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そもそも私が異世界人だった  作者: 亘理朝夢
8/22

全力羞恥プレイ?

なんか、異世界に親同伴でくる羽目になってしまいました。

「ほら、とりあえずこれ食べなさい。」


お母さんが持ってきたのは、サンドイッチとスープ。


「ここ、何なの?」


お世辞にも贅沢とはいえないけど、思ったほど不味くない。

全粒粉入りのパンに似た味がするし。

もっとパッサパサのモッサモサかと思ったけど、食に関して困るほどではなさそうだ。


食べながら、母に質問する。


「貴女から見れば、異世界って言うべきね。」


そういえば、私も母も、質素な村人風の服を着ている。

凄くない?

異世界きていきなり、衣食確保されてる上に、布団で寝れるって、かなりの待遇。


「何で、お母さんがけろっとしてるわけ?」


「私も、ドワーフだし。」


母もドワーフだったとか、、、。

確かに、母もチビだとは思った。

なるほど、それなら分からなくはない。

私はドワーフの子だからドワーフなのか。


「てことは、私はハーフ?」


「いえ、貴女は純血のドワーフよ。あと、私とは血は繋がってないからね。」


もう、衝撃的事実が多すぎて、頭がついていきません。


「どこで驚けばいいか分からなくなってきたわ」


ため息をつきながらも、とりあえずお腹は空いていたので食べ物を平らげる。

食い力は重要ですからね。


「そうねぇ。簡単に説明すると、貴女はね、ドワーフの中で権力のある方の娘なのね。

その中でも異様に力を持って産まれて、魔王か勇者の器と言われてたわけなのよ。」


ブットビー。

簡単に説明してるけど、ちょっといきなり魔王だ勇者だとか、、、

32歳のOLには、荷が重いです、、、、。


「いや、魔王だ勇者だとか言われても。私何もできませんけど?」


てか、魔王か勇者って、極論過ぎる二択やな。


「で、その器の力ってのは、殺してその血を浴びるとその人に移るのよ。」

「血なまぐさい話ね、、、。竜の血を浴びて勇者がパワーアップするようなあれか」

「で、狙われ始めたから、異世界に逃しちゃえ!って、王さ、、、権力者が言ったわけよ。」


うわー、、、ポロっと言ってるけど、王様まで出てきたよ。


「異世界に行くと能力が消えるって話だったし、うまく行けば器とかじゃなく普通娘になって帰ってくるかも、っていう期待もあって。

要は、王様は、勇者とか魔王とかじゃなくていいから、可愛い娘を守りたかっただけなの。ドワーフは14歳で成人だし、15歳で、魔王なのか勇者なのかはっきりするし、16歳になったら連れて帰ろうと思ったんだけど、まさか、異世界じゃクラスチェンジ出来ないなんて。」


計画ガバガバですね。

そもそも、王様とか言っちゃってるし。


「でも、力が無くならなかったとしたら、連れて帰ったら結局狙われるんじゃあ?」


血を浴びて力が移るなら、何歳になろうが一緒じゃん。


「女の子の場合は抜け道があってね。血が穢れると体に染み込むのよ。殺しても、力を奪えない。」


それは、要はあれですな。

処女かどうかって話か。


「じゃあ、もう、14歳になったら即連れて帰って、適当にお見合いとかさせればよかったんじゃ?いや、むしろ16とか待たないで、ある程度の歳でさっさとって言うのも1つじゃないの?」


