っている靴を全てひっくり返すことは容易いな』

 何だその地味な嫌がらせは………



「聞いてますか?神里さん」

「は、はい!」

「ならこの問題の答えは?」

「………いる?」

「……………え?何だって?ゐる?違います。いる、です」

 ゐるなんて言ってねえよ!そもそもゐってどう発音するのかすらわからないよ!

「しっかり話を聞いて──」


 そのとき、授業の終わりを告げる鐘がなる。

 4限目だから、昼休みか……


「I can fly!」


 そう叫び、古典のおじちゃん先生が窓を開けて飛んだ。


 ここは4階だから普通なら骨折を免れないが、あの先生は飛びすぎてちょっとした捻挫や打撲にしかならないのだとか。

 前はロープを垂らしていたが学校から注意されて禁止になったらしい。


「見てみて、ガチャで当たった」

「うわすげぇ!超激レアじゃん!」

「この前さ、男からナンパされて〜」

「なにそれウザ〜」


 あの先生が飛ぶのはもう日常になり、誰も反応しなくなっている。


 俺もご飯食うか。

 そう思い、隣の北村に話しかける。

「一緒にご飯食べよ」

「お好きに」

「鶴山も食べない?」

「わかりました」


 俺たちは囲むように机をくっつけて弁当箱を広げる。

「いつ見ても豪華だな」

「まあな。そっちは中身同じなんだな」

「作ってる人が同じだからな」

 俺たちの弁当を作ってるのは八潮さんなのだが、襲撃以来会ってびっくりした。目に酷いくまがあって、眉間にしわを寄せていてメッチャ機嫌悪そうだった。仕事で出払っていたらしいがハードだったらしい。



「アタシ達も混ぜろ」

 ふと後ろから声をかけられる。聞き慣れた声だ。

 俺は頭だけ後ろを向いて、

「おお、大川も来てるのか。どーぞ」

「その言い方だとアタシはお呼びじゃないと」

「グェ…」

 柚伏が俺のネクタイをつかんで引っ張り、強制的に頭を動かされる。


「そんなこと言ってない」

「ふんっ…」

 柚伏は空いている席をくっつけて、椅子を2つ持ってくる。


 柚伏と大川は1つの机に2つの弁当箱を広げる。

   鶴山

 北┃‾ ‾┃大川

 村┃_ _ ┃柚伏

   神里


 みたいな感じで座っている。


 北村以外のお弁当は同じ内容で、面白い光景が広がっている。


「あーそういえば、宮黒さんから言われたんだが」

 北村が話を切り出す。宮黒という響きで少し場の空気が切り詰めた気がした。


「神里に他のモノを持たせたいから、僕の家に招待させろって言われたんだよ」

「モノ?」

 俺は口を手で隠して疑問を投げつける。

「ここじゃ大きな声で言えないけど、ほら、今持ってるのはナイフだけだろ?銃も持たせようってこと」

 北村は声を小さくしつつ、かつ皆に聞こえる程の絶妙な大きさで話す。

「僕の家には色んな銃があるからなにか譲れって言われてさ」

「それは私も行っていいのですか?」


 突然、大川が口を開いた。

「え、まあ……けどあげるのは神里だけだぞ」

「大丈夫です」

「そ、そう……」

「いつ行くんですか?」

「今日の放課後にでも行けるなら」


「じゃあ駄目ね」

 またもや突然会話に混ざる者がいた。

「さゆりは今日、アタシと付き合ってもらう約束があるの」

 柚伏だ。

 大川は目を瞑って、固まる。


「……銃はどれほどあるのですか?」

「数えたことがないけど、100丁はある。射撃場もあるよ」

「明里、ごめんなさい!今日は行けません」

「なっ!?酷いよさゆり!約束してたじゃん!」

「私がいなくても変わらない用事ですから、お願いできませんか……?」

 大川が真っ直ぐと柚伏のことを見つめる。


 数秒見つめ合った後、柚伏は俺と北村を見やり、

「あんたら後でブチ殺すからなっ!」

「俺も!?」


 なんて理不尽な……

「いい、さゆり?変なことされたら頭撃ち抜いてもいいからね?」

「はい。大丈夫です」

 どこが大丈夫なのかわからないが、解決した……のか?


「鶴山は行く?」

「お誘い有難うございます。しかし、今日は私も用事があるので行けません。お2人がいれば、神里様も安心ですので、よろしくお願いします」


「任せて、て言いたいけど、こいつなら襲われても何とかするから大丈夫だよ」

「なにかあっても2人は守りますから。安心して下さい」

 た、頼もしい……大川だけ。



 そうして俺らは放課後、北村の家に行くことになった。

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