いきなり穢されそうになる
ドワーフだってだけでも衝撃なのに、どうやら魔王のようです。
魔王かぁ。
魔王っていうと、魔物を束ねて、君臨して、勇者にやられるやつね。
あかんやん。
やられる方やん。
「魔王とか、全力でお断りしたいんだけど、、、」
「仕方ないのよねぇ、こればっかりは。」
魔王ということはもう仕方ないとして、母は、色々対策を考えているらしい。
「今、欠番なのは西の魔王だったかしら?それとも、、勢力は変わった?」
問いかけると、獣人の老神父は、頷く。
「はい。西の魔王が、現在10年程不在となっております。」
「え、魔王っていっぱいいるの?」
「基本的には5人ね。東西南北とそれを束ねる終焉の魔王。あなたが生まれる少し前に勇者に討たれたのが西よ。」
「わー、不穏。やっぱ討伐されるのね。」
私は平穏に暮らしたいのになぁ。
このままだと、なんか魔族とかの上に君臨する羽目になりそう。まじ勘弁だわ。
この間まで、竜田揚げ定食とかで悩んでたのが嘘のよう。
あの日々に帰りたい。
「いえ、別に討伐される必要はないのよ。西の魔族を統率して平和に暮らしていれば、そんなにポンポン討伐されたりはしないわ。」
あ、そんなもんなの??
それならまぁ、ゴロゴロと日々踏ん反り返って生きていけるじゃん。
「でも、魔王の力は、血を浴びると奪えるからね。」
あ、そうだった。
このままだと、私の生き血を求めて、群がる人達がいるわけね。
「あ、血だけ提供とかダメなの?」
「献血じゃあるまいし、、、魔力を帯びた状態の血を、言葉の通りタップリ浴びないとダメなのよ」
「チッ、、、」
「力を求める魔族や勇者にも狙われるし。勿論、力が欲しいわけでなく、ただ単に魔族を毛嫌いしてくる勇者もいるから、気をつけてね。」
そんなさ、痴漢に注意みたいな軽い感じで言われてもさ、、、。
かなり命の危険感じるんですけど。
「私たちドワーフ族は、中立をうたってはいるけど、どちらかと言えば魔物寄りだから、姫が魔王でも構わないのよ。でも、命を狙われるとなると、国に被害が及んでしまうからねぇ。」
そんな話をしていると、立ち話も何なので、と、老神父が客間らしき所に案内してくれた。
ほかに参拝客なども来ないらしく、あそこでもよかったけど、まぉいいか。
出されたお茶に手をつけ、あっ、と声を上げてしまった。
「姫様!熱かったですか??」
くっ、、、三十路超えてる身で、姫様とか、むず痒くて死にそう。
「いえ、このお茶って、、、」
「ああ、ノーショサ産のラザクよ。あんたからいきなりそんな電話が掛かってきたから、やばいと思って駆け付けて正解だったわ。」
母が、呆れたような顔をする。
「なんか、イケメンエルフと一緒にいたわね、そう言えば。あの子に教えられたの?」
「うん。なんか、いきなりあんたはドワーフだって言われてさ。」
ほんと、あの時は、どれだけ人を馬鹿にしてるのかと思ったけど、自分がドワーフとか、、、
異世界来ても信じらんないわ。
「目くらましの魔法が切れて、バレちゃったのね。私も魔力が切れちゃって更新できなかったからなぁ。そのエルフ君は何者?」
「ハーフだって言ってた。母親は、監視者?だか管理者?だかなんかって。」
「え。アリシアさん?」
「知り合いなの?」
「流石に、異世界往復計画とかやってる限りは、知ってるわよ。でもまぁ、それなら運が良かった。あの人がそばにいたなら、そう簡単には大変な事態にはならないだろうし。」
そういうもんなの?
なんかもう、色々なことが信じられなくなりそうだけどね、、、
アリシアさんも、後輩君も、そんなに頼りになる感は無かったけども。
「で、私は自動的に西の魔王になるの?」
「まぁ、簡単に言えばそうね。魔王が死んで、次の器が生まれたわけだし。魔王継承の儀を行えばいいんだけど、それがまた面倒だから、あとまわしにしましょう。」
かーちゃん、あとまわしにするの好きやな。
そんなんだから、色々計画が失敗しまくったんじゃないかと疑ってしまう。
「それより!一番重要なのはあなたの器を固定することよ!」
どうあっても私を穢したいらしいな!
たとえ義母でも、母親にここまで積極的に処女を捨てるように言われると、なんか虚しくなって来た、、、。
「そんな訳で、ちょっとギルドに行きましょう。」
おお、ギルド!
冒険者が依頼受けたりするアレね!ゲーム以外で見ることになるとはなー。
登録されてる中で、良さそうな伴侶を見繕ってくれるとかか。
この際、あんま贅沢言えないもんなぁ。
嬉々として私の血を浴びる人を想像して、一瞬背筋が寒くなる。
大事に守って来た訳でもないし、命にはかえられない。
お見合いだと思えば、そんなに辛い訳でもない。
とか考えていると。
「手っ取り早く、魔王を手篭めにしてくれる男性募集とかでいいかしら。」
「良くねぇわ!」
そんな依頼出して、受けてくれる人がいたら、見てみたい。
「いけませんよ、カミーナ様。希望者が殺到してしまいます。」
「へ?」
老神父のツッコミに、間の抜けた声を上げてしまう。
「いきおくれ三十路女にそんな価値あるの?」
「器の力のほうよ。間違ってもあなたにそこまでの価値があるとは思えないわ!」
カミーナさん、、、義母とは言え、そろそろ全力で殴りたくなって来た。
「魔王の伴侶ってことは、それなりの力を授かることができますからね。」
怒りでプルプルし始めた私に、老神父は諭すように言った。
「ある種の儀式だと思ってください。」
ふむ。そうなのか、、、。
「じゃ、とりあえずギルドに向かおう!」
どんどん母親の演技が雑になり、本来の性格が顔を出しまくっているカミーナが私の手を取った。
「ところで、かーさん?カミーナさん?なんて呼ぶのがいい?」
「あーん、可愛い娘ちゃん!今まで通りお母さんでも良いけど、もう少ししたら本当のお母さんに会うわけだしね。
カミーナって呼んでくれて良いのよ。」
「流石に呼び捨てはなー。」
「じゃぁ、かーちゃんで良いのよ。本当のお母さんをお母さんて呼べば良いし。」
ふむぅ。
まぁ、その辺はおいおい呼びやすいように呼ぶことにしよう。
そんな訳で、私の婿探しが始まるのである。
異世界に来て、婿探し。
何だよそれ。
異世界に来て戦うのかと思えば、婿を探すようです。




