修行の成果
普通は、転移で驚異的なスキルを得るものだとおもったが、スキルはどれも使えなさそうなものばかり。
非常にガッカリです。
さて。色々やっては見たものの、結局のところ私に何が出来るのか。
スキルを順に整理してみた。
成功率操作。これは、主にドワーフが武器とかを作る時に、特殊効果がつく確率を操作するのに使うようだ。成功すると切れ味が上がったり、防具なら炎熱耐性とか、おまけがつくっぽい。
ちなみに、戦闘で使ってみると、ちょっと運が良くなった。恐らく、その時与えれる効果の中の最良の結果を多少操作してくれるらしいが、まぁ、所詮たまたま避けられたり、たまたま当たったりが数回増えるだけで、どってことなかった。
魅了。これに関しては、何とカミーナには効いた。最初、うっふん、と、やってみたが、全くダメで、ちょっと思いついて、おかーさん、大好きだよ!的な感じに切り替えてみたら、発動した。
『ううっ。こんな歳になっても、娘は可愛いものです。おかーさーん、って、、、ああ、まりちゃん!私の可愛いまりちゃんは誰にも渡さない!」
抱きついてきてうざくなったので解除した。
魅了中は、3歳くらいの、私をみているような不思議な感覚だったそうで、操られる、というよりは、相手が愛おしくてたまらなくなるっぽかった。
愚者の威圧。試そうと思ったが、発動しなかった。発動条件がいまいちわからない。
状態異常無効。コレは、状態異常にならない。ただそれだけで、いちいちスキルを使うでもなく、普通にかからないだけっぽい。便利といえば便利。
双剣無双。双剣を持ってる相手にはめっちゃ強くなる。原理とかはよくわからない。相手が双剣でない場合は発動しないが、発動した後に相手が片手の剣を放しても相手を倒すまでは発動する。
ラストアタック補正。とどめだー!という瞬間の攻撃力が跳ね上がる。しかし、残りHPとかが見えるわけでもないので、なんかいまいち実感はないが、スライムがそんなスキル知ってると、嬉しそうに教えてくれた。
機密事項とか、すぐ漏らしそうやな。このスライムあかんやつや。
錬金術。物を分子レベルで分解して合成したり、特殊な薬作ったりする。ポーションや、簡単な武器なども作れそうだけど、材料が必要。両手を合わせて、パン!てやったらなんか出来るかと思ったけどダメだった。カミーナには、なんか、お下げ髪の小柄な少年の真似かと聞かれて、恥ずかしかった。そういえば、よく私の部屋から漫画持って行ってたな、、、。
キーワード。相手の特徴を表示する。表示された文字の一部は、触ることができて、取り外したり他人のものと取り替えたり出来る。出来る箇所は限られており、試した限りでは、性別や色など、微妙な部分だった。
以上。
コレで魔王、だと?
まじで、鍛冶屋にしかなれそうにない。
「うーん、驚くほどにこのスキルたちは役に立ちそうにないね!」
カミーナは、笑いながら杖を取り出す。
「仕方ない。剣も全然使えなさそうだし、魔法を練習しよう!」
「そう!それだよ!魔法!そういうのがやりたかった!」
「あんた、ノリノリねぇ、、、」
だって魔法だよ?
地球に生まれたからには、一度は使ってみたい魔法!
