鉄鎖を切る ― 言祝ぎの音 ―
昨日の深夜のことだ
自らを縛りつけ、心を責め苛んでいた鎖の輪がひとつ千切れて落ちた
きっかけとなる事柄が何だったのかは、まったく身に覚えがない
その少し前に、知り合いの幾人かについて考えていたことか、
以前に自分を家族だと言ってくれた人のことを、思い出してしていたからだろうか
おそらくその中の何かしらが、鉄鎖を緩め、外すきっかけとなったのだろう
言祝ぎの気持ちが起きたのだ
呪詛の鎖を切るためには、
何かしらの祈りと、自らを赦す気持ちが必要だからだ
どこかしらで、
自らを赦す気持ちが生まれたのかもしれない
そんな奇跡のようなことも時には起きるのだと、
少し不思議に思う気持ちが生まれてくる
自分自身のことを、
たとえわずかでも赦す日が来るとは思ってもいなかったからだ
死ぬまで苦しめばいい
苦しむことが、魂を殺すことが当たり前だという呪詛を、
まさか緩める日が訪れるとは…
あれから、たくさんの時間が経ったのだろう
自らを傷つけ縛る呪詛が、
緩んでしまうほどの時が過ぎていったのだろう…
遠ざかる記憶
時の流れの中に、言祝ぎの音を感じる
後悔と謝罪、感謝と祈り
絡み合う感情が、久遠の時の中へと溶ける
身体が少しだけ軽くなる
今までよりも少しだけ、歩き続けてゆくことが楽しくなるだろう
けれども、おそらくは、
自分自身へと掛けた呪詛の鎖が、全て外れることはないと思う
ただ、この訪れた出来事に感謝して、
少し歩きやすくなったこの身体で、さらに先へと歩いてゆこう
まだ見ぬ世界へと向かって、歩いてゆけることを喜ぼう
君に言祝ぎの音を贈りたい
ありがとう…
どうか、君が幸せに過ごしてゆけますように