シャファト家と在りし日の想い出・17
祝50話
後書きあり
(とくに重要な情報はありません)
翌朝出仕するユリアンに、なぜかヨーゼフがついてきた。
「野暮用」があるとのことで、ユリアンは全力でつっこまなかった。
王宮に続く渡り廊下で別れた時も、どこへ行くのかなどと訊ねるのはそれこそ野暮というものなので、訊いて欲しそうに「チラッ
チラッ」をされてもユリアンはいい笑顔で見送った。
本当は「しばらく休んでいい」と言われていたのだが、たぶん今国璽尚書室は――いや、国璽尚書は大変なことになっているはずだ。
とりあえずいただいた休日の間も、午前中は構いにくるつもりでいる。
「………なにしてんですかヴィン」
ヴィンツェンツは書類が散らばる床の真ん中で座禅を組んでいた。
「…宇宙との交信」
この国の司法長でもある国璽尚書(男性・34)は寂しさ極まると稀に奇行に走る習性を持っていた。
「ほらなにこんなに散らかしてんですか!片付けますよ!ってか、あんたもしかしなくても家帰ってませんね?ほら机戻りなさい、珈琲淹れてやりますから」
「…なんできた?」
座席を組んだままヴィンツェンツがぽつりと言った。
「あんたが宇宙と交信してるっていう神のお告げがあったからですよ。
一体どこで寝たんです、髪型が個性溢れてますよ、顔洗ってきなさい。
さっき食堂に軽食頼んできましたから、届いたら食べて仕事戻りますよ!」
のろのろと立ち上がって言われた通り顔を洗いに行く背中を見て、ユリアンはため息まじりの苦笑をした。
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ルドヴィカはなんとなくヨーゼフが「用事のついで」と言いつつ立ち寄ってくれた理由がわかっていた。
祖父の瞳はとても心配そうな光を湛えていたから。
ルドヴィカだけではない。
イェルクのことも、ユリアンのことも、祖父は心配で来てくれたのだ。
そろそろ乗り越えなければならないのはわかっている。
そしてルドヴィカ自身は、きっと今年は母の記念日を穏やかに迎えられると思っている。
庭師のファビアンは今も母が好きだった花を大切に育ててくれている。
今年はきっと皆で、母の想い出について語れるような気がする。
悲しいことばかりではなかった。
あさっては、きっと笑顔で思い出せる日になってくれると、ルドヴィカは心の願いを反復した。
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「あさって珍しく有休取ったのな?どっかいくのか?」
警ら隊7班の全体人員配置表を見ながら何気なく問われた言葉に、イェルクは何気なく答えた。
「ああ、母さん死んだ日だから」
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あてがわれたサンドイッチをもむもむと食べながら、ヴィンツェンツは自分が散らかした書類をぶつぶつ文句を言いつつ拾い集めるユリアンを眺めていた。
珈琲はまだ熱くて飲めない。
「ユリアン」
「なんですかお子ちゃま尚書」
「明日の朝も来い」
「わかってますよ」
「でもあさっては来んな」
ユリアンがぴたりと止まった。
「そんで、しあさってからまた普通に出仕しろ」
なんとも言えない表情でユリアンはヴィンツェンツへと顔を向けた。
結局それについてはなにも言わず、ユリアンは「……わかりましたよ」とだけ呟いた。
びっくりすることにもう50話ですよ
読んでくださりありがとうございますですよ
さらにびっくりすることになんとまだお話の中では一週間くらいしか時間が経っていないのですよ…!!!
本気かよ…!!!
どうするんだよわたしタロウの殉職まで書くって決めてたのに、これ普通に300話越えるんじゃね?というペースですよ
どうしたらいいんですよ?
ほんとお付き合いくださっている皆さまありがとうなのですよ
なんとか話数じゃなくて内容を進められるよう精進して参りますですよ!!!
よかったら今後もよろしくですよm(_ _)m




