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そもそも私が異世界人だった  作者: 亘理朝夢
14/22

修行をしよう

スキルがよく分からないので、修行することにしました。

うえーい、ひんやり冷たく、べっちょり感がすごい。


スライムに飲まれて、世界が暗転したあと、石造りのコロシアムの様な場所に飛ばされた。

しかし、、、こんなにベタつくと思わなかった。

ふつう、もう少しスマートに移動するものじゃないのかなぁ。


そんなことを思いながら、じっとりした服を見る。スライムの体液とか、ふつうに気持ち悪い。が、しばらくすると身体中にまとわりついていたヌメヌメが意思を持って移動し、一箇所に集まった。


「良かった、、、スライムってなかなかに気持ち悪いね。」

『失礼だなー!ユウシュウでユウノウなンだぞー!』

「おおう、また喋った。」


私とかーちゃんから剥がれたヌメヌメが、徐々に塊になり、手のひらサイズのスライムが出来上がる。

最初に見たものと同じ形で、サイズは一回り小さい。

薄水色のわらび餅に、ダークブルーのボタンの様な丸い目?が二つ。

口のあたりには小さいくぼみがあるが、喋る時にそこが動いているのかはイマイチよくわからない。

じっと見てると動いてる様な気もする。

しかし、声帯とかがあるわけでも無いので、そこが動くことに意味があるのかは、甚だ疑問である。


『ボクは、案内役もかネてるからね!』


なんか片言なような、流暢なような?

パソコンの自動読み上げのソフトみたいな喋り方である。


『ちなみにここは、ボクの中でーす。あっちに見えるのがカミン室とトイレ。で、ここに保存ショク。2人分が3日ブン。』


むにょっと伸びて指差した?先には、壁に埋め込まれるように有るドア。あの中が休憩スペースらしい。

反対の手?で、ここに、と言って取り出したのは干し肉、パン、水、スープの様な謎の球体。が、セットになっているトレー。


「どこから出てきたの?」

『ボクの胃袋。まぁ、ここもそうだけど』


すごい、謎すぎてわけがわからない。

私がスライムと遊んでいる間、カミーナはさっさと準備に移っていた。

外套を脱ぎ、隅に置いてある箱をガサゴソと弄る。


『ボクが耐えきれない様なマホウやチカラが顕現してしまったバアイは、安全優先で、ボクごとキタの砂漠に全てのエネルギーを転移しまーす。ボクは死んでも、代わりはいるから、、、』


なんか、このスライム作ったやつ転移者じゃ無いのか?と思えなも無い。


「代わりも何も、要は、分身体が衝撃とかを全部食って転移して捨ててくるってことでしょ。あ、これ練習用のやつね。」


カミーナが、私に双剣を渡しながら笑う。


「ああ、なるほど。因みに、食えない程の魔法とかあるの?」


要はこのスライムが安全装置な訳で、こいつが限界感じたら詰むじゃん。

そんなに、信頼していい性能には思えないんだけどなぁ。


「このスライムは、本当にすごいのよ。こう見えても。魔術の展開速度を上回ることが出来るし、今の所、終焉の魔王が全力で放った魔法を飲み込んだこともあるから、大丈夫!」


「、、、じゃあ、もう冒険者とかいらないやん。」


こいつさえいれば、世界は平和やん。

やっぱ、スライムは無双なのか。


「残念ながら、その万能性ってあくまでこの場所限定なのよ。座標を固定して、制限する事で、本来は有る筈の限界値を取り払った、とされてるわ。詳しくは知らないけど、でもまぁ、表向きと本当の仕組みは違うから、謎だけど。」


まぁ、研究結果を全て公表する馬鹿もいないもんな。


「とりあえずその考えで、こっそり盗んで冒険に連れて行こうとした人がいたけど、ここから出た途端に、普通のスライムになっちゃって、会話すらできなくなったらしいのよねぇ。」


