クリスマスなんだし、こういうのもありなんじゃない?
午前9時、欠伸を噛み締めながらもぞもぞとベッドから降りる。
「だぁ~・・・ねみぃ」
低血圧でまったく頭が回ってない状態で動きだした物だから半開きのドア縁に見事に激突した。
「~~~っ!!」
勢いこそ無かった物のぶつかった場所が悪かった。
ちょうど角のところだ。
流石に痛みによって強制覚醒させられた俺はぶつけたところを擦りながらも自分のパソコンの前につく。
「あ~・・・今日もバイトだ。そういやケーキ作ってこいとか言われてたな」
ぶつくさと独り言を言いながらキーボードに指を走らせて行く。
「っつか、クリスマスにバイトに入ってる時点で一人身だっての、わざわざ彼女とか居ないの? って聞いてこないで欲しいわ~」
部屋の中に主の独り言とタイピング音だけが響く。
さて、一通り片もついたことだし、ケーキでも作ろうかね
んでもって材料を買って一度失敗しつつも何とか完成させた。
なんだか全身から甘ったるい匂いがする。
材料費だけで3000円飛んだっての・・・・・・
シャワーを浴びつつバイトのしたくをしなきゃな~といつも通りに考えていた。
* * *
さて、そんな頃ここ、小説世界では各小説の主人公たちが集まってパーティーを開いていた。
「「メリークリスマース!!」」
「ふ~、やっぱりお酒だよね~。ジュースだと物足りないや」
「こらこら、一応君たちは未成年でしょう」
「いや、そういうハクヤも未成年だろう?」
「・・・・・・僕は住む世界が違うから大丈夫さ」
12~13歳くらいの女の子、月城潤夜がグイっとコップに注がれたシャンパンを飲み干す。
「まーまー、せっかくのクリスマスに硬いこと言わない」
「そうだね~、こんなときくらいはっちゃけなきゃやってらんないよね~」
貴族のような優雅さをまとい、かつおしとやかな麗人が潤夜に便乗する。
「なんだ吹雪、潤夜とならんじゃって・・・・・・フム、美女と美少女のツーショットか、なかなかの目の養蜂になるな」
「ちょ! 僕は男だよ!」
美女と言われた加也乃吹雪が、深泉鏡に抗議の声を上げる。
その横で、仲むつまじく寄り添いながらちびちびとシャンパンを飲んでいる藤崎賢渡と九重雫に、半実体化したルシファーが絡む。
「お二人さんお熱いねぇ~」
「ちょっとルシファー! やめなよそういうちゃち入れるの! ごめんね二人とも、僕達のことは気にしないでね」
「あぁ、はなから気にしてなどいないさ」
そう言ってさらに体を寄せ合う二人に、鏡が暴走した。
「世の中のカップル撲☆滅!!」
「ちょ、誰かそれ止めて!」
慌てて声を上げて鏡を追おうとしている吹雪を潤夜が飛びついて動きを止める。
「面白そうだから止めるな同士」
「同士じゃなよ、僕は男だ!」
「俺だってそうだよ!」
「元でしょ!!」
だんごになってる二人を他所に、賢渡たちに襲い掛かった鏡は
「邪魔しないで!!」
と、雫のジャブと右ストレートの前にあっけなく沈んだ。
「なかなかいいパンチだ」
「だーははは、鏡よえぇ~」
雫のパンチに感嘆するハクヤに、沈んだ鏡を見て爆笑するルシファーとだいぶカオスなことになっている。
「潤夜ちゃんお酒臭! ちょと! 鬼殺しなんて持ち込んだの!」
「あ、すまん俺だ」
と賢渡が悪びれもなく片手をあげる。
「もちろん俺は混ぜたぜ! そっちのほうが面白いだろ?」
ルシファーがふよふよ浮きながらイタズラが成功した子供のような顔で笑っている。
そんなどんちゃん騒ぎが起きている間、当の主は必死にバイト中だったとさ。