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それから幾日か経ち、クレーターを深く広くしながら漸く這い出すことに成功した。

その間雨が降り、なんとか生きながらえたが正直空腹だし喉も乾いた。

水魔法を使おうかとも思ったが確実にクレーターをため池にしてしまうので我慢した。

魂は神でも身体は人間。活動のためには栄養が必須なのだ。

身体の制御がきくようになってきたので次は生きるために食糧探しをしよう。

出来れば木の実か、川でも見つかればいいんだが。

彷徨うこと数時間…。


「何にも見つからない…。」


木の実も川もきのこも何一つ見つけられない。

水分不足で頭がくらくらしていることもあって見逃しているのかもしれない。

もう雑草を食べるしかなさそうだ。

座り込み、木にもたれて適当に草をむしり取る。

それをじっと観察してみるがぼやける視界と回らない頭では種類も毒の有無も分からない。

覚悟を決めよう。

雑草を口に含み、咀嚼する。

独特な苦みが口に広がる。先日の雨のおかげか水分は多いように感じる。

…毒はなさそうだ。

決して美味しいものではないが食べれないほどでもない。

さらに雑草をむしり口に運ぶ。

それを数度繰り返す。

満腹には程遠いがとりあえずこれくらい食べれば生命活動に支障はないだろう。

一息つくと、どっと疲れを実感する。

少し眠ろう。こんな森の中では不用心かもしれないが、獣の気配はこの数日一度も感じていない。例え襲われても今の僕を傷つけることなんて到底不可能だ。

早く人並にならなければいけないな…。

しみじみとそんなことを考えながら僕は眠りについた。


脚に衝撃を受け、目が覚める。


「いってぇ…!!」


傍らからそんな呻き声が聞こえ視線をやればうつ伏せに倒れている少年がいた。

どうやら伸ばした僕の脚に躓いたらしい。


「なんっでこんなとこで野垂れ死んでやがんだクソがッ!!」


随分口の悪い子だ。とてもイラだった様子で僕を睨みつけた少年と目が合う。

死体だと思ったらしい彼が驚いたように目を見開くが、すぐハッと何か思い出したようで立ち上がる。


「チッ…追いつかれる…。お前のせいだ!!せいぜい囮になって俺が逃げる時間稼ぎを…。」


威勢よく叫んだかと思えばその声は小さくなっていく。

その原因は彼の視線の先…のそりと姿を現した熊のような大きな魔獣。

涎を滴らせながらグルルと唸っている。


「ヒッ…。お、俺は悪くねえ!う、恨むなよ!!」


少年はそう吐き捨てて走り出した。魔獣も一瞬追おうとするが僕に気づいたようで足を止める。

ちょこまかと逃げる小さい獲物よりどっしり座り込んだ大きい獲物の方がいいと判断したのだろう。

じりじりと近づいてくる魔獣を冷めた目で見る。


「熊肉を生でいくのはさすがにまずいよなあ。」


僕の呟きに反応し、魔獣が襲いかかってきた。

鋭い爪の生えた腕を大きく振り上げ振り下ろす。横に飛びのけてそれをかわす。巨体な分動きは雑で避けやすい。

スッと回り込んで首に手刀を落とす。と、手はグッとめり込んでいきそのままふり抜けてしまった。魔獣の頭が落ちる。

遅れて巨体も倒れこみズシンと大きな音をたてた。

手で首を落としてしまった…。まだまだ力加減ができていないな…。

さて、この魔獣【ベアーゲル】は食べられる。味は地球の熊とほぼ同じ。

この巨体ならば暫く食べ物に困らなさそうではあるが、問題は火のおこし方かだ。

熊肉は生ではとてもじゃないが食べられない。火を通したいがこの森という空間で制御のできない火の魔法は危険すぎる。

暫し考え、とりあず開けた場所か、水辺を探そうと思う。

原始的な方法で火を起こすにしてもこんな鬱蒼とした森の中ではどちらにしろ危険だ。

倒したベアーゲルを【収納】という魔法にしまう。

この魔法には属性はなく誰でも使用できる初歩的な魔法だ。

ただし、容量は魂の器の大きさに比例するので人によってはあまり使えない魔法でもある。

この魔法で保管すれば劣化もしないので食糧の保存には最適な魔法で危険が伴うこともない。

食糧を獲得し、十分に休むこともできたので僕は再び歩き始める。

歩きながらふと先ほど出会った少年を思い浮かべる。随分みずぼらしい姿をしていた。

髪は無造作に伸び、端切れを縫い合わせたような服は泥に汚れ、体も痩せていた。


「みずぼらしいなんて、僕が言えたことではないか。」


泥まみれな自分の身体を見下ろして苦笑する。

僕は無意識にあの少年が走り去った方向に歩を進めていることに気づく。

…これも何かの縁か。第一印象は良くないがあの状況では仕方のないことだ。

彼が川か開けた場所を知っていたら熊肉をご馳走するのもいいかもしれない。

そんなことを考えながら歩いていると水の流れる音が聞こえてくる。

川だ。

自然と足早になる。背の高い草をかき分けていくとぱあっと視界が明るくなった。

眩しい太陽に照らされ、キラキラと水面が輝いている。水は透き通り、飲んでも問題なさそうだ。

その川の辺に見覚えのある小さな背中を見つける。

近づくと、彼も足音に気づいたらしく振り返る。


「お、お前、なんで生きて…。」


幽霊でも見るような目に苦笑で返す。


「こう見えて腕は立つ方なんだ。」


少年の隣に腰掛け、水を手ですくって飲む。

美味しい。

ごくごくとさらに3杯ほど飲み、ふうと息をつく。

そんな様子をじっと眺めていた少年が視線をそらし、小さな声で呟いた。


「…悪かったよ。」


「ん?」


「だから、お前を囮にして悪かったって言ってんだ!」


ぎゅっと膝を抱えて水面に向かって叫ぶ少年。

きっと、根はいい子なのだろう。

自分を守るために無理して大きな態度をとるその姿に強がりな自らの妹を重ねる。


「いいよ。この通り僕はピンピンしてるからね。むしろこの川にたどり着けたのは君のおかげだから、感謝したいくらいだよ。」


優しく笑いかけながら舞華にするようにポンポンと頭を撫でる。

一瞬身体を強張らせたが、すぐに力を抜いてくれた。


「変な奴…。」


「ふふ。あっ、そうだ。君火属性持ちだったりしない?」


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