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そもそも私が異世界人だった  作者: 亘理朝夢
13/22

何をすればいいのか

婿探しははかどりません。

「うーん、見た目と強さは十分なのに。」


残念そうなカミーナは、この際置いておこう。


しかし、、、、困ったな。なんだかんだいって、適当に過ごして、うまく行けば元の世界に帰ることもできるかと思ったのに。

私が魔王で、もう少し力を蓄えたら、死なずに向こうの世界に居座る術は色々ありそうだし。

でも、命狙われたり召喚されたりしたら、面倒か。

やっぱ、最低限、魔力の定着として、婿を探さねばならんのか。

うーん、平和な日常が欲しい。


「かーちゃん、婿取りはこの際置いといて。私さ、このままだと護身術とか何もなしに異世界で生きていくわけでしょ?さすがに辛いんだけど。」

「そう?まぁ、私もあなたのスキルとかに少し興味出てきたし、良いか。魔法とかスキルとか教えるのは、早いかなーと思ってたけど。」


やっぱり、この母親は雑である。

色々考えた末の行動かと思っていたけど、違う。行き当たりばったりだ、これ。


「お嬢さん。練習場を少しお借りしても良いかしら?」

「…」


返事がない。

カミーナは、受付嬢を振り返り、彼女の目の前で手を数回動かしたのち、


「気絶してる。」


どうやら、受付嬢は、さっきの威圧からずっと笑顔で立ったまま気を失っていたようだ。

ううっ、、、事故とはいえ申し訳ない。


「これじゃあ、手続きができないわね。」

パタパタ動かしていた手を彼女にかざし、

「ヒール」


唱えると同時に、淡い光が受付嬢を包み込み、消える。


「はっ!今、なんかお婆ちゃんと久しぶりにあった気が、、、」


三途の川渡りかけとるやん。

この様子だと、さっきの大柄な冒険者も、実は生死の境を彷徨ってるのではないかと、不安になる。

死んでも困らないが、私が原因となると、やっぱり良い気はしないもんなぁ。


「あ、兄貴!」


おお、世紀末にいそうなモヒカントゲトゲ冒険者が、奥の部屋から出てきたかと思えば、慌てて男に駆け寄る。

どうやら知り合いのようだ。


「兄貴、何があったんですか!?」

「ナンパに失敗したのよ。診療所にでも連れて行ってあげなさい。」


カミーナが治療する気は無いらしい。

モヒカントゲトゲが、男を担いでギルドを出て行ったのを見送ると、カミーナは再びいった。


「練習場をお借りしても良いかしら?」


あのモヒカントゲトゲ、あんな鋭利そうなトゲトゲのショルダーガード付けてるのに、器用に背負って行ったなぁ。

もしかしてあのトゲトゲ、実は大した硬度無いんじゃないだろうか。

よく考えたら、あのトゲトゲって、殴ったりする側よりも自分へのダメージがでかそうだしな。


「あ、はい!ではこちらの書類にサインと、、、」


手続きを行っているカミーナを横目に、私は小さな道具屋を見る。

簡単な装備と、様々なアイテムが置かれている。

専門的な店というより、足りない物を少し買い足すといった目的の店なのだろう。

私も、護身用の短剣くらい欲しいなぁ。

おそらくポーションや回復魔法があれば、かなりの怪我でもそうそう死なないだろうけど、痛いのは勘弁である。


「ああ、痛覚無効貰っておくんだった、、、すごい重要なスキルやん、、、」


小説で得た知識をもとに、適当なことをつぶやくと、


「かなり高位の自己修復持ってないと、怪我したことに気づかず、死ぬけど。」


カミーナがチクリとイヤミを言う。

確かにそうだけどさ。あーあ、異世界来る前に、もっとちゃんとスキル研究しておけばよかった、、、。

ションボリしながら、何となく雑多に置かれている武器を手に取る。

よく似た二本が荒縄で縛られてるところを見ると、セットなんだろう。つまりは、双剣。

双剣無双とか言うスキルを持っているが、いざ武器を手に取ってみると、これで戦えるイメージが湧かない。

そこそこの重量があるし、下手に振り回すと、吹っ飛ばしそうだ。


「ほら、何やってんの、行くよ。練習場には、練習用の武器があるから、大丈夫。」


そんなことをしているうちに、手続きが終わったカミーナに呼ばれる。


「ちょっとした異空間になっててね、かなり暴れてもビクともしないのよ。」


ギルドの奥へ進みながら、カミーナは嬉しそうに説明する。

私のスキルを試すために、その練習場とやらを一室借りたらしい。

しかし、私のイメージしている闘技場のようなものは見当たらない。奥の部屋から地下に降り、さらに暗い廊下を進んだ先。

小学校の体育館を少し狭くしたような、微妙な広さの部屋についた。人間がスポーツをやるには狭すぎるし、魔法でも使って暴れたら一瞬で吹っ飛びそうである。

まぁ、魔法なんて見たことないけど。

そこで、立ち止まったカミーナは、私に向かって手を広げた。


「可愛いでしょ?」


カミーナが取り出したのは、手のひらサイズのぷにぷに。よくみるとポヨンポヨン動いており、うっすらくぼみがある。顔なのかな?しずく型を想像したけど、どうやらこの世界のものは丸いらしい。

要はこれ、多分、スライムである。

スライムといえば、小説界ではお馴染み、収納できたり、無敵だったり、合体したり、仲間になったり。ああ、某ゲームでは、変身を利用して繁殖に使ったりもしたな。まさかとは思うけど、魔王だったりしないよね?

私が一番やり込んでいたゲームでは、粘液状で意思はなく、うにうに動いて、落ちてるアイテムを拾って溶かすだけのモンスターだったが。


「かわいいかと聞かれれば、微妙だけど。プニプニ気持ちいいね。」


指でつつくと、くすぐったいのか、プルプルと小刻みに震える。


「コレが、万能異空間です!」


うーん。

それはあれかね。

そいつに食われて、中で色々やるってことかね。


「ふふふっ。品種改良したスライムさんでね。中は、ビックリ、シャワー室や装備一式、保存食まで完備されています!」


、、、なんか、そんな物が完備された精神力と時間の部屋みたいなの漫画で見たけど、あんなやつかな、、、。

中でチート的に修行できるやつ。


「1時間で何日みたいな機能はないので悪しからず。」


ですよね。

どうやら、かーちゃんも同じものを想像したことがあるらしい。


「スライムが死ねば出られるし、安全装置と転移装置も中にあるから、心配ないよー。」


よく見ると、その辺にスライムが跳ねてる。

ここは、このスライムを使った練習スペースなのかな。


『じゅんびいいー?いくよー!』

「あああ、喋った!喋るタイプのスライムだ!あ、ちょ、ま、まだ心の準備が、、、」


こっちの事情はあまり聞かないらしい。

どろっと溶けたかと思うと、大きく広がり、私とかーちゃんを飲み込んだ。


食われちゃった。





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