へぇ、不思議な生き物だなぁ。


『ボクはすごいのだ!うまやえ!』

「うやまえ、でしょ。敬わないけど。」

「さ、おしゃべりはその辺にして。やることやってしまいましょ。今日のスライムくんはおしゃべりな子で可愛いけど、色々やってしまわないといけないこともあるしね。」

『はーい。じゃあボクは、隠れてるから、いツデも呼んでねー。回復薬も持ってるカラねー!』


スライムが地面に溶け込むと同時に、かーちゃんは私に向かって小さな火の玉を投げる。


「わあたああっ!!!!!」


びっくりして、避けるという思考にすら至らない。

絶対熱いやん、あれ。

双剣無双を信じて、双剣を振り回すと、野球の大振り的な要領でうまく双剣に当たるが、ベチッと、変な音を立てて床に落ちた。

全然無双ちゃうやん、しかも足元焦げたし。


「うーん、双剣無双って、どんなスキルなんだろ。」


かーちゃんは、不思議そうに焦げた床を見る。


「発動した感じもなかったし。人が変わった様に、乱舞とかやるのかと思った。」


私は、ハンターでは無いよ、かーちゃん。てか、確証もないのに攻撃魔法かけないで、、、。


「仕方ない、次は何試そうかな。あ。毒の呪い(カーズポイズン)!」


呪文とともに、私に向かって黒い霧がもわっと広がる。しかし、特に何も起こることなく、消えた。


「お。これって有効なんじゃ無い!?」


私は、嬉々として自分を見る。

特に苦しくも無いし、体も辛く無い。


「何処まで無効なのかな?麻痺の呪い(カーズパラライズ)。」


ふむ。同じく薄黄色の靄が私を包むが、特に何もなく消える。どうやら、とりあえず毒なんかは効かないらしいので、毒殺の心配はなさそうだが、そもそも毒殺される魔王というのもどうかと思うので、だいたいみんな持ってそうではある。


「確か、成功率操作、魅了、愚者の威圧、状態異常無効、双剣無双、ラストアタック補正、錬金術と、キーワード、だっけ?。成功率操作と錬金術は、熟練度が上がらないと感覚が掴めないから、とりあえず保留。ラストアタック補正は、なんとなく、双剣無双と合わせて使うと良さそうだけど、そもそも武器もまともに使えないのに、ラストアタック補正されても困るわよね。」


うーん、と、悩みながら、


「威圧は、そもそも条件があまりわからない状態で使うのは危険なのよね。なので今回はパス。となると、一番謎なのはキーワード。」

「キーワード、、、なんか隠し扉でも開けられるのかな?」


「とりあえず私に向かって使ってみて?」

「はーい。キーワード!」


『対象補足』

『キーワードを表示します』


すると、カミーナの前に文字が表示される。

なんかみたことある風景だと思ったら、あれだ。ニャコニャコ動画の画面だ。動画投稿サイトで、入力したコメントが視聴者で共有できる様に、流れていく感じ。

人に文字が重なる様子はシュールだなぁ。


「んんん?何か起きた?どうなった?」


どうやら、カミーナには見えてないらしい。


「36歳、ドワーフ、167センチ、50キロ、女性、神官、独身、雑って書いてあるのが見える。」

「、、、、なんやそのスキル。」


関西人でも無いのに、関西弁になるほどにカミーナも突っ込みたくなるスキルのようだ。

どうやら、大まかなプロフィールを表示するスキルらしい。しかし、持ってるスキルやら、弱点など詳しい事は分からず、大まかな情報が与えられるようだ。

何に使っていいやら全く分からん。


「しかも、、、雑って、、、」


地味に凹んでいるかーちゃんは置いといて、ふと気になった事を実行してみる。

そのままかーちゃんに近づいて、浮いてる文字をまじまじと見つめる。

そして、その文字に手を伸ばしたのだ。

だって、なんか立体的だし、この文字、触れそうじゃない?


「なに?なにやってんの???」


文字が見えてないカミーナは、不思議そうに虚空と私を交互に見つめる。


「おお、触れた!」

「えええ、ステータス画面みたいなのとは違うの??」

「あれはさー、画面が浮いてるみたいな感じで、触れないし半透明じゃん?これはね、なんていうか、プラスチックでできた手のひらサイズの文字が浮いてるのよねぇ。」

「なにそれ。見たい!」


すごく残念がるカミーナをよそに、私は、その文字をつついたり掴んだりしてみる。

取ったりはできないみたいだ。しかし、なんで触れるんだ??


「あれ?これ、動く。」


全体をツンツンしてると、女性、と書いてあるところだけ触るとなんか動くことに気づいた。

まさかねー、と思いながら、それを掴んで外してみる。


「え、ちょ、変なことしないでよっ!?」


カミーナの願いもむなしく、私は完全に変なことをした後だった。


「取れちゃった。」


指でつまんで、カミーナに見せる。

と、同時に、彼女の体が、不思議な白い光に包まれる。


「きゃぁあああああっ!!!!」


カミーナは、自分の胸をペタペタ触り、服の中を覗き込んで、叫んだ。


「なーいー!!!」





ただでさえ小さかったものが、無くなってしまったらしい。

ごめん、かーちゃん。

性別を取り外されてしまいました。

かーちゃんピンチ。


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