穂宮家の呪い
それから私達家族は逃げるような早さで荷造りを行った。――というのも父曰くこの世には『魔法使い』がいるらしく(また映画かよと思ったのは触れないでおく)、一族の能力は魔法の原種みたいなものらしい。そういう『魔法使い』にとっては私のような特殊な呪い(能力)がいると、保護という名目で実験台にしようとするのだそうだ。
何それ怖い。
家から出るとき母から綺麗なブルーの石が入ったペンダントをかけられた。この石が魔法使いから身を守ってくれるのだと教えてくれた。
ちなみに私は出かける前に何を口にしたかというと、水と飴だけだった。もう一度言う。水と飴だ。水は腐らないし、飴も比較的腐らないからそこは便利だった。けれど空腹なのには変わらない。
飛行機の中の機内食も全然食べれないし、呪いがバレてはいけないと食事には触れることさえできなかった。
デザートのプリンめちゃくちゃ美味しそうだったな……。
日本は7年ぶりに帰国した。8歳の頃の記憶しかない私は東京の人の多さにびっくりした。その後また新幹線で数時間前乗り続け、地方都市の主要駅に着くと地元の電車でまた数時間前揺らされた。この時私の空腹の限界値は超えていて、死んでしまいそうだった。時間にしておよそ2日分何も食べていないのだから。
ペットボトルの水を飲みながら空腹を満たし、目的の駅に着いた。見る限り山しかない、東京と喧騒からはかけ離れたのどかな田舎だった。
「初めてまして。」
そこに現れたのは緑の着物を着た若い女性だった。長い黒髪で前髪はぱっつんにしていて切れ長の瞳。いかにもザ・ジャパニーズレディって感じの人だ。
「当主様にお仕えしております穂宮鬼灯と申します。菫様、茉莉花様、アレックス様、当主さまがお待ちです。」
ジャパニーズレディーの鬼灯さんがピカピカに磨かれた車に案内すると(車に詳しくはないがどう見ても高級車だった)、男性の運転手が私達を