居眠り姫と法規の司・6
名乗っておくわね、わたしはリーゼロッテ・ミュラー。
絶賛婚活中の24歳よ。
ロッテと呼んで。
親しい人にはそう呼ばせるの。
人には美人て言われるわ。
そうね、悪くはないと自分でも思ってる。
だから正直お誘いはひっきりなし。
匿名のプレゼントは慣れっこよ。
こんなこというと嫌味な女だって思うでしょう。
でも仕方ないのよ、これ美人の宿命。
良くも悪くも皆外見に振り回されるの。
いいことばっかりだと思うでしょ?まさか。
勝手に聖女と言われるか、勝手に悪女と決めつけられるか。
だいたいそんな人生よ。
だから基本人には優しくなんかしない。
笑顔だって浮かべない。
なぜって、どいつもこいつも勘違いするから。
勝手にこっちを持ち上げて勝手に思い込んで、それが違ってたら罵るのよ。
「君がそんな人だと思わなかった」なんて、セリフのテンプレでもあるのかしらね?本当にみんな同じこというわ。
最初からわたしのことなんて、見た目だけで決めつけて、妄想通りにわたしが動かなければ、わたしが悪いことになるの。
なら、ねえ。
最初から、嫌な女でいいわ、わたし。
いろんな男がやってきて、いろんな男が捨て台詞を吐いた。
たまにはいい人もいたけれど、付き合うとなぜかがらりと態度が変わるの。
くだらない奴ばっかりだったわ。
もう男はうんざり。
でもね、わたしもお年頃。
このままいくと「性格難ありのため貰い手のなかった美人」ていうレッテルに収まっちゃうわよ。
それはちょっとご遠慮申し上げたいわ。
でもね、寄ってくる男は論外!もうありえない!さよなら、馬鹿な人たち!
そうよ、わたしはダメンズウォーカー。
自分で選ぶ男、ダメ、絶対!
だから見合いよ。
ぶっちゃけまともに働いてて、嫌悪感が沸かない人ならだれでもいいわ。
あとそうね、健康で浮気しなくて酒も賭博もたばこもやらなくて、あんまり家に帰ってこない人がいいわ。
稼ぎに関してはうるさいこと言うつもりないけど、甲斐性は見せてほしいわね。
あと馬鹿は嫌よ。
デブも嫌、ハゲはOKよ。
若すぎる男は駄目ね。
あとわたしの容姿にいれこむ男も嫌。
とにかくそんな感じで仲人にお願いして見繕ってもらった。
数件選んでもらってわたしの銀板写真付きで釣書渡したの。
なんとその週のうちに使いがきたわ。
一件除いて。
「じゃあこの人にするわ」
仲人さんに言ったら驚かれたわ。
「是非にと言ってくれている人がこんなにいるのに、その方になさるの?」
そりゃそうよ、わたしの釣書になびかない男よ、最高じゃない。
逃げられないようにとっとと捕獲するわ。
見合いの手順もなにもかもすっ飛ばしてさくっと会いに行った。
全力で面食らってたわね。
見た目はまあまあ、悪くはないわ。
一緒にいたらその内愛着湧きそうな顔よ。
しかもわたしに一目惚れなんてこともないみたい。
目を見ればわかるわ。
職場での人望もそこそこあるみたい。
よし、見つけたわ優良物件。
「結婚してください」
これで終わりよ、わたしのダメンズウォーキング!




