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世界は愛おしい!  作者: 終マ2
2章 復讐の道
22/43

21話 戦闘は楽しい!

 やばいやばいやばいやばいやばい!!!


 あのあと、突然殴りかかってきた白山さんのパンチを喰らい、危機感を覚えた俺たちは校舎内を走り回って逃げていた。

 最初は学校から出ようと校門の方に走ったんだが、校門の前で、お辞儀しながら左右に動いて手をブンブン回すという奇行に走った生徒で埋め尽くされていて出られなかった。

 まったく理解できない状況だったが、近寄ってはいけないと本能が言っていた。


 かくして俺たちは校舎内を走り、彼女から隠れていた。

「うおぉぉお、待て待てー!!」

 後ろを走る白山さんを横目で見る。

 ものすごい勢いで距離を詰めて来る。人の出せる速度ではない。

「つーかーまーえーた!」

「やばい!どーする!?」

「二手に別れましょう」

 俺は相槌する暇もなく、前を見る。左にはかけ橋、前には非常口階段がある。

 あともう少しで捕まりそうになるとき、俺は左に曲がり、かけ橋を渡る。

 後ろを見るが白山さんの姿はない。大川さんの方に行ったのか…………じゃない!俺のことを追い続けてる!


 俺は前に向き直して…絶望する。

 蓮井さんがかけ橋をを渡り切るところに立っている。

「追い詰めたぜ!観念しろ!」

 アザトース!どうすればいい!?そうだ!あのときみたいに強くなれば!どうやるんだ!?

『今必要なのは力ではない』


 何言ってんだ!?早く!早く!!

 俺はかけ橋の真ん中で止まり、前後を見る。

 どちらからも攻め寄られている。時間はない。

 どうすればいい。


 橋の上……両端から来る追ってから逃げるにはどうすればいい……!?


 どこに逃げ道が…………ある……下だ。

 迷ってる暇も、下を見て覚えてる時間もない!!

 俺は手すりに乗り上げて高く飛ぶ。遠い地面、下に引っ張られる重力、それに伴う恐怖、しかしどこか爽快な気分になる。ニヤけてしまう。

 たぶん、こんなこと経験したことがないからだ。初めて学校という空間で1階上から飛び降りるというスリルが楽しいんだ。



 でも、そんなのは一瞬で終りが来るもの。

「痛えぇぇ!」

 足首がめちゃんこ痛い。けど折れてはいない。俺は痛みを我慢して、走り続ける。


『必要なのは思考じゃ。さっきの汝のように機転が勝機となる。どんな巨大な力を持ったとしても、思考を止めた者に訪れるのは敗北じゃ』


 え?なんて?聞いてなかった!

『今を楽しめと言ったのじゃ』

 そうか。楽しめばいいのか!

 ハハハ!

 気が狂ってる。そんなのわかってる。でも、この高揚感と疾走感が楽しい。昼んときの後遺症だろうか。


 なんだっていい。今はあいつらに勝つ方法を探すんだ!

 俺は周囲を見ながら駆け走る。生徒たちは俺を避け、視線を送る。

 2人は俺を見つけては見失ってを繰り返している。




「ちょこまかと!さっさと捕まれ!」

 蓮井が消化器を片手に俺の前に立ちはだかる。

「覚悟しろ!!」

 蓮井は消化器を持っていない方の黒く染められた手から何かを投げる。それは赤く光り輝く炎。ドラゴンの息のように迫りくる炎は俺の前まで来て床に落ちた。


「どうだ!驚いたか!お前なんて丸焦げにすることなんて…っておい!」

 俺は火を飛び越えて、蓮井の隣を駆け抜ける。

 俺が飛び越えた直後、白山があり得ない速度で蓮井に突っ込んだ。

「ちょっと邪魔!」

「お前のほうが邪魔だ!」

 そんな会話を背後に、階段を上り、最上階へ上る。

「うおぉ!?」

 階段を上りきったところにいた人とぶつかりかける。反射的に謝りかけるが顔を見て思考が変わる。

 その人は大川だった。

「大川!ちょうどいいところに!バケツを2つ用意してくれ!」

「…え?」






「こっちだ白山!」

 俺はかけ橋の真ん中で、白山を呼び寄せる。白山は俺の姿を見つけ走り出す。彼女にはもう俺の姿しか見えてないだろう。

 俺は白山から逃げるように走り、一番近かった教室に入り込み振り返る。


 白山はチーターのようにかけ橋を走り抜けていく。


 俺の予想が正しければ、あいつの異能力(アビリティ)は〚加速すること〛。そしてあいつの様子を見ていると急には止まれない。

 だから最初にかけ橋を渡ったときに少し遅れて渡ってきた。それに蓮井にも突っ込んでいたし、方向転換も急停止もできないんだ。


 なら、ここで決着がつく!


 白山が教室に入ってくる直前に右手を握る。

 すると、教室の扉が急に閉まり、白山がブレーキをかける間もなく扉に突っ込む。流石に扉も耐えきれずに俺のもとへぶっ飛んでくる。

 俺は横に避けて白山と扉を避ける。


 白山は壁にぶつかり、倒れる。

「今だ!」

 教室の隅に隠れていた大川が自身の異能力(アビリティ)で天井に引っ付けていた机たちを落とす。


 ガシャンガシャンと雪崩のように机が白山に覆い被さる。

 これで白山は当分動けないはずだ。


 すべて計画通り。

 ずっと俺だけ(・・・)を追いかけてきたからこそできた計画。大川の存在が目に入っていたらできなかった産物。

 最大限スピードを付けさせるため、扉を閉める合図をわからなくさせて衝撃を大きくする。そして大川の〚物を引き寄せる〛異能力(アビリティ)であらかじめ机を天井に付けて、倒れたところに追い打ちをする。


 まだある。大きな音を出して


「見つけたぜ!!」


 相手から来てもらう。


 蓮井の手から投げ出された炎は俺のワイシャツにかすめて、肩が少し燃える。

 ワイシャツの炭を手で払い、眼の前にいる相手を見つめる。


「俺からは逃げられねぇぞ」

 鋭い眼光が突き刺さる。

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