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世界は愛おしい!  作者: 終マ2
2章 復讐の道
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15話 作戦始動

 10数分後、2人はお目覚め。

 鶴山はまだ意識がハッキリしていなくて、もう少しここにいるそうだ。

 宮黒さんの方はタバコを吸いながら、


「アザトース、お前の考えに一理あると思ったが…なら殺しはなしだ。殺したとき、俺は全力でお前を殺しに行く」


「よかろう」

 また口が勝手に動いた。

「じゃあ、もう行け」

 宮黒さんは机の上の書類に目を通し始める。

「あの、服とかは……」

「ない。今日は休め」

 さっきと言ってることが違う。

 ということは俺は、友人に「ちょっと席外す」と言っといて帰っただけの狂人になっちゃうじゃん。北村になんて説明すれば良いんだよこれ。


「あの、ジャージとかは借りれないんですか?」

「……………」

「宮黒さん?」

「……ここにいろ」

 また言ってたことと違う。と思いはすぐに消える。

 宮黒さんの表情が険しくなったからだ。

「鶴山、神里を護れよ」

 そう言って、宮黒さんはタバコを置いて出ていった。

 鶴山は弱い声で「…はい」とだけ。



 宮黒さんが出て行って約1分後、全校アナウンスが流れた。

「全校生徒、全職員はすぐに下校してください」

 内容は10秒も無かった。でも、この放送で学校は混乱の渦に巻き込まれた。




 そして、ある2人が親友のために、命を少し張る。


 俺がまだ、異能力(アビリティ)というのを理解できていなかったころの話。





 保健室にいた俺でもわかるぐらい学校内は騒がしくなった。

 授業中に加えて、生徒だけでなく職員も下校を命令されたのだ。


 誰もがただごとではないとわかっている。

 それ故に、混乱して声を大きくなり、騒がしくなる。

「鶴山!早くここから……」

『アヤツの言葉を思い出せ。ここにいろと言われたろう。とりあえず、鶴山を正気に戻せ』

 鶴山は虚ろな目をしながらぼうっとしている。

 鶴山を正気に戻せったってどうすればいいんだよ。


『自分の異能力(アビリティ)を思い出せ』


 俺の……?

 回復させる(・・・・・)異能力(アビリティ)……もしかして、精神状態にでも効くのか?

異能力(アビリティ)は精神に宿る。汝が思うなら、叶うはずじゃ』


 俺はポケットに入っていたナイフを取り、刃を出す。

 俺の血が……本当にできるのか?

 ナイフを人差し指に刺す。

 血のドームは形を大きくして、やがて流れ始める。

 これって飲ませても良いのか?

『それは汝が決めることじゃ』


 要は自分を信じろってことか。

 俺はできる……俺ならできる……


 鶴山の口に指を近づけ、口の中に入れる。

 ざらざらしててぬめりがあって、温かい。


 な、なあ…これってどれくらい続ければ……


『血が足りんようじゃな』



 俺の意に反して、口から指が離れ、近くの机に手を付ける。


 おい!なにする気だ!?

『妾が汝の使い方を教えてやる』

 ナイフが俺の人差し指を第1関節から分断させる。

「いっ……っっ────!!」

 俺はナイフを落とし、切った指を片方の手で覆う。

 これが……俺の力なのかよ……

 1筋の涙が出て、歯茎が痛くなるほど食いしばる。

『いつか慣れる。我慢しろ』


 乱れた呼吸を整え、意を決する。

 俺は再び指を口にいれる。

 感触なんてない。

 ただ痛い。切断面から伸びる神経が焦がされる感覚が走る。


「ありがとうございます」

 鶴山の細くて小さい声が届く。

「鶴山、大丈夫か?」

「はい」

 俺は指を離して、指を握る。それでも止まらない出血は指の間から滴り落ちて、床に打ち付ける。

鶴山は俺の指を見て、表情を変えないまま

「応急処置をいたしましょう」

 鶴山は起き上がり、棚から包帯や消毒液を取り出す。


 そのとき、戸がガタンガタンと鳴る。宮黒さんが閉めたのだろうか。

 俺はなんにも考えずに戸の方に近づき、鍵を開けようとする。鍵に手を伸ばした瞬間、それに気づいた鶴山が


「離れてください!」

 と鶴山から聞いたことのない声量で叫ばれる。


 でも、もう遅かった。

 鍵は開けていない。戸が破壊されて、突然飛んできた戸を避けられるわけもなく、俺は戸の下敷きにされたのだ。

 俺は頭を強く打ち、視界が何重にもぼやける。

 戸があった場所には、6?5?人くらいの人影が見える。

 耳鳴りの中に、話し声が聞こえる。


 たぶん、鶴山の声……と…男の声か?女の声にも……


 ここで最後に聞こえた声はとても鮮明で、耳鳴りなんてものも貫通していた。

『弱いな』

 アザトース……お前は何者なんだ……







「あいつ遅いな……」

 今、僕は校庭に出て、整列をしている。

 この緊急事態時に前に出て指示しているのは先生ではなく、生徒会長の志田。やはり、生徒会長は凄いな。あれはもう役不足だろ。

「まだ生徒が揃いきっていないか……」


 あまり目立ちたくないんだが……唯一の友人のためだ。一肌脱いでやるか。


 僕は手を上げる。

「君は……」

 生徒会長が僕に気づき、口ごもる。

「北村です。……いない人をリストアップして1部の教員と今いる生徒を帰すのがいいのではないでしょうか」

 生徒会長は少し悩み、答えを出す。

「そうしよう。教員とは私が話をつけよう」

 生徒会長は指示台から下りて、教頭と話す。たぶん、2言くらい交わしただけで終わる。

 すると教頭が指示台に上り、

「えー…今いる生徒たちは下校し、各学年主任と養護教諭の宮黒さんは残って、それ以外の先生方も下校してください」


 


 そして数分間、生徒たちは下校し続け、俺もその流れに従い……


 校内に侵入した。


「あの生徒会長…本当に何者なんだ……」

 まあいいや……迷ってんのか知らないが、あいつを探すか。

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