表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いねむりひめとおにいさま【プロット版】  作者: つこさん。
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/124

居眠り姫と王女様・5

なろう15周年おめでとうございます



エドゥアルトは二日酔いの頭痛に、大いに苦しんでいた。



朝方目が覚めたのはエミの店の二階にある部屋で、上着を脱がされて簡素なベッドに寝かされていた。


店の清掃をしていたウェイターからもらったエミからの伝言は、「寝不足はお肌の大敵なので先帰ります☆」だった。



…私は昨日エミの店に向かったのか?



それすらも記憶にない。

さすがにこれは人生初ともいえる大失態だった。

エミの店でよかった。



家に戻る時間がなかったので、嫌な顔一つせずウェイターが用意してくれた湯で体を拭き、そのまま王宮へと向かった。


上着は消臭のためにエミが作ったというハーブ精製水がかけられており、尚且つシャツの替え衿とカフス、さらには吐き気止めまで用意されていた。

ありがたく使わせてもらったが、あの図体のでかさがなければ本当に女じゃないかと思うくらいの細やかな気遣いに、後ろめたく感じながらもエドゥアルトは舌を巻いた。


ウェイターに心付けをしようと思ったが、「もういただいています」と固辞された。

本当に憶えていない、いったい昨夜私はなにをしたのだろう。



「おはよう」

体面を保てる時間に殿上でき、内心ほっとしつつエドゥアルトは執務室の清掃をしているカミルに言った。


「おはようございます」


返ってくる笑顔が寝起きに眩しい。

最近カミルはよく笑うようになったと思う。


まだ少し着られている感のある従騎士の職服が、小姓のときとは違う空気を纏わせるとしても、それだけではない気持ちの変化が、カミルを大人びて見せた。



なので、エドゥアルトは心配せずに、今日彼に問おうと思っていた。



「カミル――伝えておくことがある」



席に着いてエドゥアルトが言うと、手を止めてカミルは執務机の前にやってきた。


「明日、イェルク・フォン・シャファト君との話し合いが設けられる。

その話が整い次第、彼を任官する。

そして、今回、彼の縁続きの従騎士も共に任官することになった」


真っ直ぐにエドゥアルトが言うと、カミルは少しだけ目を張った。



「望むならこの機会にお前を…共に任官することも可能だ」



まだ、早い。


カミルは13才であり、体もまだ整ってはいない。

従騎士になるのさえも、通例からいえば1年程早いのだ。

けれどエドゥアルトは訊いてみたかった。

カミルがなんと答えるか。


驚いた顔の後、カミルは静かに口を開いた。



「いえ、私は――従騎士としての務めを、全うしたいと思います」



エドゥアルトは、微笑んだ。

心から。



「…それでこそ私の近習だ」



イェルクを任官することと、カミルを任官しないこと。

これはエドゥアルトの、それぞれへの愛情の示し方だった。



すべてを理解しているかのように、カミルも微笑んだ。



****



スヴェンはなんとも言えない気持ちで、出勤してきたイェルクを迎えた。


金キラの騎士が泥酔状態で告げた迷い事がどうしても頭の端にこびりついている。


エミのように、酔っ払いの戯れ言として笑い飛ばしてしまえるほど、スヴェンは世の中を斜に見ていない。

ただイェルクを奪い去ろうとする悪漢として、あの騎士を祀り上げることはできないと感じてしまっていた。

イェルクを欲しがることに、相応の理由があったら?その時自分は納得するのだろうか?


ふと、そんなことを考えた。



「――師匠、どうしました?」



じっとイェルクを見ていたことがばれて、見上げてきた瞳はいつものように真っ直ぐだった。



それを見てひとつ思ったことは、どんな理由であれ、この瞳が失われるのであれば、それは間違っている、ということだった。



「なんでもない」そう呟くと、スヴェンはイェルクの肩を押して共に街に降りた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

アンケートは終了しました。ありがとうございました!!!


結果は第二部「居眠り姫と王女様・1」の後書きです。



スピンオフ作品


わたしの素敵な王子様。[短編]


君の愛は美しかった[連載]



いただいたショートストーリー


●ルーシィさんの異世界単訪●本日の単訪先は!!『いねむりひめとおにいさま【プロット版】』だにゃ♪ 提供:アホなゴブリン('ω')

いただいたインスパイア作品


童話【居眠り姫と王子様】 作者:もふもふもん

i394257

バナーをクリックすると設定資料集に飛びます。

バナー提供:秋の桜子さま ありがとうございます! script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