居眠り姫と王女様・12
更新が大変遅くなり申し訳ありませんでした。
タイトルに【プロット版】とついたことに関する説明をこちらでしていますので、お時間があるときにどうぞご覧ください。↓
https://ncode.syosetu.com/n6167fl/
「言い訳と宣言」
またレビューをいただきましたことをこちらで感謝致します。
本当にありがとうございました。
その他、近況等後書きにてお知らせしますので、目に留めていただけますと幸甚です。
真剣な表情で写生に没頭するユーリアの姿を、ルドヴィカは物陰から見守っていた。
「…なにやってんのお嬢様…」
呆れたようなザシャの声にびくっと反応したルドヴィカは、振り向いて「しー!」と言った。
「神に神が降臨しているのですわ!邪魔してはなりませんわよ!」
声を潜めて言うのだが、ルドヴィカの声はわりかし通るのでたぶん意味がない。
それでも集中しているユーリアには届いていないようで、まったくこちらに気を取られた様子はなかった。
そんなに打ち込める何かがあるのはすごいことだ、とザシャは思った。
「お昼の用意できましたからどうぞー、て言わないの?」
「…邪魔してはなりませんわ!」
たしかに、あの状況に声を掛けるのはためらわれる。
「…でもお嬢様がここにいても仕方ないじゃん…」
「…でも気になるのですわ」
「なんか一雨来そうだし、そん時に声かければ?」
見上げると薄曇りの空が広がっていた。
「そうですわね」とルドヴィカは頷いた。
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新しい執務机を購入するための申請書は、主計監査官により他部局からのお下がりの現物支給という形ですぐに実現された。
「せっかくだから三人で向き合おうよ」
とトビアスが余計な提案をしたがため、国璽尚書秘書室は午前いっぱいをかけての模様替えと簡易大掃除となった。
「…なんか、尚書室要らなくなったね」
なるべくヴィンツェンツの仕事に支障が出ないよう、秘書二人が彼の手元を覗けない配置にしたため、やろうと思えばここですべて仕事ができる。
ヴィンツェンツがトビアスの言葉へ全神経を向かわせて反応したが、ユリアンは強い心でそれを押しのけた。
「さて、お仕事しましょうか。
あ、その前に手を洗って昼食にでもしましょうかね」
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話し合いを午後に控えて、イェルクは行きつけの定食屋に入った。
「おばちゃん、カツ丼ちょうだい!」
ついてきたスヴェンとランドルフが「俺も」と言った。
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「ヨーゼフ」
昼でも食べに行くか、と朝廷宿舎の食堂へと足をむけたら、背後から懐かしい声がしてヨーゼフは振り返った。
「久しぶりだな、マリアン」
「宮廷舞踏会以来かな。
元気にしていたか」
「変わりないよ。
おまえは孫が生まれたときいた、おめでとう」
「ありがとう。
可愛いもんだな、初孫というのは」
声を掛けてきたのは旧知の人物で、相好を崩した相手に、ヨーゼフも微笑んだ。
「男の子だったか。
名は決まったのか?」
「エーヴァルトだ。
わたしがつけた、いい名だろう」
かつての同僚たちに見せてやりたい、この笑顔。
「昼に行くならこっちにこい。
積もる話をしよう」
誘われてヨーゼフはその背中について行った。
かつて自分が通った場所へと。
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トラウムヴェルト王国には、世界に誇るひとつの施設がある。
それは人々の嘆きと慟哭を、希望へと変えるための施設だ。
そこでの研究に身を費やす者は、時に感謝され、時に罵倒され、けれどそのどれもが次の時代へのかけがえのない贈り物となることを理解しているがため、決して手を休めることはなかった。
そこはトラウムヴェルト国立総合病理研究所――国を挙げての研究施設である。
そこで研究職に就く者はすべて国を代表する頭脳であり、またその職務に燃える者たちであった。
本日、その中のとある一室で、研究所始まって以来の激論が交わされていた。
机に広げられているのはトラウムヴェルトの王都であるラングザームの詳細地図であり、廊下のガラス窓越しにそれを見やる者たちは、流行病の伝播経路についてか、はたまた緊急時の患者の搬送状況についてか、と思いふと足を止めては感心して立ち去った。
議論の中心に居る(しかし決して議論には加わっていない)青年の名は、エルヴィンといった。
彼は専攻を精神医療とし、世界的に未開拓のその分野においては若いながらも名の知られた人間だった。
よって、目の前で繰り広げられている議論の成り行きを、研究者としては興味深く思い、議論の対象としてはげんなりとしていた。
――いいかげんにしてくれ。
よくもこんなことに熱くなれるものだ。
黒板に書きつける者はものすごい速さで皆の意見をまとめていく。
現在喧々囂々と交わされている言葉の端々には、聞いたこともないおしゃれな飲食店の名前や、見て回るによい商店の名が飛び交っている。
なぜこんなに他人のデートに熱くなれるんだこの人たちは…。
エルヴィンは盛大にため息を吐いた。
するとその場の全員から睨まれた。
「「「「おまえのことだろうがぁあああ!!!」」」」
「すみません」とエルヴィンは小さくなって謝った。
更新が大変遅れてしまいましたことを改めてお詫び申し上げます。
いろいろあって書けなくなり、スピンオフなどのお為ごかしに精を出しておりました。
その間にご訪問いただいたすべての皆さまに感謝します。
またいただいたレビューを通して訪問してくださった方々、はじめまして、そしてありがとうございます。
10万字を超えたこと、第一部が終わったこと、スピンオフを書いたこと、またレビューをいただいたことが続き、読んでいただいている方の人数も少しずつ増えているようです。
本当にありがたいことです、感謝します。
ptやブクマもいただいたことで、日間ランキングの50位あたりにも入っていました。
それによってまた新たな方が読みに来てくださる、という良い循環がここ数日続いていたように思います。
こうして支えていただける作品であることを確認できて感無量です。
なかなか筆が思うように進まずお届けするのがこうして遅くなってしまっていますが、今後も読みに来ていただけるよう更新頑張って参ります。
ぜひ、続きもお付き合いください。
今後ともよろしくお願いいたします。
そして、ありがとうございます。




