お兄様と王宮の騎士様・4
「罠かっ!」
なんと敵中に誘き出されてしまった!
さすがに多勢に無勢、これは降伏すべきだろうか。
…いや、僕にも警らの意地がある、一矢報いてくれよう!
「うーんと…今朝からそれはなんのノリなのかわからないのだが、市井で流行っているのか?」
困ったような表情を浮かべてしらばっくれるキラキラ妖術師。
なんでキラキラしてるのかわかった、案内少年よりさらに濃い色の金髪だからだ。
これはまぶしい、目に悪い。
「いったいなんの目的で僕に妖術を!」
「うーん、よくわからんがついてこい」
振り返ってこちらに背を向け歩いてゆくキラキラ。
さすがに背を向けた人間に攻撃をするほど卑怯ではない。
話し合いで解決するというならその方がいい。
おとなしく従うことにする。
招き入れられたのは雑多な執務室みたいなところで、見た感じは警らの詰め所と似たような場所だった。
まぁ警らの詰め所のがきたない、それは間違いない。
案内少年が茶を淹れて「どうぞ」とテーブルに置いたので、とりあえず座った。
キラキラは正面に座り「とりあえずわたしの名前を憶えてくれ、エドゥアルトだ」と言った。
「ちなみに妖術師とかじゃなく騎士職だ。
イェルク、君とは先週エミの店で会っている」
「うぅん?」
エミの店ってどこ。
「…まぁ相当酔っていたからな、しかたない。
改めて質問があるんだが訊いていいか」
「どうぞ」
どうぞ。
「先日も訊いたが…なんで警らをしている?」
「ん?」
なにそれ。
「仕事なんで警らしてます」
「そうじゃなくてだな。
なぜ職業に警らを選んだ?君の御父上は 尚書部長官補佐だろう、普通文官目指さないか?」
「文官の中間管理職のキツさ見てて目指したくなると思います?」
「…なるほど、まぁ武官も似たようなものだが。
――君の家格なら容易に騎士を目指せたはずだ、なぜ警らを選んだ?」
「えっなにそれそんなこと訊くんですか」
すっごい当たり前のこと訊かれてるし。
「警らのがかっこいいからですよ、断然」
キラキラ改めエドゥアルトが笑った。
「しらふでも同じ答えか、やっぱり面白いなぁ、君は」
「はぁ、そりゃどうも恐縮です」
「それで…もう少し準備してから伝えようと思ってたが。
私は君を引き抜こうと思っている」
んんー?