「そこなのよ!」

なぜか誇らしげに、母は言う。

「一応、何度か、向こうの世界にいるドワーフの男性に頼んでこっそり試みたんだけど」

「まて。」

「いや、ちゃんと紹介して、それからとは思ってたのよ?」

こっそり試みたってなんだよ。

しかも、計画の中に娘の貞操を奪うことが入ってるって、やばいやろ。

「まぁ、元々無理なのはわかってたのよ。」

さすが、実の母じゃないってのは、確かかも。

普通、娘にそんなことできないわ、


「無理って?」

「器を汚すことができるのは、それより大きな力を持ったもののみ。向こうの世界にいるドワーフの力なんて、たかが知れてるわけよ。

実際、遠縁のお兄さんとして紹介した事あったけど、貴女に触れることすらできなかったわ。」


そういえば、なんか遠縁のお兄さんとか言って何人か来た事あったな。

向こうから手を差し出されたから、握手しようとしたら、急に手を引っ込められて、変な感じだったのは覚えてる。


「じゃぁ、穢せないじゃん。」

「だーかーら、14で成人だから、さっさと異世界で男を見繕って、と思ったら、まさか16歳まで結婚できない国だったなんて、、、」


異世界を巻き込んだ壮大な計画のくせに、穴だらけである。

なるほど、だから16で連れ帰るつもりだったのね。


「それならそうと、ちゃんと色々伝えてくれれば良かったのに。」

「何度か言おうとしたけど、貴女、鼻で笑ったじゃ無い。」

そりゃまぁ、異世界から来たドワーフのお姫様ですとか言われても信じないわな。

あまりに信じてなさすぎて、記憶にも残ってないわ、、、。


「そんなわけで、16歳でとりあえず諦めて連れ帰ろうともしたけど失敗してねー。お母さん、魔力使い切っちゃったの。てへっ。」


なにが、てへっ、だ。

失敗多すぎだろ。

人の人生なんだと思ってるんだ。


「ねえ、母さん。そんな事よりさ、転移したら二年ほどで死ぬとか聞いたんだけど、なんで母さんも私も無事なの?」


「それは、私が守っているからよ。」

誇らしげに胸を張る。

「こう見えても、かなり高位の神官なんだからね!

異世界に行って、力を奪われる時に、魔力を気力に変換して、その力で貴女と自分を守ってたの。これが出来るのは、この世界でも数人だと言われているわ!」


なるほど。

そんな貴重な人材を、愛娘を守るために護衛にしたのか。

よほどの親バカだな。


「それはともかく。とりあえずは帰ってこれてよかったわ。自力で往復なんてそうそう出来るものじゃないし。」


まてよ?母さんが守ってたのに何でこんなことになってるんだ?

守っててくれれば一生向こうで暮らせたのに。


「なんで今になって急に?私狙われ始めたの?」

「私がかけた目くらましの魔法が解けたみたい。

16で連れ帰ろうとしたくらいだから、そんな長期戦考えてなくてね。私の魔力使い果たしちゃって、支援要請出して、

20年以内には召喚されて戻るはずだったんだけど、今度は元の世界の方で失敗して、召喚術で違う人を召喚してしまって、次に召喚できるのが10年後と言われて、焦ったわー」

大して焦ってなさそうに言う。

なんかよく分からんが、とにかく失敗続きらしい。

ここまでうまくいかないのは、何かしらの力が働いてるのでは無いかと疑い始めたとこだったそうで。


「でも良かった。それすらも叶わなくて、王様がショックのあまり寝込んでるらしくてね。困ってたのよ。」

これまたあんまり困ってなさそうである。

どうやら、母のこの性格、演技ではなく素だったようだ。


「さ、落ち着いたら王様のところに行きましょう。」

立ち上がる母。

「え、何1つ解決した感ないのに行くの?」

器の問題も、クラスチェンジも解決してないでは無いか。

私、狙われ放題やで。

「え?クラスチェンジは、こっちの世界に来たことだし、教会に行けばそれで済むのよ。異世界に行ったわけだし、うまく能力が無くなっていれば、器じゃなくなってるかもだし!」

それで、魔王だとか勇者だとか言われたら、地獄だけどな。

「じゃあ、殺されるだ、汚すだって言ってたのはどうすんの?」


「え?」

「え?」

ものすごい顔でこっちを見る母に、むしろ私がビビる。

「力が無いと穢せないんでしょ?」

「えっ?」

母は、俯きながらブツブツ言い始める。

「いや、だから、異世界の人は、総じてこっちの世界の人より力があるわけで、逆にいえばどんな男だろうと手を出せるはずであって、それで汚されてないとなると、、、」

はっと顔を上げ、こっちを見ると


「まさか、貴女、その歳になって処女だなんて事は、、、」


「未経験で悪いかー!!!!」


自分の母親に、処女を突っ込まれる32歳。

何この羞恥プレイ。


死にたい。



ドワーフの女性は身持ちが固いって言うのは、疑わしくなってきました。

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