お兄様と王宮の騎士様・3
――しっかり朝ごはん食べたから、もう大丈夫だと思ったのに。
どうやらよほど高位の妖術師らしい。
イェルクは白く続く廊下を唇をかみながら往き来し、この迷宮を作り上げた男を思い返した。
なんかキラキラしていた。
そうだキラキラしていた。
顔は憶えていない、きっとこれも妖術のひとつだろう。
なぜこんな目に合わされるのか理由はわからなかったが、事件はいつでも突然やってくるものなのだ。
ヨアヒムが貸してくれた探偵小説に書いてあった。
「――イェルク・フォン・シャファト様でしょうか?」
静かに問い尋ねる声が下から聞こえ、イェルクは視線を落とした。
ルドヴィカと同じくらいの金髪少年がいた。
「はいイェルクです、こんにちは」
あ、間違った、まだおはようございますかも。
「――こんにちは。
私がお仕えしますエドゥアルト・キュンツェル様よりお迎えに上がるよう仰せつかりました。
ご案内致します、どうぞこちらへ」
「んんー?」
イェルクは首をひねった。
「それはどちら様でしょう?」
「『名前を言ってもわからないようなら説明してもわからないからそのまま連れてこい』とのことです」
「なるほど?」
「よろしければご同行いただけますか」
まあどの道迷ってたし。
「うーんと、なんで僕がここにいるのわかったんでしょうか?」
「『たぶん王宮と廷臣宿舎の間辺りで警ら服のまま迷ってるだろう』とのことでしたので、お捜ししました」
「なるほどー」
とりあえずイェルクはついて行った。
他人と歩くと妖術が消えるのは、さっき父の同僚さんと歩いてわかったしね!
なんとなく王宮側に進んだようなところで開けた中庭があり、案内少年がそこに出たのでついて出た。
「えっ、なにここ騎士団関連?」
「はい、鍛錬場です」
なんかたくさん騎士様がいたんで訊いたら少年が答えた。
「――きたか、イェルク」
今朝のキラキラ妖術師がいた。




