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世界は愛おしい!  作者: 終マ2
2章 復讐の道
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17話 接近

 目が覚めると、八塩荘の居間にいた。畳の上で仰向けになり、枕を布団代わりにしていた。


 ちゃぶ台には、宮黒さん、鶴山、北村の他に大川さん、柚伏さん、八潮さんがいた。


「……全員揃ってどうしたんですか?」


 俺は体を起こす。

「神里…お前にも話しておく」

 宮黒さんの隣には1人分間隔が空いている。そして、俺がそこに座ると再び宮黒さんが話し始める。

「今回の事件だが、犯人はわかっていない。捜査したが、なんの証拠も証言も取れなかった。確かなのは、犯人の異能力(アビリティ)他人を操る(・・・・・)ことができる。鶴山と北村が柔道部の男子生徒と接触したが、本人たちは記憶がないらしい。犯人の明確な目的はわからないが、神里がターゲットだろう。最近、不審者を見た者、あった者はいるか?」


 不審者……と言われて思い出すのは……

 大川さんと目を合わせる。多分思っていることは同じ。

「昨日の朝、俺たちとは違う制服の人たちが俺を誘拐するって言ってました」

 俺に続き、大川さんも言う。


「あの制服は市立の方のだと思います」

 柚伏さんは少し驚いた表情をしている。あのとき寝ていたから知らなかったんだろう。

 その後、男の特徴と突っ込んできた女のことを話した。


 宮黒さんは話を聞いたあとに

「わかった。あっちの高校にも気をかけておく。まあ、話をまとめると気をつけろってことだ。特に神里……自分の身は自分で守る事もできないお前は1人になるなよ」

 

 宮黒さんが俺を睨みつけてくる。

「わ、わかってますよ。ところで、何で北村がここに?」

「僕がここにいるのは………」

 北村がバツが悪そうに口ごもる。


「北村、安心しろ。こいつはバカの世間知らずだ。損得なんて考えれそうな顔じゃない」

 え、なんか俺ディスられた?

 でも北村はどこか決意したように言葉を続ける。

「僕は………」

 僕は?

「やっぱり明日話そう」

「なんなんだよお前」


ちなみに指はいつの間にか治ってた。



 明日


 結局聞けなかった俺は好奇心と少しの怒りに近いモヤモヤを抱きながら学校へ向かう。

「北村さんはそんなに話したくないことがあるのでしょうか?」

 大川さんは今日も柚伏さんを抱えて登校している。

「わからんけど、あそこまで引き伸ばしたなら言ってほしい。無理やり伸ばされてる漫画を読んでる感じだよ。鶴山は何か知らないのか?」

 今日は鶴山も一緒に登校している。男1人に女性が3人、ハーレムといってもいいだろう。ここに恋愛だの絡んでればいいのだけど。


「私からは何も。北村様が仰りたくないことを私が言うのはいけないことですから」

 やっぱり真面目だなぁ。会ったときから薄々思ってたけど、指示とか命令とかには従順で、信頼できる人だ。悪く言えば、利用されやすいかもしれない。


 宮黒さんはそれを利用してるんだろう。

 鶴山はそれで良いのだろうか?

「鶴山は……」


 言いかけて、前にも同じようなことを言ったことがあるのを思い出す。

 鶴山は宮黒さんを信頼している。でも、宮黒さんのやり方は間違ってる……というか…非人道的なのだ。


 宮黒さんは自分のことを外道と言っていた。



 このときの俺はあの人はどんな生き方をしてきたのか、なんて考えていなかった。

 俺は恵まれてたんだ。守ってくれる人がいて、力の使い方や使い道を教えてくれる人がいて、俺を大切にしてくれる人に囲まれて、俺を必要としてくれる人がいる空間があったことに。


 それ故に俺は何年後、何十年後になっても宮黒さんの考え方に納得できなくて、反抗してきたんだ。




 鶴山が俺の次の言葉を待っている。

「……いや、なんでもない」

 鶴山は無表情のまま「そうですか」とだけ。

『神里よ、暇じゃ』

 そういえばお前いたな。八塩荘に帰ってきてからは一切声聞いてなかったから忘れてた。


 お前はこの事件の犯人は知ってるのか?

『知っているぞ』

 っ!ならすぐに『じゃが』

『教える気はない』

 ……どうしてだよ?

『宮黒に汝は双子(ジェミニ)ではないと言われたな。あれは誤った情報じゃ。汝には2つの異能力(アビリティ)がある。片方は感じの知っている通り、【再生能力】じゃ。自分にも他人にも使える。物理的にも、精神的にも使える。宮黒の言っていた2つの力は物理的と精神的を分けたのじゃ』


 宮黒さんが嘘を言ってたのか?


『誤情報を掴まされただけじゃ。まあ、その情報を流したのは妾じゃが』

 アザトースがクククと笑う。

『まあ、汝にもう1つの異能力(アビリティ)がある。【周囲の異能力(アビリティ)を強化する】ものじゃ。』

 強化?どういう感じに?


『例えば、1キロまでのものを持てるのが3キロまで持てるようになれる感じじゃ』

 ということは、俺は居るだけでいいってことか。


『加えて、能力者が近くに多いほどその効果は大きくなる。じゃから、妾は犯人は教えん』

 ん?それと犯人がどう関係してるんだよ?


『犯人は能力者じゃ。解決してしまっては捕まってしまうかもだろう?1人でも多いほうが妾には好都合なのじゃ』

 つまり、自分が強くなりたいから教えないってことか。

『そうじゃ。安心しろ、教えないだけで、邪魔はせん。状況次第では協力もしよう』


「おはようございます」

 校門の前に着いて、今日も生徒会があいさつ運動を行っている。

 昨日、あんな事があったのに皆が登校している。

「おはよう」

 生徒会長が俺たちに挨拶してきた。

 柚伏以外の俺たちは挨拶をして通り過ぎる。


『そうじゃな……ヒントをやろう。犯人は意外と近くにいるかもしれんぞ』

 近く……ってことはこの学校にいるかもしれないのか?

『そこまでは教えん』


 はあぁ……まあ、犯人より先に、北村の話を聞きに行くか。

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