2話 アルバムは懐かしい!
着いた部屋は段ボール部屋の名に相応しいところだった。
「うわぁ……」
部屋の半分程を占める段ボールは「お前は俺等を片付けなくちゃいけないんだぜ!」と主張している。
掃除はあまり好きではない。1度やりだしたら止まらなくなるのは確かだが、普段は母親がやってくれたから、それが義務になるとめんどくさくてやる気が無くなる。
いや、母親も掃除は文句言いながらやってたし、後回しにしてたことも少なくはなかった。だから当然、家は綺麗な方ではなかった。足の踏み場はあるが、友達は呼びたくない、そんな感じだった。
俺はスマホを出して日付と時刻を確認する。木曜の3時46分か。まあ、今日中には終わるだろう。終わってほしい。
「神里さん、私も手伝いましょうか?」
「いえ、大丈夫です。下着とかもあるでしょうし、迷惑はかけたくはありませんので。お気持ちだけ受け取っています」
「迷惑だなんて思いませんよ。でもそうですね、では私は居間に戻っておりますので何かあったら読んでください」
俺は感謝を伝えて、大川さんが1階に降りるのと同時に部屋のドアを閉める。
はあぁ……
やっぱり手伝ってもらえばよかったかな……
部屋をもう一度見渡して、そう思いました。(小並感)
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「うわぁぁー!こいつ懐かし!転校してから何してんだろ?」
今、ダンボールの中にあった中学校のアルバムを読み漁っている。
掃除していたら色々と懐かしいモノが出てくる出てくる。小さいときに遊んでいた車の玩具や妹に付き合わせられたおままごとに使ったヤギの人形。見つけるたびに思い出にふけり、いつの間にか5時前。
「ふぅ……」
俺はアルバムを閉じ、思い出にふけった気力を掃除に向けて、段ボールを開ける。結構小さい段ボールだ。片手で軽々と持てるくらいの軽さで、握れる大きさ。
そしてその中に入っていたのは……
「なにこれ」
なにこれ
正六面体のなにか。
傷も溝も何一つ無い銀色の正六面体。見た目とは裏腹に軽い。金属っぽい質感だが、中身は意外とスカスカなのか。
それにしても、こんなものあったか?
間違えて実家から持ってきてしまったのだろうか?
でも俺の部屋にこんなモノがあったとは思えない。
腑に落ちないが悩んでも仕方ない。後で電話してみるか。
ふと、外が気になってしまった。視線を感じたというか、ただならぬオーラを感じた。厨二病が再発しただろうか。
ははは、と心のなかで笑いながらカーテンを開ける。
白銀色の髪が風でなびく。大きな暗い紫色の瞳は俺を貫く。かわいらしい顔は無表情で冷たい印象を受ける。
暑くなってきた5月の中旬、それに相応しい質素な純白のワンピース。華奢な白い腕や脚は今にでも折れてしまいそうなほど弱々しい。
しかしその手足に不相応なところがある。
木の上に立っている。枝の付け根部分に立ち、あまり葉で視界を遮られていない。そのため身体の大きさもよくわかる。
たぶん、小学生の3年か4年生の女児。
その女児からは嫌な雰囲気を感じる。悪寒が身体中に走るのだ。
俺は彼女が落ちたらと考えてしまい、悪寒が走ったのだと思い、窓を開けて彼女にも聞こえるように大きく話す。
「お〜い!落ちたら危ないぞ!」
彼女は無表情のまま。俺を見つめている。
口が開かなかった。ミステリアスな雰囲気に飲まれたのだろう。
数秒沈黙が流れ、俺は意を決してまた口を開く。
「……お、下りれないのか?ならそっちに行くから待ってろ」
俺は部屋から飛び出して、階段を駆け降り、玄関で靴を履く。
足音で大川さんが気づき、居間から出てくる。
「どうしました?」
「ちょっと外の空気を吸ってきます」
俺はガラガラっと戸を開けて、庭へ走る。
木の前まで走り、上を見上げると、そこには誰もいなかった。
不思議に思ったが、たぶん俺が来る途中に下りたのだろう。
俺はふぅ、と息をつき、下りられたなら良いか、と安心するのだった。
それにしても、謎な少女だったな。
俺は引き戻り、荘の中に入る。
階段を上ろうとしたとき、居間にお胸がたわわなおっとり系美女が見えた。