ギルドへ行こう
さて、ギルドで婿探しです。
はーるばる来たぜ異世界!
と、言いたくなるような街並みを見ながら、ギルドへ向かう。
中世ヨーロッパ的なイメージで、街並みは思ったよりも綺麗。
流石に自動ドアとかはないけれど、色々なお店があり、道沿いには露店が並ぶ。
ま、中世ヨーロッパ行ったことないから知らないけど。
定番の串焼きの屋台とか、何の肉焼いてるのかなぁ。
あ、この果物美味しそう!
りんごに似てるなー。いい匂いー。
「さっき食べたとこでしょー?」
キョロキョロしてる私を見て、カミーナは笑いながら言う。
今までお母さんと呼んでいた相手が、赤の他人だと分かったとはいえ、何と呼んでいいやら。
カミーナさんだし、かーちゃんでもいい気がするけど。
なんか2つの意味がかかってる感じでいいな。
やっぱ、その線で行こう。
「お腹空いてるわけじゃ無いって!異世界感あり過ぎて、もう、観光モードになってるだけー」
20年以上母親がわりだったカミーナが一緒のせいで、緊張感が薄いのは間違いない。
だってそうでしょ?
異世界だとか言われてもさ、横にいるの母親だよ?
普通母親って、子供にとって世界一安心できる場所じゃん。
ある意味、セーフティーゾーンが付いて歩いてるような気分だよ。
しかもさ、その人が、こっちの国の人だとか言われたら、異世界に飛ばされた、と言うよりは、里帰りじゃん。
「ああ、そうか、里帰りか。」
色々考えを巡らせたあと、納得した。
「まぁ、そうねぇ。あなたは、3歳くらいまでこっちで育ってるわけで。こっちに違和感なくてもおかしくないわね。」
「流石に、違和感はあるけど。でもまぁ、案内人がいる安心感はなかなかのものよね。」
「生きる術とかはある程度伝えるけど、私はそのうち、国に帰らなきゃ行けないから、頑張ってね。」
「ええええ。」
それは困る。
何だよ、ある意味最大のチートとも言える案内人がそのうち居なくなるとか、キツすぎる。
「ちなみに、私、日本に帰れたりするの?」
「この世界でも指折りの魔法使いが同行した上で、転移が成功すれば、10年程度はいけると思う。転生なら、もう少し可能性はあるかなぁ。」
しれっと言っているが、暗に自分がこの国有数の魔法使いだと自慢してるみたい。
「失敗すれば死ぬし、正直オススメはしないかなぁ、母親としては。」
まぁ、言ってしまえば私は元々こっちの人間なんだから、無理をおして帰してあげようって気はあまり起きないんだろうけど。
「うーん、日本に未練あるんだがなぁ。」
平和だし。テレビとか、やっぱり発達した文化は素晴らしいと思うわけで。
一気に全部無くなるとかきつい。
「特にあなたは、魔王になっちゃってるから、下手に帰っても、また召喚される可能性もあるしね」
うぐぅ。
「向こうに帰って平和に暮らすことは難しいのね。」
「そーゆー事。」
そんなこんなで、雑談をしていると、少し大きな集会所のような場所についた。
なるほど、ここがギルドか。
大きなドアを開けて入ると、中には受付や、食堂、ちょっとした商店などがある。
大きな掲示板には、依頼と思われる内容が書かれた紙がたくさん貼り付けられている。
私がキョロキョロしてる間に、カミーナがいない。
あれ?どこいった?
と、思ったら、いたいた。カミーナは、慣れたように一直線に受付へ向かい、何か話し始めた。
「カミーナ様、ご無沙汰しております。カミーナ様がいらっしゃってると、この辺りでは噂になってるんですよ!会えて光栄です!」
やっぱりカミーナは有名人らしく、身分証の提示とかを求められることもないようだ。
「ありがとー。今回は少し依頼があってきたのよ。」
「はい、カミーナ様の依頼でしたら、何なりと!ギルドの総力を尽くして達成させていただきます。」
ギルドの総力を挙げて、三十路女の処女を奪うお仕事です。
シュールすぎる。
すでに恥ずかしさと訳のわからなさで、思考回路は停止気味の私は、止めることを忘れて2人の様子を見守っている。
「カミーナ様でも達成できない依頼とは、うでがなりますねー!」
まぁ、カミーナが女な限りは無理だよな。
「うーん、そうねぇ、できれば強い人にお願いしたいのよ。勇者とかでも良いけど。」
いや、あかんやろ、いきなり討伐されかねないやん。
「あ、それでしたら、運がいいですね!ちょうど今、10年前に西の魔王を討伐した勇者様が、きてらっしゃるんですよ!」
遺書書いとこ。
「かーちゃん!それは流石に、、、」
かろうじて思考回路が繋がり、稼働し始めた私は、暴走気味のカミーナを止めようとしたが、彼女は嬉々として受付嬢と交渉を始める。
「あら、いいわねー!そうなるとソコソコの強さはありそうね。」
「はい、勿論です!」
うん、とりあえず逃げよう。
殺されないために来たのに、勇者に殺されても意味がない。
話し込む2人を横目に、ギルドを出ようとして、
「いてっ。」
「あ、すみません、、、。」
前を見ていなかったために、ちょうど入ってきた人とぶつかってしまう。
「慰謝料がわりに、ねーちゃんがご奉仕してくれよ、と、言いたいとこだけど、残念、ソコソコいい年だな。」
、、、悪かったな、三十路越えのババァで。
「すみませんでした。」
相手にしないように横をすり抜けようとしたが、
「まぁまぁ、かろうじてストライクゾーンだから。」
と、腕を掴まれる。
アニメで見るような、あからさまにタチの悪い冒険者に出会ってしまったらしい。
見た目も、三流のガラの悪いにーちゃんて感じ。
どうしたもんかなー。かーちゃん助けてー。と、カミーナの方を見ると、彼女はこっちを見ているのだ。
なのに、助けるそぶりもなく、口元を少し持ち上げただけで、受付嬢と共に様子見をしようとしている。
まさか、こいつでもいいかなとか適当なことを考えてるんじゃあ、、、。
あり得る。
かーちゃんならあり得る。
「出来れば、謝罪だけで済ませたいんですけど、、、」
私が言うと、男は鼻で笑う。
「ちょっと向こうで話そうや。」
連れていかれそうになる。
うーん、いきなりピンチ。
贅沢は言わないけど、こういう系の男に捧げるのは流石に嫌悪感がすごい。
これだったら、討伐される危険を犯しても勇者に頼みたいところである。
「もう、やめてください!」
手を振り払うと、男はニヤリと笑って言った。
「気の強い女は良いな。楽しみだ。」
品のない笑いだな、と、的外れなことを思いながらも、どうやって切り抜けるかを考える。
この様子だとカミーナはあてにならないし。
ああ、そういえばスキルとかあったな。
つかってみても良いかなぁ。
でも、双剣持ってないから双剣無双も出来ないし。
錬金も意味わからんし。
キーワードってなんかわからんし。
そうなると、、、?
「やめた方がいいと思うよ。その子、あんたより強いよ」
突然、男のさらに背後から声がした。
このパターンで出てくる人といえば、、、。
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