一族の能力
「……一族って?どういうこと?」
「いきなりこんなこと言って驚くかもしれないけど、パパとママはね、特別な能力を持った家系に生まれたんだ。」
「特別な能力……」
「そう、パパの一族は筋肉とかを操るようなことができる人たちでね。これはママと結婚するまで気づかなかったんだけど……。それでママの一族は植物とかを操ることが出来る人たちなんだ」
「……うん。ごめん全然分からないよ」
いきなり言われても全く話についていけないのだからしょうが無い。
能力やら操るやらなんて、空想の物語だと思ってたのだ。大真面目に言われたってどう信じればいいのか分からない。
困惑した私の表情を見た父は落ち着かせようとしたのか、その頭を優しくを撫でた。
「それじゃあジャスミン、パパの能力を見せてあげる」
そう言って父は庭から壊れたシャベルを持ってきた。たしかガーデニングをしてるとき壊れたといっていたが。
「見てて」
父はシャベルの枝の部分を両手の『人差し指』だけで折り曲げた。
「ええ!?嘘!?」
枝の部分は金属製でとてもじゃないが、『人差し指』で曲げられるような太さでもない。
「これで、信じてくれたかな?びっくりさせちゃったね」
父は私の頭を再度撫でた。私を怖がらせたく無くないというのが胸が痛くなるほど伝わってくる。
「……茉莉花。ママの能力も見せるわ」
目を真っ赤にしたままの母はキッチンからミントの植木鉢を持ってきた。その葉に手を触れるとみるみる茎が伸び、葉は沢山生えてきて青々と茂っている。
「映画みたい……凄い……」
「これがママの力なのよ。本当はこんなもの要らなかったのだけど」
「なんで?格好いいじゃん!コミックとかアニメのヒーローみたいな感じでしょ?とっても凄いよ!」
そう言うと母はまた泣きそうになった。その顔を見て私はまた胸が痛む。大好きな母にはいつものように明るく笑っていて欲しいのに。
「……ジャスミン。それでな、ママは日本、いや世界的にも由緒正しい一族の出身でね。古来からママの一族――穂宮家の血を守るため、他の能力者一族との間に生まれた子供は一族の呪いをかけられるらしいんだ」
「………呪い?それって今ミルクが腐ってるようなったのと関係しているの?」
「ええ、そうよ。恐らく茉莉花には物を『腐らせる』呪いがかかってしまったようね……」
ま、まじか……。あれ?っていうことは私これから食べるときどうすればいいの?サッカー選手になるために体力と身体作りをしなきゃいけないのに。というかそもそも生きていけるの?私。
「ジャスミン、日本に行こう。穂宮家の人ならどうするべきか知っているはずだ」
「アレックス、だめよ。嫌よ、そんなの……」
「俺だって辛いさスミレ。だけどこうなってしまった以上、ジャスミンを守るにはこれしか無いんだ」
抱き合う両親を見ながら、私は自分の運命の残酷さにまだ、気づけていなかった。