邂逅と後悔・1
新しいターンです
PCの充電が落ちそうであわてて上げたので今回短めです、すみません
「膝を上げて、リヒャルト」
どこか懇願を含んだ声でイェルクが言った。
「君の返事を聞くまで、上げられない」
雨がはっきりとした形を取り始めて二人を濡らした。
互いに見つめ合ったまま目を逸らせなかった。
リヒャルトは自分がずるい人間だと知っている。
答えようのないイェルクの心も知っている。
「僕は…」
なにかを言おうとイェルクは口を開いた。
けれどそれが何かはわからなかった。
「…僕は」
次第に本降りになった。
その場につなぎ留められたようにふたりは動けなかった。
どれだけそうしていたかわからない。
気が付いたときはイェルクはスヴェンに揺さぶられていた。
「おい、イェルク!…ふたりとも何してんだ!」
引きずられるようにして事務棟の入口へと連れていかれた。
そこには騎士のシーラッハ氏を含め、全員が揃っていて、なにか奇妙なものを見たかのような表情でびしょ濡れのイェルクとリヒャルトを見つめた。
「…戻ってこないから何してるかと思えば…いったいどうしたんだ」
訊ねる声にイェルクもリヒャルトも答えられなかった。
「…日を改めましょう。
行こうか、ドレヴァンツ」
どこか達観したような澄んだ声でシーラッハ氏が言い、立ち呆けていたリヒャルトの腕を取って歩かせた。
入口をまた出る際、リヒャルトが振り返り、イェルクを見た。
目が合って、なにかを言おうとイェルクは口を開いた。
けれどそれが何かはわからなかった。
****
ふと目を離したすきに、丸屋根四阿の外が見えなくなるくらいのざんざん降りになってしまい、どうしようかとユーリアは思案した。
せっかく無理を通してまで連れてきてもらった王宮の中庭だというのに、大きなガラス窓を叩きつける雨はその中のすべてのものを隠してしまった。
「…困りましたね、外がこれでは」
外気が冷たくなり、侍女のカーヤは用意してあった火鉢に火を入れた。
困惑した声のヤンを見上げて、ふと、ユーリアは動きを止めた。
「…あの。
描いても、いいですか?」
王宮ならではの素材のヤンは自分に向けられたその言葉に、「え、わ、私ですかっ?!」とすっとんきょうな声を上げた。
****
外はまるでエルヴィンの心を表現しているかのようだった。
「…完璧だな」
「ああ…」
「こんな見事な診療計画は見たことがないよ…」
「当たり前だ、我々の叡智が詰まっている」
「あとは当日か…」
どうやら話はまとまったようなので、そろそろ開放してもらえないかとエルヴィンは様子を窺った。
「まて…当日雨が降ったらどうする?」
場が凍った。
「なんてことだ…」
「…全く盲点だった」
「…これは、代案を考慮せねばならないな」
「腕が鳴るな…」
「今日は徹夜かな…」
かえりたい。
エルヴィンは心で泣いた。




