表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幽霊系ショートショート

コレクター

「それいらないならもらっても良いですか?」


 夜中のビルの屋上に立って風を受けていた青年は、後ろから声をかけられて振り向いた。


 転落防止用に設置された金網越しに見る景色の中には、中年の男性が一人、立っていた。


 なんだか変な感じがすると思ってよく見てみると、なんと足がない。


「……幽霊?」


 その言葉に男性はハイと頷き、だからと言って驚かないでくださいねと慌てて言葉を付け足した。


 ここから飛び降りようとしている青年としては、幽霊なんてものをいまさら怖がりようがなかった。


「なにか用ですか? いらないならとかなんとか言ってましたけど」


「ええ、ですからソレ、いらないのなら貰ってもいいですか?」


 幽霊はそう言いながら青年を指差した。


「ソレ?」


 青年は首を傾げる。幽霊ははいと頷き、その体ですと答える。


 困ったような顔をすると、青年は自分の現状を語り始めた。


「あげても良いですけど、職も友達もギャンブルで無くした上に色んなところから借りた借金で山のような催促状がきている状態ですよ。ヤミ金からも借りたので山が良いか海が良いか、なんてベタなことも言われました」


「ええ、ええ、それでも結構です」


 幽霊はニコニコと笑ってそう言った。


 クーリングオフは受け付けませんよ、青年はそう言ってから金網をよじ登ると幽霊の目の前に立った。


 するとその瞬間に幽霊が青年の体に入り込み、逆に青年の魂が体から押し出された。


 青年は自分の体を外側から見ながら尋ねる。


「痛い思いをしないで死ねて僕は満足ですけど、あなたはその体でなにをするんですか?」


「ええ、実は私、生前から収集癖がありまして。せっかく幽霊になったのだからあらゆる死に方を集めてみようかなと思ったんですよ」


 ヤミ金の人たちがどんな殺し方をしてくれるのか、楽しみですね。青年の顔をして幽霊は楽しそうに笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