シャファト家と在りし日の想い出・6
早速子猫たちの名前を考えようと、ルドヴィカは館内の図書室へと赴いた。
それほど大きな書蔵ではないが、ルドヴィカの好奇心を満たすには十分の場所だ。
そしてどちらかというとルドヴィカは気に入った本を何度も読み返す習性の人間なので、もしかしたらここにある本も読みきれずに人生を終えてしまうかもしれない。
そう思うと違う本を手に取ろうと思うのだが、ためしに20ページも読んでみれば、だいたいそこらで好きな本へと目移りしてしまうのだった。
最近その点においてすごいな、と思うのが、『雑誌』だ。
最近『いねむりひめ』の件があってから、侍女にお願いしてビンデバルト氏の所属する出版社が手掛けている雑誌を買ってきてもらった。
多岐にわたる分野の雑誌を扱っているとのことだったので、それは買ってきてもらう侍女の一存に任せ、そうしたら彼女は真っ直ぐに歩けないほどの量の雑誌を抱えて帰ってきた。
一通り読んだ。
ここが重要である。
一通り読んだ。
なんと…雑誌は飽きない!!!
それまで全く興味のなかった分野の話でも、ふと気付いたら読み入っているのである。
ある時はっと気づいたら、自分がじっくりと雑誌のスポンサー広告文を読んでいてびっくりした。
それくらい「読ませる」工夫が雑誌全体になされているのである。
これすごい。
改めてビンデバルト氏を尊敬すると共に、もし『いねむりひめ』を書かなかったら、こんなことには思い至らなかったであろうと思い、本当に書いてよかったと今更ながらルドヴィカは思った。
今雑誌は図書室の入り口に置かれていて、誰でも閲覧可、持ち出し可、である。
あんなにあったのが殆ど捌けていてなんか嬉しい。
…余談ではあるが、ルドヴィカはとある雑誌の広告で『通信販売』というものの存在を知った。
――なんと、手紙でお願いすると、できあがったドレスが届くのである!!!
これすごい!!!
とくにドレスが欲しかったわけではないのだが、どうしても『通信販売』してみたくて、衣装を担当しているアデーレに相談してみた。
すごく渋られた。
もういろんないちゃもんつけられた。
しかし粘った。
「そうね、本当に届くかどうかもわからないし、届いたものが挿絵みたいなものかもわからないわ。
でもわたくしアデーレなら、どんなものが届いても素敵にアレンジしてくださるって、確信していましてよ」
と言ったところ、にやり、として「承知しました」と彼女は下がった。
ああ、いつ届くかしら、『通信販売』。
そんなことを考えつつ図書室でいろんな本を繰ったが、子猫に相応しい愛らしくも気品漂う名前は思いつかなかった。
命名、難しい。
クッションの名づけとはまた違った重々しさがある。
ルドヴィカは本を閉じて元の場所に戻し、図書室を辞した。
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リーナスは報せを受け取った。
筆跡は若いころから見慣れたものである。
開封するとそっけない訪問予告の手紙だった。
目頭を揉んでリーナスはため息を吐いた。
予告日は4日後。
であれば明日の午後には来るだろう。
主が戻る前にできる準備をするため、リーナスは部屋を出た。
すみません…書きたいこと多すぎて、想い出ターンながくなりそうです…
なんかすみません…




