居眠り姫とお父様・6
最初しらふで書きましたが酒入れて修正しました。
長くてうざい後書きがありますが「うざっ」と思ったらスルーしてください。
「よう、ヒーロー」
「…なによそれ」
少しだけ酔った。
まずい酒だった。
「珍しいわね、酔ってからここに来るなんて」
いつもの酒を頼んだら、チェイサーを渡された。
何でもいいから口にして、とりあえずなにかをやり過ごした。
「なにあったか知らないけど、酒に逃げるような歳でもないでしょうに」
「逃げてねぇよ、真っ向勝負した」
「なにがよ」
「……やっぱ、泣かれんのは、つれぇな」
小声で呟くと、ヒーローが目を見開いた。
「あら、なによスヴェン、あんた泣かせるような人ができたのね?おめでとう」
「――イェルクだよ」
もう一度渡されたグラスは、薄い酒の味がした。
「訊いていいの?」
「ああ」
楽隊の音がやかましくて、今すぐやめろと言いたくなる。
でも、そのまま続けてなにもかも覆い隠してくれ、とも言いたかった。
「騎士様になることになった、あいつ」
がやがやと、うるさい沈黙が落ちた。
「どういうこと?」
「引き抜きがきてる、師団長直々だ。
こっちから、ひっくり返すのは無理だ」
「――どこの師団?」
「第二」
「ああーーー」
なにかを悟ったような声を上げると、ヒーローはかつらがずれるのも構わず頭を抱えた。
「ごめんスヴェン、それたぶんわたしのせい。
第二師団師団長、ここの常連。
イェルクちゃん来た時いたわ」
「まじかよ」と笑う。
「イェルクちゃんと壇上あがって歌ってたやつよ、金キラの髪の毛の。
やたら気に入ってて、帰るときもいつも来るのか訊いてたわ、そういえば。
ああーーー!!」
声をあげて笑った。
「なに笑ってんのよスヴェン!一大事じゃないの!」
「ああ、そうだな」
グラスを干して、心に刺さっていたことを言う。
「潮時かもしれん」
「――何言ってんの?」
『シャファト家の嫡男が?そもそもが可笑しいでしょう。
あるべき位置に戻る、それだけです』
「あいつ、警らでいていいのかな?」
自分が答えたくなかった問いを投げて、自分がきったない人間だとわかり嗤う。
なんで俺こいつにこんなこと訊いてんだ、こいつはヒーローなのに。
イェルクのヒーローなのに。
「…それは、あんたでもわたしでもなく、イェルクちゃんが決めることじゃないの」
しらふの瞳で返ってきた問いの答えは、たしかにその通り過ぎて何の捻りもない。
「あんた勘違いしてるわよ、イェルクちゃんはちゃんと考えて選択してる。
なにもかもしてあげなきゃいけない子どもじゃないのよ?」
「わかってるよ」
「わかってないわよ」
盛大にため息を吐いてからゴージャスなかつらを直し、ヒーローはウェイターを呼んだ。
「ラフロイグ持ってきてちょうだい。
わたしも今日は朝まで飲むわ。
付き合いなさいよ、酔っ払い。
その感傷的な態度叩き直してやるわ」
――もう一回、連れてきてやりたかったな。
あいつ警らのくせに方向音痴だからな。
ひとりじゃここ来れないだろ。
渡された酒は今まで飲んだ中で一番深くて――苦かった。
読んでくださり本当にありがとうございますm(_ _)m
わたし自身がずっとROMだったため、こうしてちまちまと書かせていただいている中、読みに来てくださっている方々の有り難さが日々身に沁みます。
本当に数ある作品の中から、時間を取って訪問してくださり感謝です。
わざわざ検索かけて来てくださった方もいらっしゃるのだろうなーと思うと全方向に足を向けて寝れない気持ちです。
王道テンプレからは遠い設定で、恋愛要素もほぼなしのどこがサビか分からない作品で、しかも100パー書いてる人の自己満足という、「なんでユニークユーザー様がいらっしゃるの?」と若干不安になる仕様ですが、今後もスマホかPCをいじれる限りは更新していきたいと思います。
わりと行き当たりばったりで書かせていただいていますが、少しでも皆さまの楽しみや慰安になれば幸甚です。
今後もすきをついて更新しますが、よろしければまたいらしてください。
読んでくださったこと、重ねて感謝します。




