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そもそも私が異世界人だった  作者: 亘理朝夢
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異世界に帰ることになりそうです

「センパーイ!ご飯一緒に食べませんか?」


彼氏いない歴イコール年齢。

150センチすらない身長にも関わらず、デブではないが、女性としてはゴツい身体と、手足がコンプレックス。

多少手先が器用だし、運動神経も悪いわけではないので、学生生活は程々にこなせたが、いかんせん、32歳にもなると流石に結婚とか出産とかを意識し始める。

だがしかし、お世辞にも美人とは言えない外見の為、なかなか結婚を意識してくれる男性には巡り会えなかった。


「いやだ。」


会社にて、御局様への階段を順調に登っていた私に、

最近春が訪れた、と、周りの人は言う。

透き通るような肌、長身、長い手足と指。

そして目をそらしたくなるようなキリッとしたイケメン。

頭も良く、上司の信頼も厚い。

少しプライドが高いようだが、傲慢ではなく、実力が伴っているので、そのくらいの意識を持った方がいいんだ、と、上司の評判も、周りの印象もいい。


「何で、断るかなー?イケメンに誘われたら、普通は喜ぶのにな、、、?」


今まで、女性に断られたことなどなさそうなこの男。

しつこく私につきまとう。


いや、私だって春が来たかもと思ったよ?

すっごい優しく近寄ってくるし。

イケメンだし。


「まぁ、ドワーフの女性は身持ちが固いからな。軽々しくなびかない辺り、やっぱり先輩はドワーフ族の血が濃く出てるんですね。」


はい、残念発言頂きましたー。


そう、こいつ、イケメンだし頭はいいのに、なぜか頭の中がファンタジーなのだ。


しかも、人をドワーフ扱いだよ、、、。

確かに、コイツは人間離れした美形だけど、それでも酷くない?

ドワーフって言うと、ゲームや漫画に出てくる、小さめでゴツくて、武器とか作ってるあれでしょ?

流石にそんなことを言われると、イケメンに迫られてもお断りである。


「からかうのはその辺にしていただけませんかね?あなたみたいなイケメンだったら、いくらでも女の子選べるでしょう。おばさんをからかってないで、ああいう若い集団に混ざりなさいな。」


昼時の食堂、可愛い二十代の女子社員が集まって楽しそうに昼食を取っているあたりを指差す。

私は、早く飯を食いたいのだ。

1人で。

特に今日の日替わりメニューは、チキン南蛮。人気メニューなので、なくなる前に買いたい。


「いや、俺、普通の人間に興味ないし、、、」

どこぞの小説のヒロインかお前は。


相手をするのも面倒になったので、さっさと食券を買おうと券売機に手を伸ばし、、、あ、定食売り切れやん、、、。


コイツのせいで、週一の楽しみを逃したかと思うと、怒りがふつふつと湧いてくる。

しかしながら、バカの相手はキリがないのだ。

諦めて、定番の唐揚げ定食の食券を買い、カウンターに差し出した。


「唐揚げひとつー!」


食堂のおねーちゃん。私と同じくらいの年だが、明らかに差がある。

彼女は可愛い。

彼女はお姉さんで、私はおばちゃん。

そんな感じ。


「俺も同じのお願いね。」


食券を差し出しながら、付いてくる男。

ほんとうに、しつこい。


「そもそも、人間のくせに人間に興味がないとか、意味がわからない。ドワーフ女に絡みたいなら、あなたも人間やめてから来ればいいでしょう?そうしたら、少しくらい相手してあげるわよ。」


あまりのしつこさに、ついつい言ってしまったのが運の尽き。


「ホント!?」


後輩の男は、全力で食いついてきた。


「いや、人間やめろって言っても、薬やるとか、犯罪犯すとかじゃないよ?」


慌てて訂正したが、私の訂正は的外れだった。

彼の馬鹿げたセリフによって、自分の対応を全力で後悔した。

そうか、バカの相手はキリがないんだった、、、。


「良かったー!ほら、俺、人間じゃないからさー!」


末期だ。コイツの病気はここまで進行してるのか。

美形なのに、かわいそうなやつ。


「は?あんたも実はドワーフでしたとかいうわけ?」


ゴツくてチビの私がドワーフ呼ばわりなのは、分からなくはないが。

、、、認めたくないけど。

それに比べて、コイツは、長身。透き通る肌と人間離れした美貌。

そういう意味では、人間じゃないのかもしれないけど?

そうだな、ドワーフと言うよりは、ファンタジーの世界で言うなら、


「いや、俺はエルフだよ!」


そうだね、エルフだね。


もう、頭痛がしてきた。食欲も失せてきたが、仕方ない。

さっさと食ってここを去ろう。


「て事は、俺は先輩に絡んでいいんですよね!!」


馬鹿か。


「あのねぇ、ホント、いい加減にしてよ、、、え?」


何がエルフだ。エルフってのは耳が尖ってて、魔法使うやつじゃん。

そう思って、ふと、後輩の耳を見てしまった結果、つい眉を顰めてしまった。


「漫画やゲームよりは、短いけどね。」


ギリギリ、そう言う人もいるのかなーと言う程度ではあるが、確かによく見ると多少の違和感があるレベルでは耳が尖っている。

ああ、なるほど、この耳と見た目から、子供の頃にいじめられ過ぎて、現実逃避でもしてしまったのかな。

そう思うと、多少憐れではある。


「そうかそうか、苦労したのね。でも、まぁ、もうそろそろ大人になろうね。」


遺伝や体質、病気などを差別的に表現して、やれ妖怪だ、化け物だと言う人は確かにいる。

かく言う私も、見た目がコンプレックスなのだから、そう言う人たちに、馬鹿にされる方の人間である。

そうだ、コイツも人のことドワーフかいってたじゃないか。

まったく、自分はいじめられて性格歪んでるのに、人を馬鹿にするなんて。

と、今から思うと、てんで的外れな事を考えていた。


「先輩、信じてないでしょう。」

「信じられると思う?」

「ドワーフの先輩が言ってもなぁ、、、」

「いや、私人間だし。武器とか作ってないし。」


なんだかんだで、昼食を終え、立ち上がる。


「じゃ、そう言う話は結構ですので。」


離れようとした瞬間、腕を捕まれ、


「よーし、わかった!証拠見せてやるよ!」


私の顔を覗き込んだ彼の目は、茶を通り越して赤くさえ見えた。

そうかわかった、アルビノとか言うやつだな?生まれつき色素が薄いんだ。


「魔法でも見せてくれるの?」


ここまでしつこいなら、逆に、ある程度付き合ってやったら満足するのだろうか。

私の問いかけに、彼は満足そうに頷いた。


「俺は、ハーフだから、こっちの世界じゃまともに魔法なんて使えない。でも、俺のカーチャンは本物だからな。次の休みは、空けといてくれよな、先輩!」

「はぁ?」


男性と付き合ったことのない私に、いきなり母親に会えとか言ってくるイケメン。

ここで断りきれなかったがゆえに、私は、異世界?を旅する羽目になるのだった。

イケメン耐性は低いので、おされると断れなかったのは間違いない。

腕を振り払って、答えた。


「わ、、、わかったわよ。一回だけだからね、それ以降は関わらないでね?」

「やりー♪」


後輩は、小さくガッツポーズをする。


「しかし、先輩、どう見ても純血に見えるんだけど、おかしいなぁ。」


その場から逃げることに夢中で、私は彼のつぶやきなど全く聞いていなかった。

聞いていたら、田舎の親たちに電話でもしてたかもしれないのだけれど。


やれやれ。

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