まぁ、生まれたのは異世界で、剣と魔法の世界なわけだけど。
「ところでかーちゃん、なんか私に対して、敬語と普通の言葉が入り混じってるんだけど。」
「いやー、30年近く育ててきた娘であると同時に、王女様なわけで、私としても、対応に思い悩んでるのよ。」
「私としては、普通に喋ってくれた方がいいんだけど、そもそも普通はどれなの?」
「ちょっと敬語気味なのが普通ですかね。でもまぁ、娘に対して敬語っていうのもおかしいので、砕けて喋ってたけど、それも変というか。なので今、試行錯誤中です。あまり気にしないでください。」
雑なくせに、変なところに気を回す人である。
まぁいいや。そういうことなら、しっくりくるまで放置しておこう。
「早く教えて、早くー!」
「って、そもそも、マリは魔法使えてたはずなのよね。3歳くらいでそこそこ使えてて、天才だーってなったもの。」
「えええ。そんな記憶ないんだけど、、、」
「まぁ、一応混乱させて眠らせて異世界に運んだから、夢だと思ってたのかもね。」
なんと。魔法が使えてたなんて、、、。どうやらこの世界では、大抵の人は魔力を持っており、どんな人でも明かりを灯したり、火をつけたりは出来るらしい。
素質のない人でも、マッチの先のような火や、部屋の中を照らす程度のことはできるのだとか。
「じゃあ、水とかは?出せるの?飲み水とか作れたら便利だよねー!あれ?そういえば井戸とか有ったよね?」
「それは、水系の魔法は少し難しいから、できる人もいるけどできない人も多いわね。火や光の魔法の方が簡単なのよ。水を作る魔法は生成になるから、一滴作る程度なら誰でも大抵できるけど、いざ飲むほどとなると、なかなかね。」
なるほどなるほど。簡単なことはできても、いざ複雑なことをするとなると、やっぱり才能とか、努力がいるのね。
カミーナは、呪文?を唱えながら私を振り返る。
「しゃあ、まず、下級の魔法から。下級は、基本的に、魔力を取り込んで自然に存在するものに変化を加えたり、魔力を変換したりするの。力ある炎よ、我が魔力を糧に力を示せ!火球!」
カミーナの手の上に赤い炎の玉が現れ、前方に飛ぶ。
「すごーい、すごーい!」
あれだね。はてなブロック叩いて花を取らなくても使えるんだね!なんてくだらないことを考えた後、自慢げなカミーナと、焦げた壁を見比べる。
成る程。
空気中の酸素とか利用して、魔力を変換した火種を少し大きくして放つ感じかな。ほんとに、火を投げました感がある。
ふっふっふ、こういう時、元の世界で培ったラノベの知識が火を噴くぜ!
「呪文ていっても、決まった形はなくてね。今のは教科書に書いてある一番一般的なやつ。慣れてくれば、別に呪文なくてもいいし、どんな言葉でもいいのよ。例えば、、、燃やし尽くせ!火球!」
先ほどと同じ火の玉が現れ、壁を焦がす。
おおおおお!いいねいいね、ファンタジーだ!
魔法というのはこういうもんだよなー!流石にこうなれば、もう、夢だ幻だ、異世界とかどんな詐欺だよ!とは言わない。
しかしよく考えれば、街中のほとんどの人が火炎放射器持ち歩いてるようなもんである。怖すぎるだろ。
「じゃ、やってみて。まず、体の中の魔力を手の平に集める感じで。」
出ました。
そもそも、魔力って何かわからない状況での、魔法レクチャー。普通は、ここで、魔力ってなによ!と突っ込むところだが、私は違う。
昔、何度も何度もカメハ◯波とか霊◯とか撃とうとした。手をピストルの形にして力を込めれば、◯丸とか撃てるとおもってた。
撃てなかったけど。
そんなわけで、体の中の魔力とやらを手に集める感じっていうのは、なんども練習したことはあったのだ。
「私は今日、ゴク◯に追いつけるわけだね。」
「火球と亀な仙人の必殺技とは違うからね?」
私の台詞に、呆れ顔のかーちゃん。
しかしながら、丁寧にレクチャーしてくれた。
まずは手のひらを上に向けて、魔力を込める。
炎が揺らめくイメージを頭の中に描きながら。
うーむ、炎かー。しかし、ファイヤーボールって言ったらやっぱ、青いオーバーオールの髭だよなー。最近やってないけど、チューリップみたいな花取れば使えるようになるんだよなー。
なんて、雑念が入ったのがまずかった。
『スキル、錬金術を発動します。』
『炎の花を錬成開始』
『完了しました』
私の手のひらに集まった魔力。
そこに、カミーナの時とは違う変な光が混ざり、光が収まった時には、謎の花があった。
しかし、花と言っても植物感は薄い。ムニムニしていて、顔が付いていて、多肉植物に近い触感だが、何というか、、、子供の落書きのチューリップといった形だ。スライムに棒と葉っぱが付いているようにも見える。
「何よそれ」
呆れ顔のかーちゃんは、私の手の上のものをジト目で見ている。
正直、こっちが聞きたい。
某ゲームをイメージしてしまったら、変なものが出来た。