1 乙女ゲームってなんですか?
アルファポリスにて開始しました2作品です。
「初期ジョブ無双のジョブチェンジャー-Beyond the first profession-」https://www.alphapolis.co.jp/novel/479149318/322622586
「ツンデレ勇者「死んだと思っただろ?だが死なん!」と言いながら結構長生きする日常」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/479149318/345622992
どうぞ宜しくお願いいたします。
享年56歳。
真面目に会社勤めをし、家族にも恵まれ1男1女を儲けた私に後悔はない。
保険もちゃんと掛けていたので、死んだ後も家族の心配は無いだろう。
子供の頃から抱えていた心臓の病気を、この歳まで抑え込んで生き抜いた事に誰かが褒めてくれてもいい程だと思っている。
「現世の牢獄から漸く解放ですか。……さて、そろそろ黄泉の旅路へと向かいましょう」
――
―
「お疲れ様でした田中晋様」
ふと耳元で声が聞こえる。
「わふっ!耳弱いんで勘弁して下さい。と言うか何方様ですか?」
振り向くとそこには……誰も居ない。
「怖っ!なんですか!生きてる時も幽霊になんて会った事ないのに、成仏して幽霊に遭遇とか勘弁して欲しいんですけど!?」
「大丈夫ですよ。貴方も既に幽霊です」
「Oh~基本的な事を忘れてました。そうですよね、私はもう死んで幽霊に……て、すみませんが急ぐ旅路ではありませんが、成仏の途中なのですみませんがこれで失礼しますね」
「うふふふっ、流石日本人は死んでもせっかちですね。それに貴方の生前は真面目眼鏡サラリーマンだったと……ザ・日本人過ぎて笑えます」
「笑わないで下さい……あと眼鏡関係ないですよね」
「あら、眼鏡お嫌いです?」
「いや、好きか嫌いとか初めて聞かれましたが……まぁ嫌いじゃないです」
「そうですか。では来世は眼鏡――「ちょっとまったーーーー!!なんですその流れ!怖い怖い!も、もしかしてですが神様とかそういった類の方ですか?」
「はい。私、乙女ゲームの神です」
「乙女の神様ですか。乙女の神様がなんで男の私の元へ?」
「はい。乙女の神様ではなく、乙女ゲームの神様ですよ田中さん」
ええ、間違いなく聞こえてましたとも。
触れない事が大人の嗜みと言う事もあるじゃないですか……特に自分へ火の粉が掛かりそうな場合に限っては。
「ご納得いただけましたか?……では眼鏡に転生をし「まったーーーー!ぁああ乙女ゲームですよね!知ってます知ってますとも!色々ありましたよね乙女ゲーム。あの乙女もこの乙女も私大好きでしたし!やっぱり苦難の末の大恋愛って大切だと思いますいやぁ~あの乙女ゲームの神様にお会いできるとは思いもよりませんでしたよ。こう見えて私恋愛得意なんです。あははははっ」
乙女ゲーム?なんですかそれは。でもまぁ少女が喜びそうな乙女チックなゲームと言う事でいいでしょう。
乙女が喜びそうなものと言えば、自分に無い可憐な美少女を自己投影して遊ぶ。そんな所で間違いないはずです。
ひとまず今は乗り切れるでしょう……。
「……そ、そんなに好きだったんですね(ポッ)嬉しいです」
いけたー!
「そんなにお好きなら大丈夫でしょう。貴方を試す様な真似をした事を謝罪します」
「いえいえ謝罪なんてお構いなくです、はい」
「欲の無い方ですね。私、貴方の事大変気に入りました」
いえ、なんか面倒そうなので直ぐにでも成仏させて下さい。
「そんな貴方には私の乙女ゲーム最高難易度の世界『デーモンフラワー、乙女の園に花束を』の世界で悠々自適に幸せを満喫して頂きたいと思ってしまいました!」
正直生きると言う事は苦行であると考えていた。
生きる為に働き、守るために働き、遊ぶために働く。
働く為の奴隷で生きる事は、何か前世での悪行の罰を与えられているのでは?とまで考えた事さえある。
もしこのまま成仏出来たらそれに越したことは無い。
出来ればもう働きたくないのだ。なので本当このまま成仏させて下さい。
「乙女ゲームの神様」
「はい」
「出来ればもう働きたくないのでその――」
「そうですか……わかりました」
流石神様を名乗るだけはある。俺が成仏したい事をわかってくれた様だ。
「……では送りますがいいですね?」
「はい。わざわざ貴方の世界へお誘い頂きありがとう御座いました」
「いえ。最後にもう一度確認しますが、本当に送っても宜しいのですね?」
「はい。56年も生きれました。未練もありませんのでお願い致します」
「わかりました。では『デーモンフラワー、乙女の園に花束を』の世界へお送り致します!」
「え?」
「働きたくないと言う選択は悪役公爵令嬢を救い、彼女の実家も救い、国家を転覆させ自らが王となる他ありません!そして世界が貴方に牙を剥くでしょう!ですがその最高難易度に挑む貴方に神に祝福あれ!!」
「ちょ、え?ちがっー―」
「大丈夫ですよ。ちゃんとチートもありますから」
「そーではなくてですね神様!ちょ、聞いてます?チート、チートってなんで……か……」
そして俺は空間に吸い込まれる様に姿を消した。
「まさかあの年代の人も乙女ゲームを好きだなんて……大人の思考であればあの世界を導けるかもしれませんね。地球の日本といったかしら、やっぱりあの国は侮れないわね。もう少し送っちゃいましょう」
――――
――
お、お、おお、おおおおんぎゃーーーー!!
「サブリナ!男の子か!女の子か!」
「旦那様、そんなに慌てられては赤ん坊がビックリしてしまいますよ」
「がはははっ、それはすまん。で、どっちだ」
――ヌッ
髭面のおっさんが俺を覗き込む。
「ぉおお!男の子か!でかしたぞサブリナ!流石儂の嫁だ!よーし祝宴の準備だ!」
そうして俺はこの世界、『デモ園』へと産まれ落ちたのだった。
本作品はアルファポリにて先行掲載させて頂いており、2022.4.22.0:00現在
ファンタジー部門6位、HOTランイング2位のものとなります。
『乙女ゲームは知りませんが悪役公爵令嬢が美人過ぎて辛い』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/479149318/521616813
お越し頂ければ幸です。